ある調査会社が行った「老後の生活資金に関する意識調査」で、16~79歳までの男女約1万人から得た回答によると、60代の生活資金の想定で最も多かったのが「働いて稼ぐ収入」(47.5%)、ほぼ同率の僅差で「公的年金」(47%)だったとのことです。以降、「それまでの貯金」(37.4%)、「個人年金」(23.5%)、「家族や親族の収入」(13%)と続いています。



 



この性別および年代別では、「働いて稼ぐ収入」が40代男性(64.9%)、50代男性(66.7%)と多かった一方、今の60歳以上では、「公的年金」が男女ともに7割前後と高くなっていました。また39歳以下は「公的年金」が4~5割に留まっていて、年金だけをあてにしない傾向が強いことが分かったとのことです。



 



 



■希望する時給は1000円以上が最多



 



私が面白いと思ったのは「定年退職後に働き続ける場合の希望時給額」で、「時給1000円以上」が9割という中で、現在の勤務先の規模別に見ると、企業規模が大きくなるほど希望が高額になり、「時給1900円以上」と回答した割合が最も多かったのは、「1000人以上」で14.1%だったそうです。



 



私が話を聞いたことがある大企業出身者も、責任がなくても偉そうに振舞えるご意見番のような仕事を、しかも結構な高額処遇で希望している人が結構いて、自分の価値を勘違いしていると思うことがありましたので、そのあたりが結果に出ている感じがします。



 



私が個人的に、シニアの方々のこれからの仕事に対する考え方を聞いていて思うのは、とにかくニーズや希望の個人差が大きいということです。片手間でいい人からがっちりフルタイムの人まで、お金じゃないと言いながら、まあまあお金の話だったり、他にも時間や場所、仕事内容など、いろいろ組み合わせが複雑で、希望通りになる人は、たぶん一握りもいないでしょう。



 



結果的には、今の会社での継続雇用を選ぶ人が最も多いですが、同じ仕事内容でも給料は激減という話もあり、やる気をもってイキイキと働く感じの人は、あまり多いとは見えません。



 



定年後のシニアの場合、こんな仕事に対するモチベーションが、最も個人差が大きい部分のように思います。ただし、ここには雇用条件の問題などもあるので、一概に本人だけのせいとはいえないところがあります。



 



 



■仕事が集まってくる人とそうでない人の差



 



もう一つ、一般的な求人応募を経て仕事に就く人はもちろんいますが、その一方、「うちを手伝ってくれないか」などと言われ、周りの知人からの依頼や紹介のような形で仕事に就いている人を、結構よく目にします。またそういう形が望ましいと思っている人の割合は、少なくとも私の周りではわりと高いと感じます。



 



ここで見られる状況として、依頼や紹介が集まってくる人と、そうでない人の間には、かなり大きな差があります。いったい何が違うのかをいろいろ観察していて、人柄、職歴、経験、その他要因はたくさんあるものの、こちらも関係が複雑で、これまでは今一つ整理できずにいました。



 



しかし、最近思った共通点に、「現場の仕事をサポートできる人」というものがあります。もう少しいうと、偉ぶらずに現場に下りていって、押し付けでなく自分の経験を伝えられる人です。



 



ある人は、自分の知り合いの経営者から、何らかの紹介や依頼を得ようと回っていましたが、それらしい話はまったくありませんでした。よく聞けば、相手は自分と同世代の経営者で、その人たちに経営やマネジメントのサポートをすると言って回ったようですが、それは会社のナンバー2、ナンバー3の立場での仕事であり、そんなポジションを会社の内情も知らない外部の人間に、いきなり任せようと考えることはほとんどないでしょう。



 



一方、依頼や紹介が集まる人は、営業、技術、管理部門、さらに役員や経営者などの経験を問わず、「現場に対して何かできる人」でした。ただ「管理ができます」「計画が作れます」ではなく、ある程度の実務ができて、依頼されたポジションに応じた動き方のできる人です。一番望まれていたのは、現場実務と上位のマネジメントが両立できる人です。



 



 



■年下世代とのかかわり方



 



今の現場を取り仕切っている責任者は、40~50代と、自分より一回りも二回りも下の世代ですが、そういう人は、このあたりの年下世代からも声がかかります。



 



ある部品製造の会社に、定年後も15年以上、技術顧問として勤務している人がいましたが、何かわからないことがあると、若手や中堅技術者がその人に意見を求めに行くそうです。もちろんすべてにこたえられる訳ではありませんが、現場の技術者から認められ、頼りにされていました。さすがにご本人が年齢的につらいといって、いよいよ引退されるようですが、会社は何か特別なことがあったときだけでも、助言をもらえるような関係を模索しています。



 



私が見ている限りですが、定年後のシニアが希望に近い仕事をするには、現場対応力は意外に大きな要件です。年下世代とのかかわり方も重要です。もし自分の強みがマネジメント経験だったとしても、定年後に気分良く働くために、何か一つは現場にかかわる糸口を持っておくことが必要ではないかと思います。


情報提供元: citrus
記事名:「 定年後、仕事が「選べる」シニアに共通していること