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文部科学省の前幹部が息子を東京医科大に「裏口入学」させたとして東京地検特捜部に受託収賄の容疑で逮捕されるという事件が起こりました。実は『私学』に、『私人』が、裏口入学した場合には、今回のような収賄罪にはなりません。
■公務員が利益を与えることが問題だった
公務員は、職務に関して、賄賂を受け取ったり、またはその要求や約束をしたときに単純収賄罪が成立し、さらにその公務員が、一定の職務行為を行うことを依頼されている場合には、より重い受託収賄罪が成立します。
今回の事件では、保護者が、文部科学省科学技術・学術政策局長であり、かつ、彼の職務である「私立大学研究ブランディング事業」の対象校の選定にあたって、東京医科大学側に便宜を図ることを依頼され、その見返りに同学校への息子の裏口入学を認めてもらっていたということでした。
このために、保護者には、単純収賄罪よりも重い、受託収賄罪が成立することになったのです。
■一般人であれば、基本的には犯罪ではない
一般人であれば、収賄罪は成立しません。すなわち、『私学』入試の際に、『私人』が寄附金を多く払って、いわゆる裏口入学させたとしても、今回のような収賄罪は成立しないのです。これはもちろん、私立の幼稚園や小中高で発覚した場合でも今回のような問題にはなりません。
■もし裏口入学がバレてしまったときは…
学校内には、大学教職員に対するルールから、裏口入学が発覚した場合には、その教職員に対する処分が行われる可能性があります。当然ですが、学生側も、入学の条件を満たしていないということであれば、入学自体が不適切に行われているわけですから、合格の取消しや学校からの退学処分が考えられます。
また、近年でもこのような裏口入学のあっせんを行うと保護者に持ち掛け、多額の金員を保護者から奪い取るという詐欺も横行しています。
その上、裏口入学できたとしても、入学先の学校には、かなりのお金を積まなければ入れない、努力では入れない学力レベルの学校ですから、入った後の周囲との実力差は、子どもにとってはかなりの負担になると考えられますし、子どもに知らせずに裏口入学を行った後に、それが発覚したときには、子どもの尊厳を根こそぎ奪うような結果になってしまうでしょう。
このように裏口入学を行うことは、リスクの方がはるかに高いでしょうし、裏口入学をさせられるだけのお金があるのであれば、それを子どもの教育に充てて、子どもを信じることをした方がよっぽど子どもの役に立つでしょう。
■裏口入学が当たり前? アメリカのレガシーアドミッション制度
アメリカでは、トップレベルの大学において、卒業生の子ども達に対して、入試において優遇措置を行っていることが、公然のこととして扱われています。
これは、卒業生は、卒業した大学にとっては最大の寄付行為を行ってくれる支援者であり、同時に、優秀な卒業生たちの活動が大学の広告塔にもなることから、大学側にとって優秀な卒業生の子どもを優先的に迎え入れ、卒業生たちの力を大学の運営に取り込んでおきたいという発想で行われているようです。しかし、こうした制度は、いかがわしい隠れた話ではない点で、日本の裏口入学とは大いに状況が異なるといえるでしょう。
大学入学者選抜方法に関しては、いわゆる一発勝負の学力テストのみではなく、面接や小論文、高校からの調査書等が活用される推薦入試やAO入試が実施されることも多く、また幼稚園の段階から一貫教育を掲げる私立学校の存在など、選抜方法が多様化している現在において、収賄罪にはならないとはいえ、不正をしてまで学校に入れることが、本当に子どもの為になるのかを考えると、裏口入学は全くいい方法だとは思えません。
何よりも、公開されている条件を満たせば学校に入学できると信じて頑張る受験生にとって、このような不公平な態度は、決してあってはならないことでしょう。