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奈良県桜井市にある聖林寺は、周辺に大神神社や長谷寺、談山神社などの有名観光地があり、知らなければ通り過ぎてしまいそうな小さなお寺です。
創建は712年なので、1300年以上の歴史があり、本尊は子安延命地蔵菩薩、女性の安産を願って江戸時代に作られた、丈六の石造です。丈六というのは1丈6尺つまり 5メートル近い大きな仏様 です。
聖林寺はなんといっても国宝の11面観音さまが有名です。奈良時代に作られた木造ですが、
この仏像をお祀りするために昭和34年に建てられた日本初の鉄筋コンクリート造りの収蔵庫が、本堂裏から階段を登ったところにあります。2020年5月から 免震機能付きの収蔵庫 に改修工事がはじまり、2021年4月に落慶法要されました。
今から20年ほど前、全国で次々に仏像が盗まれるという事件がありました。 連続仏像盗難事件 です。単独犯行で、逮捕された男は、「毎晩のように 夢に出てくる仏像 」があり、それがこの聖林寺の観音様だったというのです。男は実際にこの仏像を見たことはなく、図鑑で見たとき「 この仏像だ 」と思い、すぐに聖林寺へ向かいました。対面しているうちに、「人の集まる高名なお寺から仏像33体を集めれば、苦しみから救われるだろう 」という声が観音様から聞こえてきたと思いました。「そのようなことをすると信者に迷惑を掛ける」と即座に思いましたが、そのとき再び 「仏は人の心の中にあるものだから 」という声が聞こえてきたと思いました。それらが 幻聴ではなく仏の声 だと思い、犯行を繰り返したといいます。
あまりにも力がありすぎる仏像は、時に人の道を外させるようです。内部は撮影禁止です。
境内には広い池があり、水上に六角堂が浮かんでいます。夏と秋に行われる寺宝展のさいに橋を渡って内部を拝観できます。
創建が大化元年、1400年近く前ですので、創建者である安倍倉梯麻呂のお墓といわれる古墳があり、飛鳥時代の史跡に指定されています。こういうところはさすがに奈良だと思います。
「 3人寄れば文殊の知恵 」といいますが、文殊菩薩は知恵を授けてくれることから受験生に人気があります。学問といえば菅原道真の、全国的な天満宮のイメージですが、文殊菩薩のご利益も負けていません。
安倍氏一族には百人一首の安倍仲麻呂や陰陽師の安倍晴明もいます。
本堂には巨大な文殊菩薩を中心とした4体の脇侍が海を渡っている仏像があります。この文殊さんが とにかくイケメン で、その横に立つ 善財童子 という子供がとにかく可愛らしいのです。文殊さんは 国宝、快慶作の傑作 です。
奈良県平野部で南部の桜井市には、長谷寺や大神神社、談山神社など有名どころが多く、今回の聖林寺と安倍文殊院は 密を避けやすい意味でも穴場 です。聖林寺からは飛鳥方面へ抜けることもできますので、レンタルサイクルを借りて桜井~飛鳥の「まほろば散策」などいかがでしょう。
奈良県は現在県民割りもブロック割も問わない 全国割を実施 しています。
今まで見逃していた傑作仏像をぜひこの機会に見物してみてはいかがでしょうか。ただし、聖林寺の魔性の観音様に会う際は軽い気持ちではなく気持ちをしっかり持ってください。
余暇プランナー
仏像と歴史好きな、社寺建築の仕事をしていたおじさんです。全国の社寺、仏像を見て回り、古代から戦国の時代を空想しています。 空想しすぎて小説を書き、文学賞もらっちゃいました。旅ライターと小説家の2刀流おじさんです。
【奈良】桜井で傑作仏像を堪能できる穴場的なお寺2選 聖林寺&安倍文殊院