ミュージシャン視点から心打たれた故・坂本龍一さんの2つの名言
映画『ラストエンペラー』でアカデミー賞の作曲賞を受賞し、テクノミュージックバンド『イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)』のメンバーとしても名を馳せた音楽家の坂本龍一さんが3月28日、都内の病院で死去した。享年71歳──まさに「芸術は長く、人生は短し」という、坂本さんの座右の銘を地でいく生き様を見せてくださった、孤高の “芸術家”であった。
ところで。私は、大学時代からジャズドラマー・池長一美氏に師事してドラムを学び、ドイツでアシッドジャズのCDを数枚リリースしたこともあるミュージシャンの端くれである。そして、「一(いち)ミュージシャン(の端くれ)」としての視点から、唯一無二の音楽家であると同時に優れた “コピーライター”でもあった坂本龍一さんの名言を、今日は “2つ”に厳選して、ここcitrusで紹介してみたい。
【1】 “歌詞がまったく受け付けない” (※過去に『爆笑問題』の太田光さんと音楽について語り合ったときのコメント)
ゴメス補足:「ヴォーカルもあくまで楽器の一つ」という考えの私としては、「世界のサカモト」のこの後押し的発言は、とても力強く感じた。じつは、楽器を演奏する人に多い傾向なのだが、歌曲を聴いても、旋律やメロディや和音、リズム……などに神経が行き過ぎて、歌詞の部分が頭に残りにくいのだ。それが「良い悪い」は置いておいて……個人的に私は歌詞が前面に出てくる、たとえば「ラップ」とかはけっこう苦手なジャンルだったりする。ちなみに、私が日本で一番好きなシンガーソングライターは、歌詞に深い意味が込められていない、心地良さのみで完結している井上陽水さんである。
【2】(小学5年生で、はじめて自分で買ったザ・ローリング・ストーンズの『テル・ミー』を聴いたとき)「その頃にはもうバッハを弾いたりしていましたから、ストーンズにはショックを受けましたね。『何て下手なんだ!』と。下手さがカッコいい、という衝撃ですね」(※2005年の『サンケイスポーツ』に掲載されたインタビューより)
ゴメス補足:もう20年近く前のインタビューだが、この記事をたまたまリアルタイムで読んで、凄まじい天啓を受けたときのことを、私は今でも鮮烈に憶えている。それまでの私は、極論「手足をとにかく細かく複雑に動かせるドラマーこそがいいドラマー」──すなわち「テクニックに裏付けされた演奏だけが良質な音楽を生み出す」みたいな “偏見”があった。「下手さがカッコいい」という “新しい音楽との接し方”を享受できたことによって、私の音楽観は確実にいっそうの広さと深みを得たのだ。
あと、これは「ミュージシャン視点」ではないのだが、
「日本は美しい三等国になればいい」
……という言葉も、私が胸に刻み続けている名言中の名言である。
最後に。かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)で松本人志さんや浜田雅功さんと共演した『アホアホマン』の坂本龍一さん……相当に吹っ切れているので、YouTubeなどで検索してぜひ一度ご覧になっていただきたい。
心よりご冥福をお祈りします。
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