専業主婦は幸せ度が低い?



科学的に幸福になる方法を研究している”幸福学”の第一人者、慶応義塾大学SDM研究科委員長の前野隆司教授に聞くシリーズとして、専業主婦の幸せについてお話を伺いました。働きながら子育てをしている方にも役立つ内容となっています。(先生の著書「幸せのメカニズム」のご紹介記事はこちら



アメリカGlallup社の調査で「子供のいる専業主婦の幸せ度が低い」という結果が出ています。アメリカ人女性6万人以上を対象に、「こどものいる専業主婦」、「働くママ」、「子供のいない女性」の3タイプに分けてそれぞれの幸福感やストレス度合いなどを調査。その結果は驚くべきもので、子供のいる専業主婦がもっとも「不安」や「悲しみ」、「ストレス」や「怒り」、「気持ちの落ち込み」を感じていたのです。



前編はこちら

夫婦で「戦友」になっていくと子育て後も幸せに


--幸福学の研究では、「子育てで下がった女性の幸せ度は、子育てが終わると戻る」ことが知られていますが、子育てが終わった後に心がけると良いことはありますか?



前野:「つながりと感謝」、夫と仲良くして欲しいですね。お母さん仲間で集まった時、ついつい夫を悪くいう人もいるけど・・。これは、旦那さんが奥さんを大事にしてないのもあるかもしれません。



一緒に子育てを進めていくと、いつしか夫婦が「戦友」のようになるものですが、たまの喧嘩で「嫌な戦友」になってしまって、それが続くと勿体無いです。もちろん喧嘩はある程度しょうがないところだと思います。恋愛はお互い違うタイプどうしの方が上手くいきやすいと思うのですが、そうするとたいてい子育ての方針が夫婦で違う結果になりますからね。親から受け継いでるものが大抵違います。ここで議論していくことが「良い戦友」になっていくために重要です。



例えば、子供をほったらかしにする夫がいたら「なんでほっとくんだ」と奥さんが言う。そうすると夫が「いやほっとくんじゃない、のびのび自由にやってるんだと。なんでそんな細かいことを言うんだと」。これらはどっちも一理ありますよね。こういった分かり合ってない状態から「じゃあどれくらいのびの自由にしておくのがいいか?」など、議論を進めていくんです。議論を通して、新しい育て方を発想できればなおよいですね。



私の場合も夫婦で大分考えが違ったので、夜中まで議論しあうとかをよくやりました。最近はそういうことも減ってるんですが、それはこれまで沢山議論したおかげでいい戦友になって、信頼も出来た結果と感じています。実際、自分が思っているのと違う育て方を相手が始めたとき「なるほどそうきたか!」とか受け入れることができました。


「良い戦友」になるためのポイントは理性


--相互理解を進めるポイントはありますか?



前野:そもそも男女は本能レベルで違うことを認識することだと思います。例えばオスは子供をつくって、ある程度育てたら他に行こうとする傾向があるわけです。



そういった本能がある一方で、人間には理性もあって、「今の幸せ」が十分育っていたら理性が本能に勝つわけです。そのためには本能レベルでの男女の考え方の違いを理解するように、目の前の相手の考え方を理解しようとすることが重要でしょうね。議論を通して、人間として尊敬しあう方向になれるのがいいですね。本当にダメだったら離婚もひとつの選択ですが。(編集部注:離婚した場合、女性の幸せ度は上がる傾向があります。)



--互いを尊重し、無理に変えようとしない感じですね。



前野:本能をおさえるという点では他の方法もあります。これは男性側の話ですが、例えば性の衝動(本能)が強い人でも、もっと強い自己実現に向かっていると、それを忘れられることがあります。これについての研究はなさそうですが、学者の浮気をあまり聞かないのはそのせいかなと思いますよ。社会に役立つ研究結果は100年後も残る。そう思うと、その魅力はとても強いですからね。



--「子育てが終わると女性は自己実現に向かう」とアメリカではいいますが、どう思われますか?

前野:それは実感としてもありますね。たびたび例に出している妻の話ですが、子供が高校生になって、PTAの活動がなくなったら幸せ度が下がったそうなんです。そこからどうしようかと考えた結果、再び働こう、「自己実現していこう」という流れになっていきました。



働くといってもいろいろな形がありますが、自分が幸せの研究をしているのに、妻が幸せでないというのは避けたかったのでいろいろ考えましたね。結果として一緒に研究したり、幸せに関するワークショップを始めたりとか、自分にとっても自己実現につながる活動が出来上がりました。



子育てされている主婦の方なら、理想を言うと少しずつ準備しておくことも幸せ度を高めるには大事だと思いますね。そういうのを考える機会が、意外と世の中には足りないのかもしれないですね。



--そういった場所を見つけたら是非参加してほしいですね。前野先生、ありがとうございました!







心のスイッチ、見つけよう -HAPPYW(ハッピーウー)-


情報提供元: HAPPY W