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お寿司のネタでポピュラーな「いくら」。
あまり知られていませんが、人によっては、いくらでアレルギーを起こしてしまうことがあるのです。
いくらを食べたあとの体調不良が気になる方は、一度病院を受診して適切な治療を受けることが大切です。
そこで今回の記事では、「いくらアレルギーの症状や対処法」について管理栄養士がくわしく解説します。
わたしたちに馴染みがある「いくら」は、サケやマスの卵です。
いくらを含め、たらこやシシャモの卵など魚卵によるアレルギーをまとめて「魚卵アレルギー」と呼びます。
魚卵は、食物アレルギーの中でも6番目に多い原因食品です。
さらに細かく見ていくと、いくらは魚卵の中でもとくにアレルギー症状を引き起こしやすいことがわかっています。
※参照:消費者庁「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書」,一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021ダイジェスト版 第12章 食品ごとの各論」
魚卵アレルギーは比較的子どもの患者が多い食物アレルギーです。
1歳~6歳のときに初めて発症する食物アレルギーの原因食材として、魚卵は上位に位置づけられています。
しかし子どもに限らず、大人でもいくらアレルギーを発症する可能性はあります。
考えられるパターンはいくつかあり、1つは今まで何事もなく食べていたいくらで急にアレルギー症状が出てしまうケース。
また、子どものころに発症したいくらアレルギーが、大人になっても治らないケースも考えられます。
※参照:一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021ダイジェスト版 第5章 疫学」,山梨大学アレルギーセンター「やまなしアレルギーNavi 食物アレルギーをもったまま思春期から成人期に移行していく患児に対するアドバイスを教えてください。」
いくらは食物アレルギーのなかでも「即時型食物アレルギー」の原因になりやすい食べ物です。
即時型食物アレルギーのほとんどは、食後30分〜2時間ぐらいで症状がみられます。
即時型食物アレルギー患者の9割では、以下のような症状が皮膚にあらわれます。
・じんましん
・かゆみ
・色が赤くなる(発赤)
・腫れ
これらの症状が目立ちます。
皮膚症状ほど多くはありませんが、食物アレルギー患者の3割ほどの人では呼吸器や粘膜に症状があらわれることがあります。
具体的な例を以下に紹介します。
・呼吸器の症状…咳、ゼーゼーする呼吸など
・粘膜の症状…目・唇・口の中のかゆみ・腫れ・違和感、鼻水、目の充血など
そのほかにも、腹痛、嘔吐などの消化器症状や、頭痛、意識障害などの神経症状がみられることもあります。
いくらを食べてから2時間以内にこうした症状が出た場合には、アレルギーを疑い、一度医療機関に相談してみるとよいでしょう。
※参照:一般社団法人日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2021ダイジェスト版 第2章 定義・分類」,一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーポータル アレルギー対策 食物アレルギー」,東京都福祉保健局「東京都アレルギー情報navi. 食物アレルギー」
いくらアレルギーは、身体の一部だけに軽い症状があらわれることもあれば、いくつかの症状が重なることもあります。
もしも強い症状が出なかったとしても、いくらを食べたあとの体調不良に心当たりがある方は一度医療機関を受診しておくと安心です。
食物アレルギーは悪化すると「アナフィラキシーショック」と呼ばれるショック状態になり、命にかかわるおそれも。
緊急性が高いときには救急車を呼び、迅速に処置を受ける必要があります。
もしもほかのアレルギーの治療中であれば、内服薬やエピペン(アナフィラキシーの症状を一時的に和らげる注射薬)を処方されている場合もあります。
持っている方は、緊急時にすぐに使えるよう、かならず準備しておきましょう。
※参照:独立行政法人環境再生保全機構「ぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブック 2021年改訂版」
医療機関でいくらアレルギーだと診断された場合、いくら以外の魚卵や鶏卵を食べてもよいのか気になりますよね。
結論からいうと、いくら以外の魚卵や鶏卵にアレルギーがなければ、食べても問題ないとされています。
いくらアレルギーだからといって、たらこや明太子、ししゃもの卵などの魚卵や、鶏卵を必要以上に控えなくてもかまいません。
ただし、すじこはいくらを1粒1粒ほぐす前の状態のものなので、食べるのは控えましょう。
※参照:食物アレルギー研究会「魚卵アレルギー」
食物アレルギーには特効薬がないため、治療は「原因食品を食べないこと」が原則になります。
しかし、単純に魚卵をまるっと除去するわけではありません。
「除去する食べ物はいくらだけでよいのか」「どのくらいの量なら食べてよいのか」など、細かく調べて治療方針を決めていきます。
まずは症状にあわせて、内科・皮膚科・耳鼻咽喉科・アレルギー科を受診しましょう。
また、いくらアレルギーを確定するには、「食物経口負荷試験」を受けるのがよいとされています。
食物経口負荷試験とは、原因だと思われる食品を実際に何回かに分けて摂取し、症状の有無を確認する検査です。
いくらアレルギーを疑ったら、この食物経口負荷試験を実施している施設を選んで受診するのもよいでしょう。
実施施設の一部は「食物アレルギー研究会」のホームページで検索できます。
参考までにチェックしてみてくださいね。
(※ホームページに掲載されていない施設でも食物経口負荷試験を行っているところはあります)
受診するときは症状の経過や変化、喫食量など、具体的に伝えられるように準備していくことをおすすめします。
食物アレルギーかもしれないと思ったら、まずは一度医療機関を受診し、医師の指示を受けましょう。
食後の体調不良の原因は、いくらアレルギーによるものではなく、ほかの病気によるものである可能性も考えられます。
また、自己判断で対処してしまうと栄養不足になったり、アナフィラキシーショックを起こしたりするリスクもあります。
軽症・重症にかかわらず気になる症状がある場合には、かならず専門の医療機関に相談してくださいね。
いくらはパッと見ただけでわかりやすい食べ物です。
しかし海鮮丼やちらし寿司などを購入するときには、念のためパッケージのアレルギー表示を確認するのがおすすめです。
市販のお惣菜やお弁当など容器に包装された加工食品では、アレルギー表示をすることが義務付けられています。
いくらはアレルギー表示が推奨されている21品目のうちの1つです。お店で商品を購入するときは、アレルギー表示に「いくら」の記載がないのを確認する習慣をつけると安心です。
※参照:山梨大学アレルギーセンター「やまなしアレルギーNavi アレルゲン食品(大豆、ゴマ、そば、魚、魚卵、甲殻類)について、診断と指導のポイントを教えてください」,消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」,食物アレルギー研究会「食物経口負荷試験実施施設一覧」
今回の記事では、「いくらアレルギーの症状や対処法」について管理栄養士がくわしく解説しました。
食物アレルギーは症状が重いと命にかかわることもあります。
いくらを食べたあと、体調に異変を感じたときには、自己判断せずはやめに医療機関を受診してくださいね。
いくらアレルギーであることがわかったら、主治医の指示に従って適切な治療を受けましょう。