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2017年7月にクリスチャン・ディオールのブランド誕生70周年を記念して、パリの装飾芸術美術館で始まった展覧会で、キュレーターはフロランス・ミュラー。
ロンドン、上海、成都、NY、ドーハと巡回し、日本での開催は6か所目になります。
その国ごとに構成が作り直されているのが特徴で、今回は、日本との関係に焦点があてられ、建築家・重松象平による空間デザインをはじめ、高木由利子の写真など様々な日本人アーティストとのコラボワークも見られます。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Christian_Dior/
展示室は14のテーマに沿って分かれていて、1~5が1階、6~14が地下1階の二部構成 になっています。☆が日本オリジナルの展示。
日本での開催のために撮りおろされた元デザイナーで現フォトグラファーの高木由利子の写真については、会場で流れていた映像がDior公式youtubeにあがっていました。
「静と動」を一枚の写真に表現するために、シャッタースピードを8秒にし、4秒間静止したのち4秒動くという撮影方法を取ったそうです。
https://www.youtube.com/embed/OPvcttMgP3k
「2.ディオールと日本」のコーナーでは、大丸で開かれた日本で初めてのファッションショーやカネボウ(当時の社名は鐘淵紡績株式会社)との共同クリエーション、皇室との関係(美智子妃殿下のウエディングドレスを製作)が紹介されていました。
こちらは、youtube用に新規に作られたものですが、フロランス・ミュラー(赤い服の女性)がホストを務めていて、ラストは、ディオールの言葉として「日本は伝統と現代性の融合が素晴らしい」と伝えています。
https://www.youtube.com/embed/zDSQYvqgTt8
ちょこっとコラム
「クチュリエ」とは、夜会服に代表されるオートクチュールのデザイナーの意味なので、プレタポルテや男性服部門の展示はありません。また、ミュージアムショップの奥では、無料で見られる「過去のランウェイをまとめたムービー」が上映されていて、併せて鑑賞するのがオススメです。
私は予約時間が16:30と遅く、限られた鑑賞時間を有効に使うべく、いろいろと下調べをしました。
すでに行かれた方のwebサイトやyoutubeを複数見てからでかけたので、その中から、これは必見!というものをご紹介します。
https://www.youtube.com/embed/FLWDWzMrkBE
キュレーターのフロランス・ミュラーを中心に、各セクションがどのように準備を進めたかのドキュメンタリー。展示品や歴代デザイナーについての説明、ドレスの修復作業や会場設営の様子などが詳細に描かれています。(日本語字幕あり)
https://www.youtube.com/embed/VrhXKbmol8k
「SPUR」の編集者が語るブランド解説。同じニュールックでも、現デザイナーのマリア・グラツィア・キウリが2017年に発表したジャケットは、ウエストの見せ方が「ギュッと細く」ではなく、「柔らかく沿わせる」形に変化します。
https://www.youtube.com/embed/Cz9-sxugwT0
世界を舞台に活躍するファッションフォトグラファーが解説つきで会場内をレポートしています。
https://www.youtube.com/embed/iAd1qMKs5fk
着物好きだからこそ気づくことができる日本の伝統的な技法や反物への言及は驚きの連続。展覧会に合わせて、バッグがレディ ディオールなのも素敵です。
「1.ディオールのニュールック」のメイン展示は、「Barスーツ」。一般的には、
1947年2月にファーストコレクションとして発表され、ウエストを絞ったジャケットとボリュームのあるスカートが、アメリカの雑誌『ハーパス・バザー』の編集長によって、驚きと共に「これはニュールックだ!」と言われ、以後「コロール(花冠)スタイル」というディオール自身が呼んだ名前よりも「ニュールック」の方が浸透していく
と解説されるのですが、現代人の私から見ると、どこがどう新しいのか?今いちピンとこなかったんです。ところが、メイキング映像の中で
と語られていて(12:00~)、実際、会場で「Barスーツ」を見てみると
