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デジタル大辞泉によると、「人脈」とは
「ある集団・組織の中などで、主義・主張や利害などによる、人と人とのつながり」
……とある。すなわち、穿った見方をすれば「人のことを損得勘定でしか見なしていない」わけである。こうも下品なワードを安易に使ってしまう人種に、はたして人は寄ってくるのだろうか?
つい1ヶ月ほど前、このcitrusに寄稿した『「人脈」という言葉を頻繁に使う人間を信用してはいけないワケ』なるタイトルのコラムで、こんなことを書いた。そして、この「人脈」ってヤツを大いに売りとしていた一人のお笑い芸人が、とあるスクープ記事によって窮地に立たされている。ネット版のデイリースポーツが報じている事件のあらましは以下のとおり。
お笑いコンビ「カラテカ」の入江慎也(42)が、6月4日付けで所属の吉本興業から契約を解消されていることが6日、分かった。
(中略)7日発売の写真週刊誌「フライデー」が、ロンドンブーツ1号2号・田村亮ら同社の芸人が2014年12月に大規模振り込め詐欺グループの忘年会に出席し、その仲介役が入江だったことを報道。吉本興業が入江に聞き取りをしたところ、仲介の事実を認めたため、「吉本興業および所属芸人のブランドを著しく傷つけた」として、契約解消に至った。
同社によると、忘年会の出席は、会社を通さず直接ギャラを受け取る“闇営業”。入江は、相手が振り込め詐欺グループだとは「知らなかった」と説明したという。だが同社は「うちの会社は、絶対に反社会的組織との交流は許さない」と、厳しい処分を科した。
常々「友だち5000人」を豪語していた入江だが、「友だち」が5000人もいたら、ひとり一人の“クリーニング作業”が、つい疎かになってしまうのも仕方なく、そのうちの何人だか何十人だかが反社会的組織に属している確率だって、おのずと高くなる。「人脈」の分母をいたずらに拡大すればするほどに生じる当然のリスクだと言えよう。
いっぽうで、その「人徳」に人が集まり、結果としてそれが「人脈」と呼ばれる人物は、たしかに実在する。ただ、そういう徳のある人物は、私が観察するかぎり、一本の人脈を自分が持っているもう一本の人脈と繋げ合わせるような真似は、原則としてしない。「景気の良さげなエステティックサロンの経営や健康食品の販売をしている会社(を装った振り込め詐欺グループ)」という人脈と「自分が所属する事務所の先輩・後輩芸人」という人脈との「仲介」に、お金の匂いをあざとく嗅ぎ取る発想はわからなくもない。が、徳に人が集まる人物は「仲介することによって人脈がネズミ算方式で増幅し、収拾困難となってしまう事態」を本能的に回避する。たとえば、徳に人が集まる人物Xが某国民的スターであるAと仲良しだったとしよう。そこで、やはりXと仲良しな某政治家Bが「今度の選挙でAさんに俺の応援演説をやってほしい」と頼んできたとしても、Xは毅然とした姿勢でお断りする。私が主張したいのは、つまりがこういったことなのだ(※そもそも、そんなことを頼んできた時点で、すでにその政治家Bは友だちリストから外してもかまわないのだが…)。
では、いわゆる「人脈」を武器に、嬉々としてビジネスチャンスを生み出そうとするような人種は、どうやってその人脈を築いているのだろう? 私はここで、入江がかつて豪語していたもう一つのキャッチコピー「合コン界のファンタジスタ」に注目したい。この手のタイプの人種は、得てして駒となる女性のネットワークづくりに、成り振りかまわず執心する。そう。少なくとも男という生き物は「お金」以上に「女」の匂いがする場所へと集まりがちなのだ。おそらくロンブーの亮も雨上がり決死隊の宮迫も、お金よりは「コイツとつるんでいたら、なにかと都合のいいネエチャンを世話してくれるしなぁ…」と、ついつい甘い誘いに乗ってしまったのではなかろうか?
いずれにせよ、吉本興業を実質上解雇された入江としては、これからが正念場──とりあえず「5000人の友だち」が、はたしてどんな態度、リアクションを示すのか……今後の動向を見守りたい。