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なんと! 近年、コーラを用いた胃石治療が医療界で注目されているという。にわかに信じがたい話であるが、一体どういうことなのか? 「患者さんの声に常に耳を傾けること」をモットーに、消化器・肝臓領域から風邪、高血圧……ほか、一般内科の分野まで幅広い治療を行っている今村甲彦先生に、その真偽と詳細をうかがってみた!!
■コーラによる胃石溶解療法とは
──「胆石」や「尿管結石」とかは、よく耳にします。でも、「胃石」っていうのはあまり聞き慣れないのですが……?
Dr.今村:「胃石」とは、胃内異物の一種で、部分的にだけ消化された物質や、まったく消化されなかった物質が固まったものです。胃石は胃潰瘍や腸閉塞の原因となるため、なんらかの方法で除去しなければなりません。
──その除去法の一つに、コーラが使用されている……と?
Dr.今村:そうなんです。アテネ大学の研究者たちが、植物性胃石の治療としてのコカ・コーラの有用性を調べるために、10年間にもわたって出版された論文を調査した結果、「有用だった」という研究レポートが『Alimentary Pharmacology &Therapeutics』誌に掲載されました。日本でもコーラによる胃石溶解療法は行われており、やはり「有用」とする論文が多数報告されています。
──具体的には、どんな治療法なんでしょう?
Dr.今村:市販のコーラを買ってきて胃の中に入れる。原則としてはそれだけです。
──え! 本当に「それだけ」……???
Dr.今村:はい。ただし、約3リットルもの大量のコーラを使わなければ効果はないので、飲むのは大変ですよね。だから、鼻からチューブを入れてゆっくりと流し込みます。毎日、1リットルほど飲み続ける方法や、内視鏡を用いて胃石に直接散布する方法などもあります。
あと、コーラだけでは溶けきらないケースもあるため、コーラで軟らかくなったところを、内視鏡から出した「スネア」と呼ばれるワイヤーで破砕する方法を併用することもあります。
──さっき先生は「植物性胃石の治療としてのコカ・コーラの有用性を調べるために〜」とおっしゃいましたが、たとえばペプシコーラはダメなんですか?
Dr.今村:いやいや、そんなことはありません(笑)。しかし、治療に用いるコーラは、どういうわけかコカ・コーラがほとんどだったりします。流通量やブランド力によるものなのかもしれません。もちろん、ただの炭酸水では効果がないとのことです。
■コーラがもっとも効くのは「柿胃石」
──そもそも、なぜ「コーラは胃石を溶かす」のでしょう?
Dr.今村:まだ、詳しい機序は明らかになっていませんが、コーラの酸がpH2.6と、正常分泌状態にある胃酸のpHに近いという説や、二酸化炭素の細かい気泡自体が胃石表面の微細な凹凸に浸透し、繊維質の融合を軟化させているという説が考えられています。さらに、コーラに含まれている未知の成分が溶解に作用しているという説もあります。
──「コーラが効かない胃石」もあるんですか?
Dr.今村:胃石には「植物胃石」「毛髪胃石」「樹脂胃石」「薬物胃石」……など、いくつかの種類があり、そのなかには「溶ける胃石」と「溶けない胃石」があるんです。我が国では植物胃石が多く、とくに「柿胃石」は植物胃石の8割以上と大半を占めています。そして、柿胃石にはコーラ溶解療法が有用です。
欧米では異色症による毛髪胃石が半数以上となっており、植物胃石ほどコーラの効き目はないようです。
──つまり、「柿の食べ過ぎは禁物」ってこと(笑)? 日本人って、みんな柿が大好きなのに……。
Dr.今村:柿のタンニン酸(シブオール)廃酸と重合して果実繊維や食物繊維を結合する作用があり、量が多ければ胃石をつくる可能性があります。けれど、通常量……よほど大量に食べないかぎりは心配ありません。
とは言え、糖尿病性自律神経障害や、胃切除など胃内容物の排出障害がある場合は、柿胃石ができやすいとされているので、摂取量には注意が必要です。
──ありがとうございました。ちなみに、これまでの先生の話を聞いて、「じゃあ胃石予防のため、毎日コーラを飲もう!」みたいな人も出てくると思うのですが……?
Dr.今村:コーラが効くのは、あくまで「胃石を溶かすこと」なので、残念ながら「予防」はできません。毎日何リットルもコーラを飲む生活が、はたして「健康的」と呼べるかどうかも疑問ですしね(笑)。
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