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――GO OUTフェスにとって、D.W.ニコルズはとても大事なバンドです。逆にD.W.ニコルズにとってGO OUTフェスとは、どんな存在ですか。
わたなべだいすけ GO OUTは、初めて出た時からすごく楽しくて、ライブが終わった後も普通に買い物したり食べたりしているし、毎年呼んでいただくごとに顔なじみのスタッフの方も増えてきて、地元に帰ってきたみたいな安心感があります。僕が静岡でラジオ((K-MIX「LIFE!LIFE!LIFE!」「ラジオのおじさん」))をやらせてもらっていて、それがきっかけで「GO OUTに初めて来ました」という人もいて、そういうものがちょっとずつ繋がっていくとすごく嬉しいなと思います。
――そもそも、2014年に〈GO OUT CAMP〉に初出演したのは、どんなきっかけがあったんでしょう。
鈴木健太 僕らが2回目のメジャー契約をした時に、当時の僕らのディレクターと事務所の社長が色々相談している中でGO OUTのフェスを見つけて、「これは絶対ニコルズに合うんじゃないか」みたいなことで、無理やり押しかけていったという噂を聞きました(笑)。それで本当に出させてもらえたことが嬉しかったですし、最初に出た時から雰囲気が良かったと思うんですよね。
わたなべ ニコルズの音楽との親和性も高いなと思ったし、とにかく自分が楽しかったので、勝手にテーマソング(“GO OUT”)を作ってステージで演奏したら毎回トップバッターでやらせてもらえるようになって。曲も〈GO OUT〉に来る人たちに定着していき、毎回大合唱になってどんどん浸透していったので。勝手に作って良かったなと思いました(笑)。
鈴木 最初に出た時に、本当にめちゃくちゃ楽しかったから、ずっと出たいと思うじゃないですか。だから「テーマソングとか作っちゃえば、毎回呼んでもらえるんじゃね?」みたいな(笑)。それと、最初に出させてもらった時がフェスの一番手で、そもそも僕らはトップバッターが好きなんですよね。いきなりガン!と行くよりは、ふわっと始めていく感じなので、フェスの雰囲気にも合っていると思うし、「テーマソングを作って、毎回僕らでフェスをスタートできたら最高だよね」みたいな気持ちもありました。
――D.W.ニコルズの「おはようございます!」の一言でその日のステージが始まるのも、すっかり定着しました。
鈴木 本当にありがたいです。でも、こうやって毎回呼んでいただいているんですけど、ある意味プレッシャーも感じていて。出るのが当たり前じゃなくて、「ちゃんと結果を出さなかったら次はないぞ」ということは毎回思っています。「次もニコルズを呼びたいなと思ってもらえるようなパフォーマンスをしよう」というのは、毎回だいちゃんとがっつり話しています。
わたなべ 去年の〈スマイルヴィレッジ〉のステージで、僕がふざけて「10周年で区切りなので、次は呼ばれないかもしれません。みなさん今までありがとうございました」みたいなことを言って、ウケたんですけど、ステージを降りたらスタッフの方に「今までありがとうございました」と言われて、「マジすか!?」って(笑)。
――スタッフもノリがいいです(笑)。
わたなべ 一瞬、マジで終わりかと思いました(笑)。だけど次も呼んでいただけて、「また11年目もよろしくお願いします!」と言いました。
――先ほど言われた〈親和性〉という言葉ですけど、D.W.ニコルズと親和性が高いのはどんなシチュエーションだと思いますか。
わたなべ たとえば緑の中で、あまり大きなステージではなくて中ぐらいというか、みんなの顔が見えるぐらいの距離で、小さい子が前のほうにいっぱいいて、後ろの大人も一緒に楽しそうにしていて、みたいな感じかな。だから本当に〈GO OUT〉の雰囲気はぴったりだなと思っていて、毎回出させてもらうことによって、他のアウトドアのフェスにも呼んでもらえるようになったので。逆に、いわゆるロックフェスには全然呼ばれないんですよね。
鈴木 結成10周年の時に、全国のロックフェスに呼んでもらって、出たんですよ。もちろんその場その場で盛り上がってはいるんですけど、他に出ている人たちとの雰囲気の違いも感じて、ハマる場所がない感じがあったんですけど、最初に〈GO OUT〉に出させてもらった時に「ここは俺たちの居場所だな」みたいな雰囲気をすごく感じたんですね。例えば僕らを見ようとして来たわけじゃないキャンパーの方たちにも、僕らの音楽は楽しく受け入れてもらえると思うし、一つの余興として楽しんでもらえる部分もすごくあると思っていて、音楽フェスってそれでいいんじゃないかな?と思うので。ピースフルでハッピーで、ゆるさもある――そういう場所で僕らは音楽をやりたいので、〈GO OUT〉はすごくマッチしているなと思います。
