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東京23区を取り巻くように走る高速道路・外環道(東京外郭環状道路)のうち、埼玉県の三郷南IC(インターチェンジ)と千葉県の高谷JCT(ジャンクション)の間約15.5kmが6月2日に開通した。SNSなどを見る限り効果は明確で、首都高速道路6号向島線および三郷線上りの慢性的な渋滞がウソのように減ったという書き込みが多く見られる。
なぜここまで渋滞を減らすことができたのか。理由のひとつとして東京都のすぐ外側に、一挙に15km以上の高速道路が開通したことが大きいのではないかと思っている。外環ですでに開通済なのは東京都の大泉ICと三郷南ICの間で、その距離は33.8kmだから、今回の開通で1.5倍も距離が伸びたことになる。これは大きい。
東京周辺の環状高速道路というと、他に首都高速の都心環状線と中央環状線、そして圏央道(首都圏中央連絡自動車道)がある。しかし前者は都内にあるのでそれ自体が渋滞しているし、一方の圏央道は都心から50kmぐらい離れているので、東京の反対側に行く際にはかなり遠回りになる。外環道こそ「ちょうどいい」迂回路なのかもしれない。
しかも今回の開通区間は、東京湾岸を走る東関東自動車道まで到達している。これもポイントだ。東北自動車道や常磐自動車道から横浜に向かう際にも、東関東道と首都高速湾岸線を使えば良く、都心を経由する必要がなくなったからである。
東京港や横浜港の周辺にある工場や市場や倉庫に向かう物流車両の多くが外環道経由に切り替われば、それだけで都心を通る交通量はかなり減る。首都高速6号線の渋滞緩和はこの点が大きいのではないだろうか。開通区間だけを見れば埼玉県と千葉県を結ぶ道路に見えるけれど、実際は東京都や神奈川県にも関連しているのだ。
■市川と松戸をつなぐ「松戸街道」が問題だった
もうひとつ、この地域を通過する車両が都心を経由していた理由に、周辺の一般道の状況があると、千葉県市川市と松戸市の間を一般道で移動した経験がある筆者は考えている。この地域の南北方向のメインルートは松戸街道と呼ばれる県道1号市川松戸線だが、ともに人口50万人近い大都市を結ぶのに、多くの区間が片側一車線だ。しかもこれ以外に目立った道路はなかった。松戸街道が混んでいるので脇道に入ると、しだいに道が細くなっていって、やがて行き止まりになってしまうパターンが多かった。
筆者はタイの首都バンコクを思い出した。チャオプラヤー川沿いに発展したバンコクは、かつては川や運河を使った水運がメインだった。道路が整備されたのは20世紀後半のこと。このとき政府は道路を川や運河のように考えたために、幹線道路から住宅地に伸びる細い道の多くが行き止まりになり、多くの自動車が幹線道路に集中。世界屈指の渋滞都市になってしまったのだ。
それが今回の外環道開通にともない、側道として国道298号線が整備されたので、市川と松戸の中心部を結ぶ道は一挙に3本に増えた。しかも外環道だけでなく、国道298号線も大泉IC付近まで通じている。これも首都高速の渋滞緩和に貢献しているはずだ。
こうなると外環道の残りの部分、つまり大泉ICから中央自動車道や東名高速道路につながる区間が気になる。この区間については以前のコラムで、計画当時の東京都政に遅れの原因があることを書いた。
2020年東京五輪パラリンピックで重要ルートになるはずだった築地付近の環状二号線トンネルが、築地市場の豊洲移転の遅れで期限内に開通できなくなるなど、東京都はしばしば交通に疎いリーダーを据えがちだけれど、先日中央自動車道を走っていたら、高井戸〜調布IC間で外環道と接続する中央JCTの工事が始まっていた。
計画当時と比べるとトンネル技術などが発達して、地域環境を悪化させずに道路を通すノウハウができつつあるのだろう。今回の外環道開通区間も、千葉県内の多くは地下に通している。日本の土木技術の進歩に感謝したい。