- 週間ランキング
ボクらの身の回りにある、最も身近な道具である椅子。日本では古くから“腰掛け”という名で通っていましたが、いわゆる「チェア」として普及したのは明治以降と言われています。このチェアというプロダクト、もちろんアウトドアでも大切なツールであることは間違いないわけです。
アウトドアチェアというジャンルもすっかり定着し、最近では小型化、軽量化が目覚ましく、ショップで見ていても、どれにすればいいのか分からなくなったりすることもありますね。快適で長持ちするのが良いと頭の中で考えていても、自分にぴったりのチェアを探すのは至難の業です。
そして道具を選ぶ時の、もう一つの大切な要素として、その“佇まい”が重要です。惚れ惚れするくらい美しいプロダクトは、愛でて大切に扱うことにより、結果長持ちしますから、やはりデザインが良いものを選びたいもの。そこで今回フォーカスを当てるのが、「Kermit Chair(カーミットチェア)」というわけです。
すでにご存知の方、もしくはすでに愛用してるという方もいれば、初めて聞いたという方もいるかと思いますので、ここでおさらいの意味も込めて「カーミットチェア」はどういった経緯で誕生したのか、歴史を紐解いてみましょう。
ファウンダー(創始者)であるKermit Easterling(カーミット・イースターリング)氏は、自身の趣味であるオートバイに積めるほど軽く、持ち運びが便利で、さらに焚き火を囲んで長い夜を過ごすのに十分な頑丈さと快適さを備えた椅子を求めていた。しかし市販されている椅子はどれも満足のいくものではなかったので、彼は自分の手で椅子を作ったというのが「カーミットチェア」の始まり。1984年の話です。
当時のカーミット氏は「BMW」製のバイクでツーリングを楽しんでおり、その仲間たちが、彼が作ったそのチェアに注目。同様のチェアの制作を求められ、作って上げているうちに「BMW」を中心としたライダー達に噂が広がり、バイクツーリングでの最高のキャンプチェアとして、「カーミットチェア」は誕生しました。
それから長い年月が経ち、創始者であるカーミット氏はこの事業からの引退を決意。そして2003年、長年に渡り「カーミットチェア」の愛好家であり、同じ「BMW」のバイクを愛するエンスージアスティックな仲間であった Tom Sherrill(トム・シェリル)氏が会社を引き継ぎます。彼はオリジナルのカーミットチェアの遺産を受け継ぐために、熟練した腕を持つ職人達の協力を得ることができ、故郷であるテネシー州ナッシュビル郊外に新しい生産工場を設立。近年ではトム・シェリル氏の息子である Millar Sherrill(ミラー・シェリル)氏も経営に加わり、現在に至るというわけです。
今回この「カーミットチェア」を15年以上前から取り扱いを始め、ファンを広げてきた「ネイタルデザイン」がミラー・シェリル氏を日本に招聘。ちょうど『GO OUT JAMBOREE 2025』の日程と重なるということで、「ネイタル」の出展ブースにミラー氏を招き、カーミットチェアのオーナー達にも集まってもらいました。
早速ミラー氏に話を伺うチャンスが得られたので、インタビュー。
GO OUT:ようこそ GO OUT JAMBOREEへ! 日本は初めてらしいですね。到着してから、どういった印象を持ったか教えてください。
Millar:今回は「ネイタルデザイン」のチームに招待してもらい、初めての日本という国のカルチャーを体験しています。すでに1週間ほど経ちましたが、最初は全てにおいて初めて目にするものばかりで、頭が混乱することもありましたが、とてもピースフルだし、楽しんでますよ。ちょうど桜が開花する季節ということで、シーズン的にもベストなタイミングで来れてよかったなと思っています。
GO OUT:この1週間はどんなふうに過ごしていましたか?
Millar:「ネイタルデザイン」の埼玉にあるガレージで、スタッフと共に「カーミットチェア」のメインテナンスや修理方法のレクシャーとか、ワークショップ的なことをやってたりしました。また、原宿などの街の様子も見て、人々のユニークなスタイルに驚いたりしていました。
GO OUT:そしてこのイベントに連れてこられた、ということですね(笑)。ところで「カーミットチェア」の地元であるナッシュビルはカントリーミュージックの聖地とされており、こういったアウトドアでのフェスティバルも盛んだと聞きましたが、日本のイベントはミラーさんにはどのように見えますか?
