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レコード会社やアーティストに正当な報酬が支払われることは大切なことだけれども。
先日ようやく日本にも上陸し、現在招待制による登録を受け付けているSpotify(スポティファイ)。言わずもがな、世界で1億人以上のユーザーを抱える世界一の音楽ストリーミングサービスです。
そんなSpotify(スポティファイ)が、ドイツのベルリンに拠点を置く音楽ファイル共有サービス「SoundCloud(サウンドクラウド)」の買収を検討し、両社の合意が最終段階にまで達しているという報道がされています。
SoundCloudはユーザーやアーティスト、レコード会社が自由に楽曲をアップロードできるファイル共有とSNSを融合させたサービスです。その設立は2007年まで遡り、くしくもサービスが開始されたのはSpotifyと同じスウェーデン。ちなみにSpotifyは2006年設立でSoundCloudよりやや先行しています。
当初はインディーズのアーティストや無名のDJが楽曲をアップロードし、コアな音楽ユーザーが利用していたSoundCloudですが、知名度とユーザー数の拡大により、大手のレーベルも参入してきます。利用したことがある方ならわかるかと思いますが、SoundCloudは月額料金も広告表示も一切ありません。レコード会社からの出資などを中心に規模を拡大していきます。(Pro版の課金もあり)
人が集まれば、アーティストやレコード会社も寄ってくる。無料で聴けるので、更にユーザーが集まる。SoundCloudはそういった好循環のサイクルによって拡大を続けていきます。しかし、サービス内に広告を載せないという方針の為か、徐々に収益が悪化していき、運営が苦しくなってきます。そこに現れたのが先日買収の噂が報じられたTwitter社や、ガチンコの競合サービスであるSpotifyです。
SoundCloudはエレクトロミュージックからポップス、ヒップホップ、R&B、アンビエントからジャズまで、実に1億以上の楽曲が無料で際限なく楽しめます。
対してSpotifyの収録楽曲は4000万曲前後と言われています。もちろん、無料サービスのSoundCloudでは視聴できなレーベルの楽曲も多いものの、その差は圧倒的。SpotifyがSoundCloudを買収し、そのサービスを傘下に収めれば楽曲配信において世界では向かうところ敵なしとなります。
ただし、SoundCloudとSpotifyがお互いにうまい具合にかみ合ったサービスが出来るかと言われると、疑問符が残ります。日本でもスタートしたSpotifyは無料会員はあるものの、曲と曲の合間にスキップ不可のCMが流れる、シャッフル再生しかできない、強制的に特定の楽曲が流れるなど、音楽体験において致命的なデメリットがあります。
買収が実現した場合、Soundcloudのサービス品質を維持したまま、Spotifyが本体で制約のある無料会員サービスを継続するとは考えづらいのです。
つまりSoundcloudはSpotify同様有料化されるか、同様の広告を無視できないサービスになる可能性が高くなります。
希望的観測があるならば、ユーザーにとって最も喜ばしいのはSpotifyの無料版がSoundcloudになることか、Spotifyが膨大な楽曲を取得するのみで、両社が干渉し合わないサービスになることでしょう。
Spotify本社CEO ダニエル・エク氏 rbbtoday.com
まだまだ買収が正式決定したわけでもなく、今後の両サービスの展開も読み切れないSoundcloudとSpotify。でも一つだけ言えるのは、ユーザーにとって素晴らしいサービスが、永続的に続くとは限らないという点です。
いくらサービスが素晴らしくても、それがお金にならなければ、競合他社に簡単に買収され、資本主義のレールのもと収益化のシステムへ乗せられてします。この世界の経済原理において、あまりに使い勝手の良すぎたSoundcloudは淘汰されざるを得なかったのかも知れません。バナーが出る程度で済むのなら、いくらでも踏んだのに。
via:THE VERGE