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好きになったら一途になる。かつてはそれですんでいたのだが、今はそれが「ストーカー」と呼ばれてしまう。そんなことから恋も仕事も失ってしまった男性がいる。
■社内で好きになった人がいて
大学卒業後、有名企業に勤めたものの人間関係に苦しんで4年で退職。それ以降、非正規で働き続けてきたシュウイチさん(41歳)。駅から徒歩20分の古いアパートに住み、節約しながら何とか暮らしてきた。恋愛も結婚もあきらめかけていたが、昨年、やはり非正規職員として職場にやってきたマミさん(39歳)に好意を抱いた。
「毎日、顔を合わせて仕事をしているうちにどんどん好きになっていきました。ある日、僕から誘って帰りに居酒屋に寄ったんです。お互いにいろいろ話をしてすごく楽しかった。彼女も楽しかったと言ってくれたので、また誘っていいかと尋ねたらぜひと言われました」
シュウイチさんの日々は、突然、バラ色になった。仕事も楽しい。正社員を目指して、もっとがんばろうと思うようになった。
だが、二度目にマミさんを誘うと、彼女は「今日はちょっと」と渋る。「じゃあ、明日」と粘ると頷くのだが、当日になるとやはり「母親が具合が悪い」とか「親戚が来る」とか理由をつける。
「だけど僕のことがイヤだとは言わなかったから、てっきり好かれていると思い込んでいたんです」
■プレゼントを渡して
1ヶ月ほどたち、彼女の誕生日がやってきた。最初に居酒屋に行ったとき聞いていたのだ。その日は喫茶店に寄る時間くらいはあると言われたので、楽しく話をしたあと、彼女に似合うと思ったスカーフをプレゼントした。
「彼女、喜んでくれたんですよ。でも翌日、スカーフをしてきてはくれなかった。がっかりしましたけどあえて聞きませんでした」
彼にしてみれば厳しい生活の中から貯めた大枚をはたいたプレゼントだ。だが、そこで「どうしてつけてきてくれないの?」とは聞けない。
その後もデートを望む彼に、彼女はいろいろ言い訳をつけてきた。
そしてさらに1ヶ月後、彼は急に人事担当者に呼ばれた。
「僕がストーカーだというんです。相談が来ていると。寝耳に水ですよ。ことの経緯を説明しましたが、とにかく彼女がものすごく怖がっている、と。彼女をここに呼んで話を聞いてほしいと言っても無理でした。非正規だからという負い目もあって、引き下がるしかなかった」
席に戻ると、彼女は早退してもういなかった。そして彼はそのまま会社を辞めた。
「完全に気持ちが折れました。最初に居酒屋に行ったときと誕生日のときは感触がよかったのに……。あのスカーフ、彼女は売りに出したんでしょうかね。そんな疑惑まで持ち始めました」
誰に頼ることもできず、彼は部屋にひきこもった。だがたいして貯金もないから遊んではいられない。またすぐ他の会社で非正規雇用となった。
「嫌いなら嫌いと言ってくれればあきらめるのに、ヘンに飼い殺しみたいな状況にしておいてストーカーだと言うなんて、本当に彼女はひどいと思う。女性不信になりました」
彼は非常にマジメな人である。マミさんが何を思ってそんなことをしたのかわからないが、世の中、そんなひどい女ばかりじゃないから……と慰めるしかなかった。