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道路交通法第七十条には、運転者の遵守事項として「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」(罰則 第百十九条第一項第九号、同条第二項)と明記されている。しかし、ここには、具体的にどのような履物がダメということは書かれていない。「他人に危害を及ぼさない運転」ができるならどんな履物でも良いのだろうか?
■各都道府県の道路交通法施行細則には詳細が明記されている
道路交通法にはその下に、各都道府県の公安委員会が定めた「道路交通法施行規則」(道路交通規則)なるものが存在する。難解で抽象的な表現が多い道路交通法を分かりやすく、具体的な例を挙げて説明するためのもの、と思っていればいいだろう。運転中の履物に関しても、道交法だけでは「他人に危害を及ぼさない運転」としか書かれておらず、そのための履物とはどういうもの?など、何のことだかわかりづらい。下駄やサンダルがダメ、とも裸足は良いとも書かれていない。しかし、各都道府県の試行催促には「ダメな履物」の例が掲載されている。
例えば……
東京都 木製サンダル、下駄、スリッパなどはダメ
大阪府 かかとをとめる装置がないスリッパ、サンダル(わらじ式のものを除く)、つっかけ草履等
岩手県 スリッパ・木製サンダル・下駄・厚底靴等は禁止。ゴム草履は、著しい薄底以外のものはOK。足に対する固着性を欠く等の問題もないことから「運転の妨げとなるような履物」には該当しない
新潟県 下駄・木製サンダルを禁止
広島県 サンダルは禁止
■サンダル、下駄、スリッパはダメ、ゴム草履はOKの理由
では、そもそも、サンダルや下駄での運転が禁止される理由はどんなことだろうか? サンダル、下駄、スリッパに共通することは、「かかとがない」ということ。道交法用語では「足に対して固着性を欠く」履物と定義されている。つまり、かかとがないために履物が脱げやすく、足にしっかりと付いていないため、ペダルが踏みづらく適正なペダル操作ができない履物、ということになる。一方、クロックスのようにバンドがついてかかとが固定されるものはOKと解釈されるのが一般的だ。また、下駄や木製サンダルでは固く柔軟性がないため、ペダル操作が困難であり危険だ。
このほか禁止の履物としては、「厚底靴」がある。20年以上前に流行した厚底サンダルなど、靴底が全体的に厚いものは足の裏の感覚、ペダルを踏んだ時の感覚が分かりにくいため、禁止されているケースが多い。しかし、ハイヒールのように先端が薄く、かかと部分だけ高い靴に関しては禁止されていない。(ただし、ハイヒールでのペダル操作はハイヒールのかかと部分をかなり傷めてしまう)
また、ゴム草履(ビーチサンダル、英俗語ではflip-flopなど)やわらじ、草履はかかとのないサンダルのようなものだが、実は禁止の都道府県は少ない。それは靴底が柔らかく、足にフィットしやすく、ペダルを踏んだ時の感覚もわかりやすいから、というのが理由のようだ。安全面ではあまり勧められないが、「鼻緒があって、底が比較的薄く平らで、柔軟性があって足に定着し、形態も特異なものでなく、運転操作の過程で脱落する等運転の妨げとなるおそれがないもの」 は、運転中に履いていても、違反の切符を切られない模様。
■裸足はOK?その理由とは
各都道府県の交通規則にもほとんど記されていないのが、「裸足」での運転である。そもそも、現在の道交法は、「運転する際には何かしら履物を履く」ことを前提として作られているため、裸足での運転には言及されていない。以前、警察庁に聞いたことがあるが、「裸足での運転、靴下だけでの運転はハンドルやブレーキなどを確実に操作し、他人に危害を及ぼさないような方法であれば、問題なさそうである。しかし、経験者ならわかると思うが裸足での運転は靴を履いた場合とペダル操作など、かなり感覚が異なる。靴は「面」で踏むのに対して、裸足は「点」で踏む感覚である。いざという時、ABSを作動させる位のフルブレーキを怪我もなく、裸足でかけられる人がどれだけいるか疑問である。靴を履いていても完璧なフルブレーキングができる人は少数と言われている。
ちなみに、これらの道路交通法の多くは昭和35年!(1960年)に制定されている。60年近く経過した現在とは、道路事情、車事情など諸々の交通事情はかなり変わっている。当時は、「下駄や草履」で運転する人が多かったのだろうか?また、AT車の割合も今とは比べ物にならないほどごく少数だったはず…MT車かAT車か?によってもペダル操作はかなり変わってくると思うのだが……。