たしかに、ウエストのシェイプが立体的で、かつ胸元は開いていて明るいオープンな印象がするのです。そして、スカートも布地がたっぷりと使われていて華麗に広がっている。戦時下で服に使う布の分量まで制限があった事を考えると、 色といい、形といい、「女性の優美さをたたえている」 感じがして、新時代の服と予感したのも分かる気がしました。
こうして並べると、マルク・ボアンの在任期間が非常に長いですね。ディオール御大は、52歳の若さでこの世を去ってしまい、後継者として指名されたイヴ・サンローランは、徴兵のため3年で幕引き。退役後は自身のブランドを設立します。
「3. 歴代デザイナー別の作品展示」における、 ディオール本人のオートクチュール。 ウエストの細さとスカートの膨らみがひときわ目立ちます。
こちらは、 イブ・サンローラン。 ウエストに少しゆとりがあり、いいとこのマダムが日常的に着てそうな雰囲気があります。直接ディオールから指導を受けていた弟子だけあって、感性が似ていますね。
その後、海外店舗を担当していたマルク・ボアンがトップに就任。1961年に「スリムルック」を発表 し、モダンな服作りを推し進めます。この「スリムルック」については、現職のマリア・グラツィア・キウリが2022年春夏コレクションとしてオマージュした作品を作っています。
https://www.vogue.co.jp/fashion/article/dior-2022ss
ラフ・シモンズのなかで、私が一目惚れしたのがこの一着です。
前職が「ジル・サンダー」のデザイナーでミニマリストと言われていたラフ・シモンズですが、ディオールの世界観の中で見事に服作りをしています。壁には、製作時のスケッチや指示書が掲載。このスカートは、こういうテキスタイルの布を買ってきて作る訳ではなく、布を作るところから始めています。
彼は、デビューコレクションからオリジナルの布を製作する意欲が強く、その様子が映画『ディオールと私』の中にも象徴的に描かれています。
2012年のラフ・シモンズ デビューコレクションに密着したドキュメンタリー。
メゾン・ディオールのオートクチュール製作の裏側をつぶさに記録しています。一枚のデザイン画あるいはコンセプトブックから、白い仮布(トワル)で立体化し、細部がどう詰められて一体のドレスができあがっていくのか。工房内の役割分担や人間関係も映し出す、傑作です。
トワルは通常、私たちの目には留まりませんが、 「5.ディオールのアトリエ」では、このトワルが四方の壁にずらっと展示されています。 まさに白一色の世界で、ため息がこぼれます。
そして、このトワルからパターンを作り、最終的な布が選びだされ、裁断・縫製を行い、ビーズや刺しゅうなどの装飾を施し、ショーのためにヘッドピースが作られて、コレクションが完成です。
こちらは、2017年春夏コレクションで発表された 桜や鯉など日本的なモチーフで作られたドレスたち。 この年は、日本でもショーが開催され、GINZA SIXの屋上庭園で特別コレクションがお披露目されました。
http://www.fashionsnap.com/collection/dior/tokyo/2017ss-couture
いかがだったでしょうか?ディオールと日本の関係は、 クリスチャン・ディオールの生家に浮世絵が飾られていた ことから端を発します。 具体的に葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」をドレスに落とし込んだジョン・ガリアーノをはじめ、後を引き継いだデザイナーたちも、それぞれのアプローチで、日本を意識したオートクチュールを仕立てています。
着物や帯だけではなく、伝統的な和の技法にも興味を示した彼らのあくなき探求心が、現在にいたるブランドの牽引力だと感じました。
こんなにたくさんの作品が東京に集まることは今後ないだろうと思いますので、皆さんも是非、この絶好の機会にご自分の目で味わってみてください。
出典・参考
余暇プランナー
小さい頃の夢は「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、ライターのtomokoです。本業は演劇と外画アニメの演出をしています。子供向けの番組を数多く担当しているからか、小さな子供とすぐ仲良くなれるのが特徴。よく一人旅に出るので独身と間違われますが、既婚です。旅先では美術館や博物館に行くことが多いです。どうぞ宜しくお願い致します。
3月1日より4月分発売!【東京】「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展をよりディープに楽しむ方法