出典:「日本ダムカレー協会」公式サイトより


 



J CASTニュースによると、建設関係のネットメディアに掲載された、「ダムカレー」を不謹慎と断じる記事が、ちまたで論議を呼んでいる……らしい。



 



「ダムカレー」とは、日本ダムカレー協会の公式サイトによると、ダムをモチーフにしたカレーのことで、(一般的には)ごはんが堰堤、カレールーは貯水池を表現するもので、2009年ごろから全国的に増えているという。



 



そんな「ダムカレー」について異論を唱える「ダムカレーは不謹慎だ、ふざけるな! 被災地の土木屋が大激怒」なるタイトルの記事が2月21日、建設関係のメディア『施工の神様』にて公開。大雨土砂災害の復興工事に従事している執筆者は文中で、「ダムカレー」や「ビルカレー」の存在を知り、



 




「批判を覚悟で物申したい」と前置きしたうえで、「ダム」や「ビル」を壊して食べることが悲惨な災害を連想させる、などと批判。被災が続く状況では軽率な行動ではないかと疑問を投げかけ、カレーを面白がってPRしたり食べたりしている人を目にしたら、腹が立つなどと切り捨てた。執筆者たちは日々血のにじむような努力を積み重ねていることもあり、どうしても許せない「施工管理技士に対する侮辱」だと激しく主張している。




 



……のだそう。そして、この記事に対して日本ダムカレー協会が同日、



 




「多くのダムカレーは、過疎化に悩むダム水源地の方々が考えだしたものです。ダムカレーで、少しでも活気が取り戻せたらという気持ちから誕生しています」




……とツイッターで発言。J CASTニュースによる電話取材でも、同協会を主宰する宮島咲さんは



 




「災害で被災されて苦しんでいる方の気持ちも非常にわかるが、ダムカレーは過疎化に悩む水源地、ダムで自分の土地を追われた人が、なんとか自分の土地をもう一度盛り上げようとして心を込めてつくったアイテム。



頭ごなしに『不謹慎』とするのは、住んでいる方やダムで追われた方を否定することにつながりかねない。



地方でがんばっている飲食店が『少しでも町を盛り上げよう』と考えたダムカレーを否定されることにかちんときますよね。



ダムカレーを食べに来て、ダムを見て『ダムってすごいんだ、土木はすごいんだ』と思ってくれる人も多いわけで、(書いた人は)それすら否定することになってしまうんじゃないか。」




 



……と反論している。協会発のツイートへのリプライも、



 




「不謹慎とかあり得ない。下らない意見に耳を貸す必要ないです」



 



「ダムカレーは悪くないと思う!!」




 



……ほか、ダムカレーを擁護する論調がおおよそであるようで、発端となった記事は現在削除されている。



 



これら一連の騒動はテレビでも報じられており、私もダムカレーがスプーンを入れることによって“決壊”していくさまを、複数のムービーで目の当たりにしたのだけれど、「不謹慎」と言われてみれば正直なところ、そう解釈できなくもないかもしれないかなぁ?……くらいに、ほのかな疑問が頭を一瞬だけよぎったりもした(ソーセージを水門栓代わりにしたダムカレーのアイデアは単純に素晴らしいと感動した)。が、あれこれ思考を巡らせていくうちに、「じゃあ、スカイツリーをモチーフにしたカレーはどうなのか、楽天パンダをモチーフにしたオムライスはどうなのか?」……といった、新たなクエスチョンが頭をよぎり、最終的には「やはり不謹慎ではない」と自分のなかで、結論づけた。



 



 



楽天パンダをモチーフにしたオムライス


 



しかし、いくら少数派とはいえ「ダムカレーを不謹慎と見なす」のも、これはこれで一つのれっきとした着眼であり、一部のメディアに携わる者を除けば、公に向けて発言することが困難であった20年や30年前の時代と違って、誰もが自由に意見できる現在のネット社会において、この手の突飛な見識を世に問うことは、もはや“権利”として確立されているのだ。



 



ただ、この「大雨土砂災害の復興工事に従事している執筆者」の頭ごなしな論調だけがいただけない……と私は思う。せめて「私はダムカレーを不謹慎だと感じたのだけれど、皆さんはどうお感じでしょう?」みたいな“権利を行使する際の謙虚さ”が文面から滲み出ていれば……お茶の間の視聴者やネット住民の皆さまも、もっとこの件に関して真剣に議論してみようって気にもなったのではなかろうか。売り言葉に買い言葉ってヤツである。まあ、過激な文言のほうが注目されやすいって発想もわからなくはないのだが……。


情報提供元: citrus
記事名:「 「ダムカレーは不謹慎か」を問う、ネット社会での“権利”問題