――そんなD.W.ニコルズは、今年で結成20周年。振り返ると、どんなことを思いますか。
鈴木 本当に色々ありましたし、いい波が来たかな?と思うタイミングも何度かあったんですけど、全部波に乗り切らなかったというか(笑)。音楽を始めた頃には、大きい会場でバーン!とやりたいという夢を思い描いていて、今もそれを目指していないわけではないんですけど、夢の形がどんどん変わってきて、想像していたものとは違いますけど、本当に一番いい形で活動ができているし、一番いい形で音楽を作れているなと思います。色々なことがあったからこそ今があるというのは、日々痛感していて、最初からここにはたどり着かなかったと思うし、本当にたくさんの人たちに支えられて、関わってくれたみんなで作ってきたニコルズの上で、今2人でやっているという感じですね。
わたなべ 今年の2月に大阪の幼稚園でライブをやったんですけど、そこでTV番組の『おかあさんといっしょ』のために作った“だいじなともだち”という歌を歌った時に、子供たちが大合唱してくれたんですよね。今までに感じたことのない大合唱で、本当に感動しました。デビュー当時に思い描いていたこととして、アリーナや大きい会場でみんなが大合唱して、自分の歌が聴こえないぐらいになりたいと思っていたんですけど、でも「幼稚園で子供たちがこんなに大合唱するライブができるのは俺らぐらいだよな」と。
――間違いないです。
わたなべ 僕の小学校の先生が、ギターを持ってきて歌う人で、一日の始まりと終わりにギターを弾いてみんなで歌う先生だったんですよ。その人が僕の最初のヒーローだったので、みんなでギターを弾いてみんなで歌うというのが好きなんです。それで先生になりたくて大学の教育学部を受けて、落ちてしまったんですけど、今も音楽を通して子供たちでも大人たちでも、一緒に歌えたらいいなというのはあります。
――つまり今、当時の夢が叶っていると。
わたなべ そうなんです。インスタのコメントとかで「だいちゃん、夢が叶いましたね」と言われて、初めて「あ、叶ってるんだ」と気づきました。すごくちょっとずつですけど、みんなのおかげでいろんな夢を叶えさせてもらってきた、そんな20年なんだなと思います。そうやって自分たちにしかできないこと、自分たちが大好きなことを一生懸命、これからもやっていけばいいのかなと思います。
――その、20周年を記念するニューアルバム『泡DAYS』は、4月2日にリリースされたばかり。本当に多彩な音と言葉が散りばめられて、これまでの集大成であり、新たなスタートでもある素敵な作品だと思います。
鈴木 何も考えずに作ったに近いアルバムです。前の作品を作った後ずっと、「次はどういう作品を作ろうかな?」とか、「ファンの人はどんなことを求めてくれているんだろう?」とか、考えた時期がすごくあったんですけど、去年のツアーを回っていく中で、今までにないようなファンのみんなの熱量を肌で感じたんですよね。だから小賢しいことは考えずに、これだけのファンが応援してくれているし、たくさんの関係者の方たちも認めてくれているんだから、「ただ作りたいもの全力で作ってみよう」というのが制作のコンセプトになりました。結果的に、我々の日々が詰まった作品になったと思います。
わたなべ 端的に言うと、すごくニコルズらしい、わたなべだいすけらしい、鈴木健太らしい作品だなと思っています。このアルバムには“Beautiful Days”と“笑えるように”という、今まで出してきたリード曲と、2月に配信した“それだけで”という曲が入っているんですけど、3曲が一本の線で繋がっていて、それがアルバムの軸になっている気がしますね。歌詞の部分で言うと、一個前のミニアルバム『EVERGREEN』(2023年)までは、自分の内側と向き合っている歌詞がすごく多くて、それは2020年あたりから色々あった世の中の流れも含めて、自分の内側に何かを探していた気がするんですけど、今回の作品は外側に向いているというか、外に出て近くにいる大切な人たちに向かって何かを語りかけているような作品になったのかな?と、客観的に聴いて思いました。2020年から2025年までの僕らの日々が、いろんな心の葛藤や、頑張ってきたことが全部詰まっているなと思うので、それを一つここで記録しできたのはすごく良かったなと思います。これから先に何かあった時にも、この作品を聴けば大丈夫だと思えるというか、山登りをしていて、大きい杭を一つ打てたみたいな気がしています。
――これを足場にしてさら上へ行けるぞと。
わたなべ 上にも行けるし、落ちたとしてもここで止まれるぞ、みたいな、そんな作品になった気がしています。そんなに激しめの山登りをしたことはないですけど(笑)。
――アルバム全体の雰囲気として、内側から外側へ向いたというのは、聴いていてわかる気がします。
