「子どもが発症するもの」と思われがちな食物アレルギー。実は大人になってから突然発症するケースもあるのです。
食事をしたあと口がかゆくなったり、じんましんが出てきたり……。
気になるその症状は、もしかしたらアレルギーによるものかもしれません。

そこで本記事では大人にもみられる食物アレルギーについて、原因になりやすい食品や症状、対処法などを管理栄養士がくわしく解説します。

食物アレルギーとは?種類別の特徴と原因になる食べ物

身体が特定の食べ物を異物だと認識し、免疫システムが過剰に反応して引き起こされる症状を食物アレルギーといいます。ここでは大人でも起こりうる食物アレルギーについて紹介します。

即時型食物アレルギー

食物アレルギーの多くは「即時型食物アレルギー」と呼ばれるタイプのものです。
ほとんどの場合、原因食品を食べてから30分〜2時間ほどで症状があらわれます。

原因になる代表的な食べ物は甲殻類、小麦、魚類、果物類、大豆です。

ただし、体質には個人差があるため、そのほかの食べ物で発症することもあります。

口腔アレルギー

「口腔アレルギー」は食べ物が唇や口の中の粘膜に触れることで起こります。

唇や口の中がかゆくなったり、イガイガしたりするなどの口まわりの粘膜症状が特徴です。
そのほか、耳の奥がかゆくなったり、痛くなったりすることも。

果物(ももやりんご、メロンなど)や、生野菜(トマトなど)がおもな原因食品です。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」では、特定の食べ物を食べてから、30分〜4時間以内に運動すると症状が出てきます。
原因となる食品を食べただけでは発症しませんが、食後、身体に負荷がかかると発症につながります。

原因となる食べ物はおもに小麦、甲殻類、果物です。
また、運動の種目としては球技やランニングで症状が出やすいことが報告されています。

※参照:一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーポータル アレルギー対策 食物アレルギー」,東京都福祉保健局「東京都アレルギー情報navi. 食物アレルギー」,一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーポータル アレルギーについて食物アレルギー」,一般社団法人日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021ダイジェスト版 第13章 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)

食物アレルギーのおもな症状

食物アレルギーは、人によって症状や重症度が異なります。
ここでは比較的よくみられる食物アレルギーの症状を紹介します。

皮膚症状

食物アレルギーで最もみられるのが、じんましん、かゆみ、発赤、湿疹などの皮膚症状です。
皮膚症状は食物アレルギー患者の約9割が発症する代表的な症状として知られています。

呼吸器症状、粘膜症状

皮膚症状の次に多いのが、呼吸器症状と粘膜症状です。
食物アレルギー患者の約3割にみられます。

呼吸器症状は咳、ゼーゼーする呼吸など、粘膜症状は目・唇・口の中のかゆみ・腫れ・違和感、鼻水、目の充血などです。

消化器症状、神経症状

症状がひどい場合、消化器症状(下痢・腹痛・嘔吐など)や神経症状(頭痛・意識がもうろうとするなど)がみられることもあります。

全身症状(アナフィラキシー)

アレルギー症状が複数の臓器で起こり、全身に重い症状があらわれる状態を「アナフィラキシー」といいます。

さらに重症化し、血圧低下、意識障害までみられると「アナフィラキシーショック」と呼ばれる状態になります。

アナフィラキシーショックは命にかかわる可能性があるため、素早く適切な処置を受けなければいけません。
症状があらわれたらすぐに救急車を呼びましょう。

すでにアレルギーの治療中でエピペン(アナフィラキシーショックを一時的に緩和してくれる注射薬)を処方されている場合は、エピペンを打ったうえで救急車を待ちます。

また、お好み焼きやホットケーキを食べたあとにアナフィラキシーがあらわれることもあります。
しかしこの場合は、食べ物そのものではなく、小麦粉などに混入したダニが原因の「パンケーキ症候群」である可能性があります。
症状がよく似ているものの、パンケーキ症候群はダニアレルギーの一種なので、食物アレルギーではありません。

※参照:一般社団法人日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021ダイジェスト版 第2章 定義・分類」,一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーポータル アレルギー対策 食物アレルギー」,東京都福祉保健局「東京都アレルギー情報navi. 食物アレルギー」,恩賜財団済生会「食べるなキケン! 高温多湿の時期に気をつけたい パンケーキ症候群

アレルギー体質の人は食べ物にも要注意

花粉症やラテックスアレルギーは、食物アレルギーと関連があることが知られています。

花粉症の人は口腔アレルギーを起こしやすい?