Millar:いい意味で、スタイルが違いますね。アプローチというか、アウトドアでの楽しみ方、捉え方がとても面白いと思います。私達のいる米国・ナッシュビルの周辺には多くの自然公園があり、それぞれのスタイルでアウトドアでのアクティビティを楽しんでますよ。音楽フェスティバルもあり、キャンプしながら過ごすっていう人達も多くいます。でも同じジャンルのオーディエンスが集まるイベントがほとんどですから、このようないろんなジャンル、スタイルの人たちが集うイベントは見たことがありません。そう言った意味で、大変興味深いですね。
GO OUT:アメリカでキャンプに行く時はクルマが主流ですか?
Millar:もちろんクルマ、特にキャンピングカーで楽しんでいる人は多くいます。その一方、多くの「カーミットチェア」愛好家のように、バイクツーリングでキャンプする人達もたくさんいます。
GO OUT:日本はバイク大国でもあるので、当然バイクツーリングも人気があって、ツーリング仲間でのキャンプも盛んに行われています。アメリカではどうでしょう、米国ブランドである「ハーレーダビッドソン」乗りの人達とか、どんなキャンプをするんでしょうか?
Millar:アメリカ製のバイクといえば「ハーレーダビッドソン」だから、1970年代の映画みたいなワイルドなスタイルでキャンプをしてるんだろうと思われるかもしれないけれど、ハーレー乗りの人達でキャンプに熱が入っている人たちは、実際は少数派だと思います。バイク乗りで、しかもキャンプしながら「カーミットチェア」を愛用してくれているのは、現オーナーである私の父みたいに「BMW」のバイクを愛用している人達が中心で、あとは同様のツアラータイプに乗っている日本ブランドのバイクを愛用している人達ですね。
GO OUT:えー、そうなんですか !? それは意外な答えでした。あれはやっぱり映画の世界なんですね(笑)。ところで、「カーミットチェア」は年間で何脚くらい作っているんですか?
Millar:およそですが、年間4000脚ほどは作っています。そのうち日本向けは全体の生産量の中でも多くを占めていて、とりわけ「ネイタルデザイン」仕様のモデルだけでも年間 400脚以上は作ってるはずですよ。工場は8人ほどの職人達と共に運営していて、それぞれのパーツのサプライヤーもナシュビル近郊にあり、例えば骨組みに使うオーク材やネジ1本に至るまで、全ての材料をテネシー州の中にある生産者から手配しています。
GO OUT:今回ここに並べられたパターンは「ネイタルデザイン」オリジナルの生地を使ってますよね。
Millar:はい、こうやって並べてみるとすごく見応えがありますね。他にも「ネイタルデザイン」オリジナルのカモフラージュ柄も作りました。彼らとの取り組みも、もう14年が経ちますね。とても良好な関係が保てており、こうやってファンが集まってくるのを見せてもらえるのはとても感慨深いです。
ここで「ネイタルデザイン」の後藤さんも登場。話を伺ってみました。
GO OUT:この「カーミットチェア」の良さって、一言で言うと、どういうところなんでしょう?
後藤:もちろんデザインの良さとか、雰囲気とかってあるけど、もう一つ付け加えるとしたら、想像以上にコンパクトになるってことじゃないかな。ちょうどいま、ミラーさんがバラしてくれるので、見てみましょう。
GO OUT:なるほど。こうやって組み立てが簡単なところも「カーミットチェア」の魅力なんですね!
後藤:左が最近お客さんに買って頂いた新しいもので、右がおそらく13-14年前に購入されたもの。ウッドのパーツにも味が出てくるし、ファブリックにも色褪せが見られて良い感じです。経年変化は必然的に出てくるんだけど、まだまだ使えるという。自分でヴィンテージチェアに仕上げていく楽しみがありますね。
GO OUT:月日が経つにつれ、存在感が増すのが良いですね。アウトドアに持ち出すだけでなく、お部屋に持ち込んでも雰囲気を壊さずインテリアに溶け込みそうです。
その後は「ネイタルデザイン」ブースに集まってくれたカーミットチェアのオーナー達とご歓談。BBQを楽しんだりしながら『GO OUT JAMBOREE』を満喫してくれたようだ。
GO OUT:ミラーさんに最後の質問です、今後、新しいプロジェクトはあったりしますか?
Millar:ええ、現在進行形で、新しいコラボレーションモデルの制作に取り組んでいます。詳しいことはまだ言えないんですが、おそらく日本でも発売されるんじゃないかな。楽しみに待っていてください。
GO OUT:貴重な情報ありがとうございます。新しいプロジェクトに期待しています!
最後に皆さんで愛用の「カーミットチェア」に座って記念撮影。ミラーさん、後藤さん、ありがとうございました!
Photo/Taizo Shukuri
The post カーミットチェアの魅力とは? ネイタルデザインが米国メーカー代表を招聘して交流会を開催。 first appeared on GO OUT WEB.