- 週間ランキング
「鯖は栄養豊富で体によい」なんとなくこんなイメージを持つ方は多いでしょう。
しかし、具体的に鯖にはどのような栄養があり、どのような効能に期待できるのか知っていますか?
また、塩鯖や鯖缶などでは、鯖の栄養成分や効能が変化してしまうのかも気になりますよね。
今回の記事では「鯖の栄養」について、管理栄養士が解説します。
この記事を読めば、きっとあなたも鯖を食べたくなるはず!
鯖にはDHAやEPA、タンパク質、鉄などの栄養素が含まれています。
塩鯖に加工される海外産の「ノルウェーサバ」、国産のポピュラーな種類である「マサバ」、ゴマ模様が特徴の国産鯖「ゴマサバ」の100gあたりの栄養成分値は以下のとおりです。
特に、健康への効果が注目されているDHAやEPAの含有量が優れていることが「鯖は体によい」といわれる理由です。
成長期の子どもから、妊娠・授乳期の女性、また健康診断の結果が気になる方まで、さまざまな年代で取り入れたい魚です。
具体的な鯖の栄養や期待される効能について、ほかの魚とも比較しながら詳しく紹介していきます。
鯖などの青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、動脈硬化や血栓が作られるのを防ぐ働きが期待されています。
血栓が血管の中で詰まってしまうと、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすことが知られているため、健康づくりのために不足することなく取り入れたい栄養成分です。
鯖に含まれるDHA、EPAは、ほかの魚に比べ優れています。
100gあたりの含有量を比較してみましょう。
特にノルウェーサバの含有量が豊富です。
DHAはアジの4.6倍、サケの5.7倍、タラの61.9倍、EPAはアジの6倍、サケの7.5倍、タラの75倍もの含有量となっています。
タンパク質は筋肉や骨などの体の材料となるため、特に成長期の子どもや、筋肉をつけたい方に欠かせない栄養素です。
極端な不足が続くと、体力や免疫機能の低下にも関わることが知られています。
鉄は鉄欠乏性貧血の予防に大切です。
特に成長期の子ども、月経のある女性、妊娠・授乳中の女性は意識して取り入れる必要があります。
鯖はほかの魚に比べると鉄が豊富であり、マサバの含有量はタラの6倍、アジの2倍、サケの2.4倍もの量です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨を強くする際に大切な役割があります。
ビタミンDは野菜には含まれず、魚介類やきのこ類から補給する必要があります。
ノルウェーサバ100gでビタミンDを10µg摂ることができ、成人男女に必要な1日分の量を補給できます。
ビタミンB1は糖質の代謝に関わる栄養素です。
極端に不足すると、倦怠感が主な症状となる脚気を引き起こすことが知られています。
一般的な食生活では不足の心配が少ないのですが、スポーツをしてエネルギー消費量の多い方、よくお酒を飲む方はビタミンB1の必要量が多くなるため、意識して取り入れる必要があります。
ビタミンB12はアミノ酸や脂質の代謝に関わっています。
極端に不足すると、貧血や神経障害を起こすことが知られており、慢性疲労や体力低下につながることもあります。
ビタミンB12は主に動物性食品に含まれる栄養素であり、鯖などの魚や肉などから摂る必要があります。
中でも鯖は豊富に含まれており、100gで8.1〜13.0µgを摂取できるため、成人男女に1日に必要な量を補給できます。
※参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」,厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
栄養豊富な鯖ですが、種類や加工の仕方によって栄養成分値はどのように変わるのでしょうか?
それぞれの違いを詳しく解説します。
日本食品標準成分表に掲載されている鯖は「ノルウェーサバ」「マサバ」「ゴマサバ」の3種類です。
それぞれの特徴は以下の通りです。
ノルウェーサバは脂のりがよく、DHAやEPA、ビタミンDが豊富です。
マサバはDHAやEPAが豊富で、特にビタミンB1とB12の含有量が優れています。
ゴマサバはタンパク質含有量が多く、鉄やビタミンB12も豊富です。
どの鯖でも栄養補給できますが、鯖の特徴的な栄養成分であるDHAやEPAを補給したい場合は、ノルウェーサバやマサバが優れているといえるでしょう。
市販の塩鯖はノルウェーサバから作られることが多く、DHAやEPAの含有量はマサバやゴマサバより優れています。
ほかにもタンパク質や鉄など、ほかの栄養素も豊富に含みます。
塩鯖に加工されているからといって、栄養成分が減るわけではありませんので、安心して活用しましょう。
しかし、塩鯖は塩分が多く、毎日のように食べると過剰摂取が心配です。
薄い塩水や酒を使って塩抜きをしたり、食べる量や頻度を控えたりして、塩分を摂りすぎないよう気を付けましょう。
水煮の鯖缶でも、鯖の栄養をたっぷり摂ることができます。
100gあたりでは、DHAやEPAの含有量はマサバやゴマサバより多くなっています。
また缶詰の鯖は骨ごと食べられることもあり、カルシウムの含有量も優れています。
100gあたりのカルシウム量は260mgであり、牛乳の含有量(110mg)より豊富です。
味付けされていないため、煮込み料理(和風やトマト)、炒め物、パスタ、和え物などさまざまな料理に活躍します。
鯖の味噌煮缶などの味付け缶も、栄養成分が減っているわけではなく、しっかりと栄養補給ができます。
基本的には水煮缶と変わらず、DHAやEPA、カルシウムなどさまざまな栄養素が含まれています。
しかし、やはり塩分が多いため注意が必要です。
炒め物や煮物、炊き込みご飯などに使えますが、そのほかに使う調味料の量を減らし、減塩できるよう工夫してみましょう。
そのまま食べる場合は、量や頻度に注意して、塩分の摂りすぎにならないよう気を付けてください。
「冷凍された鯖(または解凍品)は栄養がないのでは?」と心配があるかもしれませんが、冷凍のものでも栄養は摂れます。
市販の冷凍食品は、栄養価の損失が少なくなるよう急速冷凍されています。
冷凍されたものは比較的安価であったり、保存期間が長かったりと毎日の食生活に取り入れやすいものです。
上手に活用しましょう。
鯖の栄養をムダなく効率的に摂るためには、どのような食べ方がよいのでしょうか?
