あらゆるものは時間がたつと劣化するものですが、まれに起きる例外に驚かされることもあります。例えば、古い科学技術に新しいものを掛け合わせると、新しく発見があって再度有効になったりするなど。



こういった触媒のような力を秘めたものに「ゲーミフィケーション戦略」があります。



ゲーミフィケーションは、ゲーム的な発想やゲーム的な仕組みを、ゲーム以外の場面に応用することです。テレビゲームが一般化したのち、ここ何年か注目が集まっていますが、実は非常に長い歴史がある概念です。驚くべきことに古くは数千年前のエジプト文明の時代から、労働者のやる気を高めて、効率的に作業を進めるために利用されていました。



そんなゲーミフィケーションですが、現代においても、営業員のモチベーションや顧客エンゲージメント向上において、有効な仕組みとして活用されています。例えば、来店数に応じてポイントが貯まる仕組みも、ゲーミフィケーションですね。今回は最近注目されている、従業員のエンゲージメント改善への応用のポイントをお伝えします。



企業におけるゲーミフィケーション活用分野TOP3 (2015)



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従業員エンゲージメントに関する有名な調査として、2012年のギャラップ社による大規模調査があります。数十万もの従業員を対象にした調査では、自分の仕事にエンゲージ(熱中)できているのは、全労働人口の僅か13%で、63%はエンゲージしていないこと、さらに残る24%の従業員は離職を具体的に検討中という厳しい内容です。この結果は、従業員をなんとかエンゲージさせようと躍起になっている企業の幹部にとっては、本当に頭の痛い内容でした。



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ゲーミフィケーションでモチベーションを上げる方法




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こうした従業員エンゲージメントの課題を解決するため、2000年以降から様々な取り組みがなされてきたわけですが、その一つとしてゲーミフィケーションの活用を試みている企業があります。結果から言うと、ゲーミフィケーション戦略を成功させるためには、従業員の内発的モチベーションと、外発的モチベーションの両面に作用する、バランスのとれた仕組みやシナリオを提供する必要があることが伝えられています。



福利厚生や収入、地位向上を報酬として、従業員のモチベーションを高めようとする会社は今でも多いですが、実はこれらがモチベーションを下げてしまう場合があります。ダニエル・ピンクなど最近の研究では、それらから発生するのは外発的なモチベーションであり、より重要な内発的モチベーション(内発的動機付け)を下げてしまうのです。



内発的モチベーションの4つのポイント

内発的モチベーションで国際的に著名なケネス・W・トーマス教授の研究によれば、ポイントになるのは4点です。すなわち「仕事に意義を感じられること」、「裁量をもって選択できること」、「仕事への適正」「仕事における自己成長の実感」ですが、これらをゲーミフィケーションに当てはめると以下のようになります。



1.ゲーミフィケーションで設定する“日々の活動”(例えば、同僚を具体的に褒めること)に対して、従業員が意義を感じられる目的を設定する。また、それをやること自体にも楽しめる要素があると良い。

2.目的を達成するための方法は一つだけでなく、複数の選択肢を用意する。

3.従業員どうしで競い合えるものにすること

4.進捗を通じて達成感を与えてくれるものにすること。




販売店を多数もっているある日本の会社では、ご来店いただいたお客様を見送ったあとで、お客様が振り向いてくれたらポイントを与え、優秀者には全社で表彰する仕組みを取り入れました(そのための手段は問わない)。結果として、お客様が振り向いてくれるよう、従業員は普段のサービス向上に創意工夫することになり、結果として売上も上がったそうです。単に「売上を上げろ。上げたら昇給」としている企業は多いですが、目的を売上におかず、目的を従業員が意義を感じる「お客様の笑顔や満足の結果である”振り向き”としたこと。また、振り向きの数を同僚と競えるようにし、またその工夫方法にも裁量を与えた面白いゲーミフィケーションの事例です。



外発的動機付けの工夫

それでは外発的モチベーションはどうでしょうか?



これまで同様、従業員のパフォーマンス(結果)に合わせ、報酬と承認を提供する必要があります。また、成長を実感できるよう、報酬や承認の機会を増やすべきことが伝えられています。普段の仕事だけでも忙しいのに従業員を褒めたり、フィードバックしたり、余計に時間が取られると考える方も多いかもしれません。そういった方には、ゲーミフィケーションを応用した、会社全体に関わるシステムを利用することも一つの解決策と言えるでしょう。それらのシステムを導入することで、透明性の高いポイント取得、それに対しての評価や報酬提供、上位ランキング表示での競争などが自動化されます。



ゲーミフィケーション、まずは始めてみませんか?




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ガートナー社の2011年の発表では、フォーブス・グローバル2000企業のうち実に70%が、2014年までにゲーミフィケーションをビジネス戦略の中に組み込むことを予測しています。しかし一方で、同ガートナー社は2012年、ゲーミフィケーションの取り組みの80%は貧弱なデザインによって失敗するだろうとも予測しています。これら二つの研究から言えるのは、ゲーミフィケーションに効果はあるが、設計および実装が難しいことです。



全社的にゲーミフィケーションを取り入れる場合、すべての変数や条件をそれこそゲームを作るように考慮しつつ設計する必要があります。しかし、ガートナー社の予測が正しければ、これは容易なことではありません。しかし、ゲーミフィケーションがうまく適用出来れば、従業員が楽しみつつ、より結果を出せる環境を作ることができ、最終的には従業員のエンゲージメントを高めることになります。働く人と会社の素晴らしい将来のために、失敗を恐れず是非トライしてみてください。



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