花粉症と口腔アレルギーでは原因物質(アレルゲン)が似ているため、花粉症患者の中には口腔アレルギーを併発する人も。

アレルギー症状を引き起こしやすい食品は、花粉の種類ごとに異なります。
たとえば、スギ花粉症患者はトマト、カモガヤやブタクサの花粉症患者はメロンで口腔アレルギーになりやすいと報告されています。

花粉症だからといって、かならず口腔アレルギーになるわけではありません。
しかし、食べている途中で唇や口の中の異変を覚えたら、それ以上食べるのはやめましょう。

症状が落ち着いたら、自身の判断で対処するのは避け、一度医療機関を受診するとよいでしょう。

ラテックスアレルギーの人は果物に要注意

ゴム手袋やばんそうこうなど、天然ゴムが原因でじんましんなどの症状が起こるラテックスアレルギー。

ラテックスアレルギー患者のおよそ半数で、栗・バナナ・アボカド・キウイフルーツなどでアレルギー症状が出ると報告されています。
ラテックスアレルギーの方は、これらの果物にも気をつけましょう。

※参照:一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーについて 花粉症」,一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーについて ラテックスアレルギー」,一般社団法人日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021ダイジェスト版 第14章 食物以外の抗原感作による食物アレルギー

食物アレルギーかな?と思ったら医療機関で検査・治療しよう!

食物アレルギーの治療は、原因食品を避けることが基本です。
しかし、原因食品を食事から全て除去するというわけではなく、必要最小限だけ除去することが勧められています。

そのためには、専門的な検査や治療を受けることが大切です。

自己判断では思い込みや不安な気持ちから必要以上に食べ物を避けてしまい、栄養不足になるおそれがあります。

少しでも食物アレルギーに心当たりのある方は、軽症・重症にかかわらず、かならず医療機関を受診しましょう。
症状にあわせて、内科・耳鼻咽喉科・皮膚科、もしくはアレルギー科を受診するとよいでしょう。

原因食品が特定できたら、どのくらいの量なら安全に食べれるかを調べたり、発症したときの対処法について説明を受けたりします。
主治医の方針に従いながら、食物アレルギーと上手に付き合っていきましょう。

アレルギー表示にも注目してみよう

診断の結果、特定の食べ物を避ける必要が出てくるかもしれません。
アレルギーを引き起こす食べ物を避ける方法の1つとして、加工食品のパッケージをチェックすることをおすすめします。

容器包装された加工品にはアレルギー表示が義務づけられています。
表示しなければならない食品(特定原材料)と、表示が推奨されている食品(特定原材料に準ずるもの)は以下の表の通りです。

材料に何が使われているかわかりにくいものを食べるときには、ぜひアレルギー表示を参考にしてみてくださいね。

※参照:消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報

食物アレルギーは子どもだけの病気じゃない!正しく診断してもらい上手に付き合おう

今回の記事では、「食物アレルギーの原因になりやすい食品や症状と対処法」について解説しました。

食物アレルギーは大人でも起こりうる病気です。
「肌がちょっとかゆい」くらいの軽い症状で済むケースもあれば、命にかかわるほど悪化するケースもあります。
そのため、食物アレルギーは正しい診断と適切な対策が大切です。

体調不良の原因が本当に食物アレルギーのせいなのかを確定するのはとても難しいため、自己判断で対処することは控えましょう。
少しでも気になる症状がある方は、心当たりのある食べ物を食べるのは中止して、一度医療機関を受診してみてくださいね。

情報提供元: トクバイニュース
記事名:「 実は危険な【食べ物のアレルギー】原因食品や症状を管理栄養士がまるっと解説します