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平成時代を当時の新語・流行語で振り返るコラムをお届けします。今回は「1993年(平成5年)」編です。
93年といえば、反アパルトヘイト運動で知られるネルソン・マンデラ氏がノーベル平和賞を受賞した年です。国内では、皇太子さまのご成婚が話題に。その報道の過熱ぶりは、結婚相手である小和田雅子さん(当時)の飼い犬・ショコラにまで及ぶほどでした。また東京ではレインボーブリッジが開通。新デートスポットとして大きな話題になりました。
■【Jリーグ】選手の影響で「ミサンガ」も流行
この年、プロサッカーリーグの「Jリーグ」が開幕。プロスポーツと言えば野球一辺倒だった日本で、新たにプロサッカーの文化が開花しました。そして野球でいうコミッショナーはチェアマン、ファンはサポーター、ビジターはアウェーといった具合に、新しい用語も次々と浸透し始めました。また「オーレーオレオレオレー」と叫ぶ応援歌(We Are The Champ)も話題になりました。なお同年10月28日のW杯アジア最終予選では、日本代表がイラク代表から試合終了間際に同点ゴールを決められ、目前だったW杯初出場を逃しています。この出来事は開催地にちなみ「ドーハの悲劇」と名付けられています。
■【コギャル】「格好だけのギャル」の略、との説も
コギャルがメディアで最初に話題になったのがこの年。茶髪、ガングロ、ルーズソックスなどを特徴とする制服ファッションで若者文化を牽引した女子中高生たちでした。本格的なブームは90年代中盤以降のこと。プリクラ、ポケベル、ピッチ(PHS)、パラパラなど、コギャルが火付け役になったアイテムや文化もたくさんありました。語源は高校生ギャルの略とも、子ギャルの意味とも言われますが「従来的な“ギャル”が女子大生以上の世代を指した」という前提では共通します。この文化の系譜にある少女たちは、やがて単に「ギャル」と呼ばれるように。かつての過剰なスタイルこそ失われたものの、現在でもギャル文化は静かに息づいています。
■【聞いてないよぉ】一発屋ジンクスの嘘
お笑いトリオのダチョウ倶楽部といえば「どうぞどうぞ」などのお約束系ギャグで有名ですね。そんな彼らの初期のヒット作が「聞いてないよぉ」。元々は『お笑いウルトラクイズ』で過激な企画を突然強いられた際に発した“本音の一言”でした。既知の企画なのに「聞いてないよぉ」と言い放つ“お約束”は、のちに定着したスタイルです。ところでこのギャグは同年の新語・流行語大賞を受賞しています。世間ではよく「受賞芸人は一発屋になる」とのジンクスも耳にしますが、かつての受賞者にはタモリ、所ジョージ、高田純次などのそうそうたる面々も並んでいました。同賞の長い歴史(84年~)を振り返ると、ジンクスは必ずしも成立していないのです。
■【矢ガモ】今も昔も「動物ネタ」は加熱しがち
1993年1月末、東京・石神井川でクロスボウの矢が刺さったカモが発見されました。このカモは上野・不忍池に移動したのち、上野動物園の職員によって無事保護されることに。治療を受けたカモは、ふたたび自然に帰っていったのです。さて当時とりわけ話題になったのは、マスコミによる加熱報道でした。ニュース番組やワイドショーはこのカモを「矢ガモ」と称して、その動向を連日報道。人々が現場に大挙押しかけるなどの影響も出ました。東京都は報道各社に対し「保護に支障が出る」として取材自粛を呼びかけたほどでした。マスコミの狂騒に接した当時の人々の中には、84年に話題になった「カルガモ親子の引っ越し」の加熱報道を思い出した人もいたようです。
※ほかにもこんな新語が……
新語・流行語など:フリーエージェント、ブルセラ(ブルマーとセーラー服の合成語)、 マインドコントロール
商品・サービスなど:ナタデココ、清貧の思想(書籍)、高校教師(ドラマ)、料理の鉄人、ウゴウゴルーガ(92~94年)
■【まとめ】Jリーグが日本語に残した少なからぬ影響
Jリーグは言葉の世界にも地味に影響を与えています。例えば「アウェー」もそのひとつ。「職場でのアウェー感が半端ない」という時のアウェーは、Jリーグがなければ成立しなかったかもしれません。また「J-POP」という言葉(造語は88年、普及は90年代中期)についても、同じくJで始まるJリーグが存在したからこそ、普及に向かったとの見方もあります。Jリーグは、日本語にも少なからぬ影響を与えた存在でした。