わたなべ そういう曲を書こうと思ったわけではないし、誰に歌おうと思ったわけでもないんですよ。本当に自然発生的に、日々考えていることが歌になっていくので、「あ、俺、外向いたんだ」と思って、嬉しかったですね。
――まさに『泡DAYS』=OUR DAYSの歌。鈴木さんの推し曲はどれですか。
鈴木 リード曲の“それだけで”ですね。だいちゃんのデモを聴いた時から、「ずっとこういうことを言いたかったんだよね」とすごく思いました。だいちゃんがずっと言いたかったことを表現するのに、すごくシンプルでいい曲だと思ったし、デモを聴いて自分が感動したその気持ちを、(アレンジで)どう強くするか?ということを考えて作ったので、いろんな意味でお気に入りですね。
――“それだけで”は本当にいい曲。〈やさしい人になりたい、だれかの役に立ちたい〉と、叶うことも叶わないことも含めて、心の中にある願いをまっすぐに歌っていく曲。素敵です。
わたなべ 全部僕が日頃考えていることで、一つも嘘はなくて、そう思いながら生きてきました。なので、僕の歌だなとすごく思います。
鈴木 “それだけで”は、ミュージックビデオも作ったんですけど、誰もいない広いホールで演奏しているイメージでアレンジを考えました。自分に語りかけている曲だから、すごく広い空間的なサウンドにしたかったんですね。10年ぐらい一緒にやっているエンジニアの古賀健一くんが、国内の立体音響の第一人者なので、彼と色々相談しながら音像を作って、アレンジはとにかくシンプルに真面目にいい音で、一音一音に説得力があることを意識しました。最近の音楽シーンに対するアンチテーゼじゃないですけど、イントロもしっかりあって、ギターソロもがっつりやって、こういうものが好きなんですね。最近はイントロが長いと飛ばされるらしいですけど、この最高なイントロがわからない人はどうぞ飛ばしてください(笑)。僕らはただこの曲が、ラジオでもYouTubeでも何でもいいですけど、パッと流れた瞬間にハッとするようなサウンドにしたかったので、そのへんはすごくこだわっています。
――わたなべさんのお気に入り曲はありますか。
わたなべ いろいろあるんですけど、“サイドミラーサンセット”とか“ミックスナッツ”とか、ポソッとした感じの曲がアルバムに入っていることがすごく嬉しいです。通して聴くと、ストーリーの流れを作る役割を担ってくれているし、アコースティックギターの絡みもすごくいいし、歌い回し的にもちょっとラップっぽいというか、メロディがあるのかないのかわからないみたいなものが、僕の一つの個性なのかなと思っているので、そういう曲をアルバムに入れることができたのはすごく嬉しいなと思っています。
――“サイドミラーサンセット”は、外側に向いた曲が多い中で一番内向きな曲かもしれないですね。
わたなべ めっちゃ内向きですね。内向きなんだけど、「でもまぁいっか」みたいな、サイドミラーで後ろを見ているけど、前には進んではいるぞという感じ。そういう人たちが、このアルバムの(歌詞の)中にはいっぱいいて、全体的には人生を讃えたい、日々を讃えたいという気持ちが僕にはあるので、そういう作品になったかなと思っています。
――“Beautiful Days”はどうですか。3年前にリリースされて、ライブでも人気の高い曲を、あらためてアルバム・バージョンで再録音していますね。
鈴木 “Beautiful Days”は、2人でリスタート(2022年に個人事務所〈グッデイ〉と自主レーベル〈GOODDAY RECORDS〉を設立)のタイミングで出した曲なんですけど、この曲には支えられていますね。我々の全ての活動において。
わたなべ “Beautiful Days”ができて、ライブで演奏した時に、「あ、もう大丈夫だ」と、「ここからやっていけるぞ」と思えました。歌詞の最初にある〈風が吹いて雲動いて、太陽が顔を出したら〉という感じが、世の中にもあったし、自分の心の中の雲も、風で動いて太陽が顔を出して、ふぁーっとなったのがわかったので。この歌ができたことでそれが自信に変わりました。
――ライブで聴くと、より一層響く曲です。そして今、ニコルズの歌を届けたいのは、どんな人たちですか。
わたなべ 生きている人全部、ですかね。色々苦悩しながら、頑張って生きている人たちに聴いてもらいたいなと思います。僕らも同じように、もがきながら、笑いながら生きているので、同じように生きている人に聴いてもらいたいです。
鈴木 みんな、生きていたら悩みがあって、悩みや苦しみの大きい小さいというのは、それぞれが決めるものだと思うんですけど。人から見れば些細なことでも、本人にとっては大問題だったりすることもあるので、そういう個人一人一人の感覚に合わせて、スポッとはまっていく作品になったかなと思っています。