鯖は買ってきたら、新鮮なうちに食べるようにしましょう。
DHAやEPAなどの脂質は、時間が経つと酸化してしまうことが知られています。
また時間が経つと味が落ちることもあり、生の鯖を購入したら、買ってきたその日のうちに食べるのがベストです。
鯖には食物繊維やビタミンCなどの栄養素がほとんど含まれていません。
野菜やきのこ類、海藻類と組み合わせると、不足する栄養素を補えます。
鯖と一緒に炒め物や煮物にするのもよいですが、副菜として野菜料理を取り入れるようにするとよいでしょう。
ブロッコリーやほうれん草、ピーマン、しいたけ、えのきたけ、ひじきなどを取り入れると、ビタミンCや食物繊維をたっぷり摂れますよ。
鯖缶を調理に使うときは、缶汁ごと使うようにしましょう。
汁に溶け出たDHAやEPAなどの栄養素をムダなく摂ることができるだけでなく、鯖のうまみも味わえますよ。
積極的に取り入れたい鯖ですが、取り入れる際には気を付けたいポイントが3つあります。
鯖が体によいとはいえ、食べすぎには注意しましょう。
食べすぎに気を付けたい理由は以下があります。
・ほかの魚に比べると脂質が多くカロリーが高い
・痛風の原因となるプリン体を含む
・塩鯖や缶詰は塩分が多い
鯖を積極的に取り入れたいと考えている方は、続いて紹介する目安量を参考にしてください。
鯖を毎日食べる場合は、60gほどを目安にするとよいでしょう。
これはバランスのよい食事の例がわかる、食事バランスガイドを参考にしています。
60gとは小さめ1切れ、また半身の場合は2/3切れほどが目安です。
また栄養バランスが偏らないよう、鯖だけでなくほかの魚もまんべんなく取り入れるようにしましょう。
鯖などの魚類には、アニサキスという寄生虫が潜んでいることがあります。
生で食べることでアニサキスが生きたまま体内に入ると、激しい腹痛などを引き起こす食中毒となる危険性があります。
特に九州では鯖を生で食べる文化があり「九州の鯖にはアニサキスがいない」というのを聞いたことがあるかもしれません。
確かに九州産の鯖には、食中毒の原因となるアニサキスの寄生率は低いことが知られており、感染リスクは低くなります。
しかし寄生率がゼロではないため、やはり注意は必要です。
アニサキスは十分な冷凍(-20度で24時間以上)または十分な加熱(中心温度60度以上で1分以上)で死滅することが知られています。
生で食べる場合は、一度冷凍されたもののほうが安全といえます。
※参照:農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」,一般社団法人 大日本水産会「アニサキスを中心とした食中毒対応~正しい知識でリスクを低減し、魚食文化を守る~」
鯖は妊婦・授乳婦、また子どもにもよい効能が期待されます。
中でもDHAは脳の発育に重要であることがわかっており、成長が盛んである胎児、乳児、子どもが意識して摂りたい栄養素です。
またタンパク質や鉄、ビタミンDの補給にも優れており、ぜひ積極的に取り入れたい魚のひとつです。
妊婦・授乳婦、子どもは抵抗力が低いこともあり、鯖の生食は避け、加熱調理して食べるようにしましょう。
今回の記事では「鯖の栄養」について、管理栄養士が解説しました。
鯖はほかの魚に比べると豊富な栄養が多く、健康づくりに役立つことがわかりました。
また鯖は和・洋・中とさまざまな料理にあうため、飽きずに取り入れやすいのも魅力です。
ぜひいろいろな調理法で、鯖を楽しみながら栄養補給をしましょう。
最後に、鯖の豊富な栄養素をムダなくたっぷり摂れるレシピ3つを紹介します。
カラリと揚げた鯖に、野菜たっぷりのあんが絡みます。
野菜のビタミンや食物繊維も一緒に摂れますよ。
サバの唐揚げ野菜あんかけ
生サバ、カット野菜(野菜炒め用)、塩・こしょう、○しょうゆ、○オイスターソース、○酒、○鶏ガラスープの素(顆粒)、○砂糖、片栗粉、ごま油、サラダ油
調理時間:20分
塩鯖を使えば、面倒な下処理不要で簡単に調理できます。
トマト煮は、トマトのビタミンCやβ-カロテン、食物繊維をプラスしてくれます。
塩サバのトマト煮
塩サバ切り身、ほうれん草、○ホールトマト缶詰、○洋風スープの素(顆粒)、○酒、にんにく、塩・こしょう、オリーブオイル
調理時間:15分
鯖缶とみょうがを使った炊き込みご飯。
鯖の栄養とうまみをたっぷり吸ったご飯に、さわやかなみょうがの風味がよく合います。
さばとみょうがの炊き込みご飯
さば缶詰(しょうゆ煮)、みょうが、米、しょうが、○しょうゆ、○酒
調理時間:40分