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「隠し湯」、名前から想像すると山奥の中にひっそりとたたずむ「隠れた温泉」や「秘湯」と呼ばれる温泉を思い浮かべるかもしれません。
実際の 「隠し湯」とは、戦国時代などの封建制度が存在していた時代に、その土地の領主が独占して使用していた温泉のことを言います。
通常の温泉は、その地域に住む領民たちも多く利用するのですが、そうすると、戦などで負傷して戻ってきた家臣たちが療養のために温泉を利用することが困難になってしまいます。
そこでその 土地の領主が温泉を独占的に使用して領民には使用させないようにする、つまり「温泉を隠す」ということから「隠し湯」 と呼ばれるようになりました。
隠し湯は名前から想像したとおりに、山間地域に位置するものが多かったですが、一部では平地に存在する温泉もありました。
現在全国各地に「隠し湯」と謳っている温泉地がありますが、本来の意味合いから変わって、歴史のある温泉地、効能の高い温泉、想像していた山奥にある秘湯などが観光宣伝の目的で使用されることが多くなってきています。
温泉は現在においても「疲れを癒す」、「様々な病気やけがに効能がある」ということで療養や治療目的に利用されていますが、戦国時代においても同様に、 各地の領主が戦において傷ついた家臣たちの治療のために利用されていました。
戦国時代においては、大切な家臣たちの傷を癒す温泉は、敵方に知られてはいけない軍事機密であり、名前の通り「隠し湯」だったわけです。
歴史上の人物において隠し湯を持っていたことで有名なのは武田信玄、信玄に仕えていた真田氏ですが、上杉謙信も隠し湯を持っていました。いずれの武将も温泉を愛し、その効能に目をつけていたのです。
上杉謙信は現在の新潟県にあたる越後国を中心に北陸地方を支配していた戦国大名です。義の武将として知られ、ライバルである武田信玄とともに現在でも人気の高い戦国武将です。上杉謙信と武田信玄という歴史上でも最も有名なライバル同士が隠し湯を持っていたことはとても興味深いですね。
上杉謙信が持っていたとされる隠し湯の地域は、領土である現在の新潟県を中心に、北陸地方や群馬県などがある関東地方にあったとされています。
今回はその中でもおすすめの温泉地を5選紹介させていただきます。
燕温泉(つばめおんせん)は新潟県妙高市にある温泉で、妙高戸隠連山国立公園内にある妙高山の標高1,100mの高所にある温泉です。
周囲を大自然に囲まれていて、秘湯ムード満点の温泉地でまさに「隠し湯」といった雰囲気です。妙高山登山の帰りに立ち寄る方も多くいます。
燕温泉という名前の由来は、周辺に岩ツバメが多く生息していることから名づけられたといわれています。
温泉の歴史は弘法大師空海が巡錫で訪れた際に発見したと伝えられ、戦国時代には上杉謙信の隠し湯としても伝えられています。
白濁した乳白色の湯が特徴で、無料の野天風呂「黄金の湯」と「河原の湯」は秘湯スポットとして人気があります。美肌効果のある成分も含んでいて、美肌の湯でもあります。
泉質は含硫黄ナトリウム・カルシウム炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉で、長い泉質名の通り、様々な効能が期待できます。肌がすべすべになる炭酸水素塩、硫酸塩はカルシウムの鎮静効果から切り傷や脳卒中への効果が期待できます。塩化物泉なので温泉をなめると苦く感じることがあります。
源泉の温度は43.5℃、リウマチや神経痛、切り傷にも効果があるとされています。美肌効果のある成分も含んでいるので、美肌の湯としても親しまれています。
このように様々な効能があることに上杉謙信は目をつけ、隠し湯としたのでしょうね。
https://niigata-kankou.or.jp/spot/11635
関温泉(せきおんせん)は新潟県妙高市にある温泉で、妙高戸隠連山国立公園内にあります。妙高山の東麓、標高900m付近に11軒の温泉旅館があります。前述した燕温泉とは近い距離にあります。
温泉の歴史も燕温泉同様、弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際に発見したと伝えられ、様々な効能に戦国時代には上杉謙信が隠し湯として使用していたと伝えられています。
関温泉は鉄分を多く含んだ温泉で、時間が経つと茶褐色の温泉に変わるのが特徴の源泉かけ流しの温泉です。
その泉質から 越後三大名湯の一つ にも数えられています。
泉質はナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉で塩と重曹が含まれた成分です。塩分は保湿や保温効果があり、湯冷めがしにくく、体がポカポカ温まる温泉です。また重曹にはクレンジング効果があり、まさに理想的な「美人の湯」でもあります。源泉の温度は約48℃と熱めです。
効能はその他にもリウマチや神経痛・婦人病・筋肉痛・慢性消化器病にも効果があるとされています。
https://akakura.gr.jp/hotspring/1364/
