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平成が終わりに近づいています。2019年5月1日にいよいよ改元が行われるのです。そこでみなさんにご提案。平成を彩った様々な言葉──新語・流行語を、一緒に振り返ってみませんか?
今回は1989年(昭和64年/平成元年)の言葉を紹介します。1989年といえば消費税がスタート、天安門事件が起き、ベルリンの壁が崩壊し、日本だけでなく世界が大きく変わり始めた年です。
■【平成】流行語界のスター「平成おじさん」
1989年1月8日に今上天皇が即位され「平成」が始まりました。当時はこの「平成」という言葉自体が流行語に。「平成名物TV」(TBS系)などの便乗命名もありました。同年の新語・流行語大賞(以下大賞または流行語大賞)では、平成が特別部門・特別賞を受賞しています。
記者会見で新元号を発表した小渕恵三官房長官(当時)は「平成おじさん」と呼ばれました。その小渕氏は98年に首相となり「冷めたピザ」(米誌の小渕評/98年大賞のトップテン)「ボキャ貧」(語彙が貧困/98年大賞の特別賞)「ブッチホン」(同氏が突然かける電話/99年大賞の大賞)などの流行語を発信していきました。
■【セクシャルハラスメント】「女性の声」が世間に響き始める
「セクハラ」が日本で本格的に認知されたのはこの年です(89年大賞の新語部門・金賞)。その後、「パワハラ」(上下関係を背景にした嫌がらせ)など、これに派生した概念が次々と生まれました。2017年には米国で「#metoo」運動が起こるなど、セクハラは現在でも大きな社会的課題となり続けています。
ちなみに89年の流行語大賞では、同名漫画を語源とする「オバタリアン」が流行語部門・金賞を受賞。図々しいおばさんのキャラが、当の女性たちにウケる現象も起きました。またこの年の参議院選挙には多数の女性が立候補し、通称「マドンナ候補」が生まれ女性の政治への進出も始まり、「女性の声」が世間に徐々に浸透し始めた年でした。
■【24時間タタカエマスカ】10年後は「疲れている人」
89年はバブル経済の真っ只中。CMでも威勢のよいコピーが踊っていました。代表例は栄養剤・リゲインのCMで登場した「24時間タタカエマスカ」(89年大賞の流行語部門・銀賞、受賞者は時任三郎)。ちなみにその前年には、グロンサンのCMで「5時から男」も話題になっています(88年大賞の流行語部門・大衆賞、受賞者は高田純次)。仕事にも遊びにも前のめりなサラリーマン気質を感じさせます。
ちなみにそのリゲインはバブル崩壊後の99年に、坂本龍一のピアノ曲にのせて「この曲をすべての疲れている人へ」というコピーを登場させています。それほど社会の雰囲気は一変しました。
■【イカ天】歌謡曲とJ-POPの狭間で咲いた人気番組
冒頭で紹介した平成名物TVの人気コーナーが「いかすバンド天国」。略して「イカ天」です。アマチュアバンドが勝ち抜き式で演奏を競い合う内容で、BIGIN(ビギン)などの人気バンドを輩出しました。
実はこの時期、音楽の世界では「ホコ天」(原宿の歩行者天国)で路上演奏を行うバンドが人気に。「バンドブーム」の渦中にありました。また当時は、日本の大衆音楽の主流が歌謡曲から「J-POP」に移行した時期でもあります。そのJ-POPという言葉は、87年開局の東京のFMラジオ局・J-WAVEが発信したもの。洋楽中心の同局がかける邦楽をJ-POPと呼んだのです。90年代中期には、日本のポップス一般を指す言葉として広く普及しました。
※ほかにもこんな新語が……
デューダ(する)、渋カジ、おたく、テトリス、ツーショット、究極の選択、お局様、ハマる、3K、一杯のかけそば、Hanakoさん、W浅野、バイリンギャル、逆玉、濡れ落ち葉、蛍族
■【まとめ】1989年の流行語に感じる「女性の存在感」
同年の流行語には「女性」の存在感があります。男女雇用機会均等法の施行が86年。女性の社会進出が進み、男性社会への異議申し立て(セクハラなど)や、多様な女性観(マドンナ候補、Hanakoさん、バイリンギャル、逆玉、お局様、W浅野など)の登場につながりました。実はこの時代に社会人になった女性が、のちに「負け犬」などの流行語にも絡むのですが、それは追々。