脳科学は人格を変えられるか?
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エレーヌ・フォックス 文藝春秋 2014-07-25
本書の趣旨はシンプルで、「
ポジティブな人とネガティブな人は、脳の情報処理の方法が違う」というもの。
たとえば、キレイな風景や美味そうなお菓子を見た場合、どちらのキャラも同じレベルの幸せを感じるけれど、ポジティブな人は、脳の左側が活性化してるせいで、その感覚をより長く持ち続けることができるそうです。一方で、ネガティブな人は脳の右側の活動が大きいため、幸福感に対してすぐに警戒心や不安感が発動するとのこと。
そして、うつ傾向で心配性な人は、前頭前皮質(認知機能をつかさどる)と扁桃体(恐怖感をつかさどる)のつながりが少ないため、ネガティブな人は、恐怖感やトラウマに上手く対処できなくなってしまうのだそうです。
性格を変えるポイントとして、いかに無意識の暴走を意識でコントロールできるかということを伝えています。「
人生の幸せは、自制心が影響する」という別の研究もありました。
なお本書では、遺伝子レベルから性格を変えることが出来るのか?についても、「個体の生存中に遺伝子作用が変わる」ことから、その可能性が高いことを主張しています。(「個体の生存中に遺伝子作用が変わる」ことは、遺伝子の再構成を明らかにした利根川進の研究などでも知られる)。これからの研究で明らかになっていくのでしょう。
性格を変える3つの方法
性格を変えるためには、無意識の暴走を意識でコントロールするために、まず認知機能の力をアップさせることが重要になります。本書でオススメされているのは、
・マインドフルネス瞑想
・認知行動療法
の2つ。特に(マサチューセッツ大学医学大学院教授・同大マインドフルネスセンターの創設所長の)ジョン・カバット・ジンの「
マインドフルネスストレス低減法」がオススメされています。この本のガイドラインに従って、8週間だけ瞑想を続けるだけでも、かなりの効果があるとのこと。
また、さらに簡単な方法として、「三行日記」とか「感謝日誌」をアレンジしたバージョンが挙げられています。
具体的には、
・その日にあった
ネガティブな出来事を1つだけ日記に書く ・その日にあった
ポジティブな出来事を4つ日記に書く 日記の内容は、「スーパーで桃が安かった」とか「電車に乗り遅れた」ぐらいのレベルでOK。1つのネガティブには4つのポジティブで対抗しないと、人間の脳は前向きにならない模様です。それぐらい無意識の力は強いということかもしれませんね。(これはほんの2~3分で出来ることなので、是非今すぐやってみてくださいね。)
以上、「
脳科学は人格を変えられるか?」のご紹介でした。本の内容は基本的には「性格を変える方法」よりも脳の仕組みの解説のほうがメインであり、実践的なテクニックを求めると期待はずれかもしれません。一方で、いかにヒトの人格が原始的な脳に影響されているかを知りたい方は、読んで損のない楽しい一冊です。
具体的な性格改善のテクニックをお求めの方は、 ジョン・カバット・ジン「
マインドフルネスストレス低減法」や「
4枚組のCDで実践する マインドフルネス瞑想ガイド」、「
うつ・不安障害を治すマインドフルネス―ひとりでできる「自己洞察瞑想療法」」。認知行動療法を試すなら「
いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法」などを手にとってみてください。
Photo:Optimist Park By davitydave
Licensed material used with permission by PaleolithicMan
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