貝掛温泉(かいかけおんせん)は、新潟県南魚沼郡湯沢町にある一軒宿の温泉です。
開湯は700年前の鎌倉時代と古く、全国でも珍しい 「目の温泉」 としても知られています。
源泉100%かけ流しで、ぬるめのお湯が特徴です。
戦国時代に上杉謙信が関東攻略で出兵した際に、将兵たちの英気を養い、傷を癒すために温泉に浸かったことから上杉謙信の隠し湯としても知られるようになりました。
「目の温泉」として知られるようになったのは江戸時代に入ってからで、無色透明で無臭の温泉はメタホウ酸を多く含んでいることからです。ホウ酸は眼科に行くと最初に目を洗う際に使用するものです。白内障や眼底出血、最近ではドライアイなどにも効果があります。
新潟県でも山深い奥湯沢にぽつんと佇む一軒宿で、周辺には渓流や大自然の木々に囲まれていて、「隠し湯」「秘湯」といった言葉がぴったり当てはまる雰囲気の温泉です。
泉質はナトリウム・カルシウム・塩化物・弱アルカリ性低張性の温泉で、無色透明でまろやかな温泉です。源泉の温度は36.8℃とぬるめで、長く浸かることができます。
効能は「目の温泉」として知られているように、白内障・眼底出血・ドライアイ・眼精疲労など目の病気に効能があるほか、火傷や切り傷・神経痛・腰痛・冷え性などにも効果を発揮します。
生地温泉(いくじおんせん)は、富山県黒部市にある温泉で、富山湾のすぐそばにある海辺の温泉です。
北アルプスに源を発し、日本海にそそぐ黒部川の扇状地に位置しています。
黒部川扇状地は日本の名水100選にも選ばれている黒部川扇状地湧水群があり、清水の里としても知られています。
温泉は上杉謙信が発見したと伝えられていて、謙信が北陸の情勢を探るために黒部付近までに至った際に重病に陥り(脚気といわれている)、歩けなくなった際に、新治神社のお告げによって生地の地で温泉を発見して、心身を癒して持病を治したと伝えられていることから、上杉謙信の隠し湯と伝えられています。
日本海に面しているため、温泉は塩分の含有量が高く、体がポカポカと温まる湯としても人気です。現在は旅館は一軒のみが営業を行っています。旅館では富山湾で獲れる新鮮な海の幸のお食事も堪能することができます。
泉質はナトリウム・塩化物泉で、泉温は13.1℃とかなり低めな鉱泉で、加熱した温泉を使用しています。多量の塩分を含んでいるため、温泉は塩辛いです。塩分が高いため保温効果が高く、湯上り後も体がポカポカするのが特徴です。
効能としては神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・疲労回復・切り傷・やけど・慢性婦人病などに効果があるとされています。
https://www.kurobe-unazuki.jp/tourism/186/
猿ヶ京温泉(さるがきょうおんせん)は、群馬県利根郡みなかみ町にある温泉で、みなかみ町国民保養温泉地を構成する温泉の一つです。群馬県と新潟県の県境をまたぐ三国峠の麓に位置している、山深い場所にある温泉です。
上杉謙信とは温泉の由来に深いかかわりを持っていて 、謙信が三国峠を越えて関東八州の攻略に向かっている際に、元々「宮野」と呼ばれたこの地に訪れた際に、前歯が8本も抜け落ちる夢を見て、「戦の前に不吉な夢を見た」とお供に話したところ「それは片っ端から関八州を手に入れる縁起の良い夢」と応えられました。
その話を聞いた謙信はその日がちょうど庚申の年・申の月・申の日で、その上申年うまれだったので、この地を「申(さる)が今日」と改めたことからいつしか「猿ヶ京」という地名になった と伝わっています。
江戸時代には笹の湯・湯島温泉と呼ばれて三国街道沿いの温泉地として賑わいを見せていましたが、昭和33年にダム建設のために温泉街を移して、名前も「猿ヶ京」に改めて近代的なホテル街へと生まれ変わったのが現在の猿ヶ京温泉となります。
泉質はカルシウム・ナトリウム硫酸泉で、無色透明で大変豊富な湯量を誇ります。源泉の温度は56℃とやや高めです。
効能としては神経痛・筋肉痛・関節炎・冷え性・疲労回復・切り傷・やけどなどに効果があるとされています。
今回は上杉謙信にゆかりのある隠し湯をご紹介してきました。
上杉謙信ゆかりの地ということで新潟県を中心に広いエリアに点在していて、山奥の秘湯から海辺の宿まで様々な場所に点在しています。
上杉謙信の隠し湯めぐりなどすればバリエーション豊かな温泉地をめぐることができるので、楽しむことができます。
今度の温泉旅行は上杉謙信が愛した名湯で、歴史のロマンに浸りながら温泉巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
余暇プランナー
元旅行会社勤務で今は山の中の観光施設で働きながら旅ライターをしています。元々旅行好きで大学も地理学専攻と根っからの地理マニアです。大自然の絶景と寺社仏閣などの歴史建築が大好きで、連休などあればすぐに車中泊で出かけてしまいます。その他登山やランニングなどとにかく家に引きこもっていることが苦手で、常に自然の中で過ごしていることが私の癒しになっています。
【新潟・富山・群馬】温泉でのんびり♪ 上杉謙信の「隠し湯」5選