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『週刊女性PRIME』が配信する『「モテたくて(笑)」から始まった独自のものまねワールド』なるタイトルの、ものまねタレント・コロッケ(59)のロングインタビュー記事が、じつに読みごたえたっぷりで面白かった。
……と、過去にも似たような出だしの原稿を書いたような既視感が脳裡をよぎったので、自身のパソコンで「コロッケ」と検索をかけて調べてみると……あった! ありました!! 2014年、もう5年前にこのcitrusの前身となるニュースサイト『news dig』に、やはりどこだかのメディアが掲載していたコロッケのインタビューについて論じるコラムを寄稿していた。
「矛盾するかもしれないんですけど、モノマネをする際、別に似ている必要がなくてもいいと思っているんです。極論すれば、ただ似てるだけならご本人の歌を聴いたほうがよっぽど良いですから」
「武田鉄矢さんの金八先生でも、昔は『コラ!!』って声を張り上げてたんです。でも、最近の金八先生は『コラ……』って冷静に低音で叱るんです。この変化をキチンと出来ないと本当の意味でリスペクトに値しないと個人的には思っています」
……ほか、とても為になる話をなされていた。そして、これら一連の発言から「ああ、コロッケさんって、ホントいいヒトなんだな…」と、感動した……ことを思い出した。そう。私はコロッケの“職人”としての美意識や、ものまねに対する世界観が大好きなんだ……と、あらためて自覚した。
今回のインタビューも、じんわりと心に染み入る、でも捉えようによっては哲学的とさえ言える、深みのある名ゼリフのオン・パレードであった。
「すごく雑な言い方なんですが、(僕のネタ作りは)“通りすがり”ですね。テレビってそんなに真剣に見ませんよね。食べながら、しゃべりながら、仕事しながら。僕もそんな“通りすがり”のスタンスで見ている。
でも、その中でも頭に残る“残像”があって、この人は髪の毛がチリチリしてる、声がハスキー、太っているやせている、背が高い、大勢いる、5人組だなとか。その“残像”こそが僕のやっていること。
だから僕の中では、河村隆一さんは寝っ転がっている。平井堅さんは手で背の高さをずっと測っている(笑)。ノリでいけば、そんな感じなんですよ」
コロッケ本人の分析によると、自分のものまねは「似せるのは3割。あとの7割は別の生き物(笑)」なのだという。
「(だって、ものまねが)うまいと思われたってしょうがないじゃない(笑)。僕のネタはしょっちゅう見るもんじゃない。お客さんから“気が滅入ったとき、何カ月かに一回コロッケさん見ます”って言われたときに、僕はこのうえなく、最高の位置にいるなと思った」
先日、私はここcitrusにアップした「個性」をテーマとするコラムに
たとえば、藤子センセイが描いたドラえもんの原画があったとする。それを極力忠実に真似るため、上からトレーシングペーパーを被せて、その線を丁寧になぞってみる。当然のこと、ほぼオリジナルに近いドラえもんが完成するわけだが、「近い」だけで100%完璧に「同じ」ではない。「線をなぞる」という行為には、必ずコンマ数ミリかのズレが生じてくるからだ。そして、その「ズレ」こそが「個性」だと、私は考える。
……と書いたばかりである。つまり、コロッケの芸とは、オリジナルの線を3割なぞって、あとの7割を極端な“デフォルメ”によって、自身のオリジナリティへと昇華させているのだ。
加えて、このコラムで私は、
仮にあなたが、本気で実社会において「個性」的な人間を演じたいなら、むしろまずは「徹底して周囲の身近な人たちと同じ仕事・生活スタイルで日々を暮らしてみること」をおすすめしたい。
……とも書いた。これを第一ステップとするなら、次のステップは「“通りすがりの残像”を追って、なんとなくお手本としたい人を適当に真似てみること」が、モチロンものまね芸人にかぎってではなく、スタンダードな芸人であろうとプロ野球選手であろうとサラリーマンであろうと、自身のオリジナリティを構築していく術なのかもしれない。
あと、最後に
「心の中で大事にしていることは“相手が一番、自分が二番”だということ。それは新しい時代になっても、変わらないよ」
……とコロッケは釘を刺す。こういう謙虚さもゼヒ見習ってもらいたいし、私も見習いたい。