出典:https://www.vwgroup.se


2010年から11年にかけ、スウェーデンの5都市で「法定速度を守ったドライバーに最高2万クローネ(日本円で約25万円、18年6月現在)が抽選であたる」というユニークな試みが実施されました。これが今になって、ツイッターで話題となっています。違反したら罰金という「ムチ型」ではなく、守ったら賞金という「アメ型」の、日本人からはまず出ない発想。今回はこのキャンペーンの経緯を紹介しつつ、スウェーデン人と日本人の考え方の違いを解説しましょう。



 



 



■「賞金」企画は単純だけど斬新



 



ユニークな試みの仕掛人は、かのフォルクスワーゲン社。環境保全、交通安全貢献を目的としたキャンペーンの一環で、スウェーデン交通安全協会(NTH:Nationalföreningen för trafiksäkerhetens främjande)の力を借りて行われました。



 



アイデア自体は約700の一般公募から選ばれたものです。内容はいたって単純。首都ストックホルムほか複数都市の道路に設置されたカメラの前を法定速度内で通過したドライバーの中から抽選で賞金があたる。ただそれだけです。なお、抽選の応募にはドライバーの承認が必要でした。実験結果は国の交通局に報告されましたが、政府は直接かかわっておらず、交通違反の罰金が賞金になったわけではありません。



 



「ポジティブなアプローチ」をとることでドライバーの法令遵守意識はどう変わるのか検証しよう、という実施意図がありました。当時、ストックホルムの交通事故死亡者数は他都市の倍にのぼっていました。法定速度もある意味“形骸化”しており、ドライバーの意識向上が課題となっていました。



 



 



■駅の階段が「ピアノ化」したら…



 



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話はそれますが、同じキャンペーンの中で話題になった企画をもう一つ紹介しましょう。その名も「ピアノの階段」。ストックホルムの地下鉄駅を利用する人に、エスカレーターではなく階段を使ってもらうため発案された、踏むと音が出る階段です。キャンペーン期間中、楽しみながら階段を歩く利用客の姿が目立ちました。



 



フォルクスワーゲン社は、「安全かつ性能の優れた車を作る以上の責任が車メーカーにはある」とコメント。環境保全や交通安全、健康など社会的な要請にこたえた車づくりを目指す姿勢をアピールしました。



 



 



■スウェーデン人にルールを守らせるのは大変!?



 



話を戻しましょう。「賞金」企画はやはり、ドライバーの意識向上に一定の効果をもたらしました。平均運転速度はストックホルムで20%、ヘルシンボリ(Helsingborg)で17% 下がり、法定速度を守らないドライバーはカルマル(Kalmar)で28% も減ったそうです。ただ、カールスタッド(Karlstad)では1%しか減らず、都市間で結果にばらつきがあったのも事実です。



 



「賞金」企画が成功裏に終わった理由。それは、「宝くじ好き」で「上から押しつけるだけではルールを守らない」というスウェーデン人の国民性にあると思います。ラジオの「音楽くじ」や国民総出で見る「テレビ宝くじ」、お隣同士で楽しむ「郵便番号宝くじ」など、スウェーデン人は常日頃からさまざまな宝くじに接しています。



 



また、「どんなメリットがあろうとも、意味を知らない限りルールを守る必要はない」(意味さえ理解すれば必ず守る)という価値観も持っています。「ルールは必ず守るもの」と考える日本人とは明らかに違うスタンスです。



 



まさに、この国民性にしてこの企画あり、と言えるでしょう。


情報提供元: citrus
記事名:「 【北欧からのぞくニッポン】法定速度守ったら賞金25万円!? 斬新すぎる「スウェーデン式ルールの守らせ方」