――アルバムタイトルの『泡DAYS』は、どうやって決めましたか。
わたなべ レコーディングがほぼ終わった頃、車の中で健ちゃんと「タイトルは何がいいかね?」と言い合っていた時に、〈なんとかデイズ〉みたいなイメージが最初にあって、僕は言葉遊びが好きなので、何か新しい言葉はないかな?と思った時に、泡という漢字がポッと浮かびました。泡ってすごく儚いし、だけどどこまでも飛んでいきそうな軽やかさもあるし、合わさって一つになったりもするし、割れて二つになったりもする。泡っていいなと思ったのと、『泡DAYS』という響きを耳で聞いたら、さっきも言ってくれた英語の〈OUR DAYSに〉もなるし、いいんじゃないかな?と。ただ、いかにもありそうな表現だから、もう誰か言ってるんじゃないかな?と思って検索したら、言ってなかったので、使わせていただきました(笑)。結果、ぴったりハマったなと思います。
――ハマりましたね。儚さと美しさと、優しさと切なさと、いろんなものが詰まったハートフルな作品だと思います。そんなアルバムを引っ提げて、ツアーが始まりますね。4月26日の東京公演から、7月まで続くツアー、その名も〈泡LIVE〉。
わたなべ 4月26日の東京と5月17日の大阪は、今回のツアーで唯一のバンドセットの2公演になります。普段は2人でやっているので、バンドセットでアルバムの曲をお届けできるのはなかなかレアなケースになっています。どちらも素晴らしいメンバーの演奏で、この作品をみなさんに届けられるのがとても嬉しいので、ぜひ東京か大阪に来ていただきたいなと思います。
――その後も北陸、四国、九州など、大都市以外の場所が多いですよね。四国で徳島と愛媛の2本をやるのとかも、珍しいと思います。
鈴木 今回は、最近行けてなかった土地に行きたいなというのがありまして。それと『泡DAYS』という作品が、主要都市以外というか、そういう町にすごく合うような気がするので、久々に徳島から愛媛まで足を伸ばしたり、いつもは広島、岡山と行くところを、福山に行ってみたり。北陸も、新潟や石川は行ったことがあるんですけど、富山ではライブしたことがないので、初めて富山を入れてみたり、そんな感じのツアーになっています。
――バンド編成と2人編成とでは、やることは変わりますか。
鈴木 我々は、バンド編成にしても2人編成にしても、音源通りにやらなかったりするんですよ。昔の4人編成の時は、音源通りにバンドで再現しようという気持ちがあったんですけど、最近はその曲をその曲らしく届けられればいいかなと思っています。2人編成の時は、バンド編成の縮小版に見られがちではあるんですけど、実は2人編成のほうが伝わる場合もあったりするので、今はそれぞれの良さを最大限に活かしてやっていくのがすごく楽しいです。
わたなべ 両方見てもらえると、ニコルズの良さが存分に伝わるかなと思います。
鈴木 そして9月13日に、有楽町のヒューリックホール東京で、20周年の記念コンサートをやります。これはバンドセットでバシッとやるので、できる限り全国から集まっていただきたいですね。そこに向けて、今年は頑張っていこうかなと思っています。
――楽しみにしています。最後に、今年の〈GO OUT JAMBOREE 2025〉は終了しましたが、次回以降への意気込みをいただければ。
鈴木 もしまた次も呼んでいただけるようでしたら、全力でやらせていただきます! こうやって毎回呼んでもらえると、呼んでくれた人にも楽しんでほしいなと思うんですよね。もちろん見てもらう人にも楽しんでほしいし、全ての人に楽しかった気持ちを持って帰ってほしいなとすごく思っています。呼ばれて、行って、音楽をただ奏でることが全てだとは思っていなくて、「ニコルズがいて良かったな」と思ってもらいたいんですよね。そんなことを思いながら毎回やっているので、それが伝わったら良かったなという感じです。
D.W.ニコルズ
2005年結成、2009年メジャーデビュー。結成以来、コンスタントなリリースと全国ツアー、大小さまざまなフェスやイベント出演、楽曲提供、レギュラーラジオなど、幅広い活動を続けている。2022年4月より、わたなべだいすけ・鈴木健太の二人体制となり、セルフマネジメント事務所となる合同会社グッデイ、自主レーベルGOODDAY RECORDSを設立。サポートメンバーを迎えたバンド編成、二人でのデュオ、わたなべの弾き語りなど様々な形態で、より自由かつ精力的に活動を展開中。
オフィシャルサイト:www.dwnicols.com/
X(エックス):x.com/dw_nicols
Instagram:www.instagram.com/dw_nicols/
インタヴュー・文/宮本英夫
撮影/Hikaru Funyu
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