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私が今年あたりからもっとも愛読している、講談社がネット配信する『現代ビジネス』に、また骨太なロングインタビュー記事が掲載されていた。
『オードリー若林「もうすぐ、マウンティングがダサい時代が来る」』なるタイトルで、売り上げ10万部を超えるベストセラーとなっている新著『ナナメの夕暮れ』(文藝春秋社)を刊行した漫才コンビ『オードリー』のツッコミ役・若林正恭(40)が、不惑の四十路を迎えた今の心境を5ページ(ネット)にわたって語り尽くす内容である。
すごくいいことが書いてあった。私は『しくじり先生 俺みたいになるな!』(テレビ朝日系)がわりと好きだったのだけれど、そこにはなんとなく若林が出演しており、「このヒト、ツッコミのタイミングがめっちゃタイトで、しかも面白いなぁ」となんとなく顔を覚え、現在の『激レアさんを連れてきた』(テレビ朝日系)の毎回ビデオ録画へと到っている。不勉強ながら3ヶ月ほど前まで、あのポマード横分けマッチョ・春日俊彰(39)の相方だってことを知らなかった。申し訳ないが、最初は「ほっしゃん。」だとばかり思っていた(笑)。テレビでもインタビューでもじわっといつの間にか染み入ってくるヒトなのだ。
「小さいころから自分がダメすぎて、そういう劣等感を誤魔化すために、文化祭でステージに上がる学友たちを『面白くもないのに』と拗ねて見ていた」という若林が語る、同記事中に書いてあった、とくに「すごくいいこと」をいくつか抜粋してみよう。
芯となるものはこれだと提示する、意志の力が大事なんだってビジネス書や自己啓発書が売れてますけど、書いているのは「ぶっとんだ人」ですよね。それって、個人的にはあんまり興味を惹かれないんです。
(中略)成功した人、おしゃれな人の話を聴く番組もありますけど、僕には向いてないなと思うんすよ。成功している人の成功した秘訣を聴いても、スタジオでもう何も言えることがない。スクールカーストが高かった人たちに、低かった僕が言うことはないです(笑)。
やっぱり、『しくじり先生』や『激レアさん』みたいな話が好きなんですよ。
こういった嗜好背景を持ちながらも、若林は自身の父が亡くなったのを見て「斜に構えたままだと、人生あっという間に終わるな…」と考え込み、今は自分のなかの「ナナメ」を殺すようにしているという。するとどうなるのか……?
じつに当たり前な結論ではあるが、「もう正直に行くしかないな」といった境地に行く着くわけだ。
ファンにガッカリはされているみたいなんですけど。でも、僕には僕の人生があるし、気にしていられないです。これからは自分がその時に感じたこと、面白いと思ったことを喋っていくしかないかな。
いささか宗教がかった言い回しになるのかも知れないが、“真理”とは往々にして捻りのない、シンプルな言葉で表現されるものである。
たとえば、ちまたの私と同世代である50代男性のほとんどが、会社でそれなりに出世して、家を買って子どもも育って、まもなく入る退職金の計算をしながら悠々自適の生活を送っていたとしても、私はフリーターのように原稿を書いては日銭を稼いで、平日の朝は通勤ラッシュに揉まれユニフォーム姿でデイパックにビヨンドバットを突き刺し草野球に出かけ、夜はキレイなねえちゃんの匂いがする飲み会に財布の中身と相談しつつせっせと顔を出す……そんなフリーターのようなギリギリの毎日を「悪くない」と感じているなら、他人にどう思われようと、素直にやり続けるしかないということだ。