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発酵食品であり、身体に良いイメージのある納豆。
毎日食べる方も多いですが、具体的にどのような効能が期待されるのでしょうか?
また、栄養を効率的に摂るための食べ方について、さまざまな意見があるのでどれを信じて良いかわかりにくいことも。
今回の記事では、納豆の栄養や、納豆にまつわる疑問について、管理栄養士が解説します。
納豆は「スーパーフード」といわれるのも納得できるほど、栄養豊富な食べ物です。
納豆は、蒸した大豆に納豆菌をつけ、発酵・熟成させたものです。
畑の肉といわれる大豆の栄養豊富さはもちろん、納豆菌、納豆のネバネバ部分に含まれるナットウキナーゼなど、優秀な成分が含まれています。
また栄養素の含有量もほかの食べ物に比べ高いものが多く、「食べない理由がない!」といえるくらい優秀です。
健康づくりやダイエットなどに、納豆をぜひ毎日の食事のレパートリーのひとつに取り入れましょう。
具体的に、納豆はどのような効能が期待されるのでしょうか。
納豆の栄養が優秀といわれる理由をみていきましょう。
納豆の注目すべき点は、たんぱく質が良質であることです。
たんぱく質の質を評価する「アミノ酸スコア」というものがありますが、植物性食品に含まれるたんぱく質は低いものが多くなっています。
しかし、納豆は植物性食品であるにも関わらずアミノ酸スコアが高くなっており、理想的なたんぱく質であるといえます。
良質なたんぱく質は身体の中で効率的に使われるため、私たちの健康を支えてくれます。
カリウムは高血圧の原因となるナトリウムを排出し、血圧を下げてくれる働きがあります。
納豆のカリウム含有量は野菜に比べると多く、100gあたりでは660mg含まれるため、ブロッコリーの約1.4倍、トマトの約3.1倍、もやしの約9.6倍もの量になります。
(※トマト210mg / ブロッコリー460mg / もやし69mg)
血圧が気になる方は減塩を心がけると同時に、納豆などの食べ物からカリウムを意識して取り入れましょう。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、日本人の平均的なカルシウム摂取量は不足していることがわかっています。
納豆は100gあたり90mgのカルシウムが含まれ、牛乳のカルシウム110mgに匹敵する量が含まれています。
乳製品とあわせて毎日納豆をとれば、カルシウム不足の解消に役立つでしょう。
納豆は100gあたり3.3mg、1パック(45g)あたり1.5mgの鉄が含まれます。
鉄は鉄欠乏性貧血の予防に欠かせない栄養素で、とくに女性は不足気味です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、20歳以上女性の平均的な鉄の摂取量は7.5mgで、月経がある場合の推奨量に対して3~3.5mg不足している状況です。
貧血になると酸素を運搬する能力が低下し、疲れやすさや頭痛、息切れ、運動機能の低下などを招くことがあります。
毎日納豆を取り入れるほか、鉄の豊富な色の濃い野菜や肉類、魚類をあわせて取り入れ、鉄不足を補いましょう。
便秘の予防には腸内環境を整えることが大切であり、納豆が役立ちます。
納豆には、腸内で善玉菌として働く納豆菌と、善玉菌のエサとなり増殖を助ける食物繊維の両方が含まれます。
納豆を続けてとることで、便秘予防の効果が期待でき、便秘がちでぽっこりしたお腹をすっきりさせてくれるでしょう。
納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓を溶かし血液をサラサラにする働きや、末梢の血流を改善して血圧を下げる働きなどが期待されています。
夜に血栓ができやすいといわれているため、納豆は夜のタイミングに食べるのがおすすめといわれています。
たしかに血栓が原因となる心筋梗塞や脳卒中は早朝や午前中に頻度が高いことが知られているため、夜に取り入れるのも良いでしょう。
納豆には大豆イソフラボンが含まれ、女性ホルモンに似た働きをすることがわかっています。
女性の更年期障害の症状軽減や骨粗しょう症の予防に役立つ可能性が知られており、女性は意識して取り入れたい栄養素です。
ただし、たくさん摂れば良いわけではなく、長期的に過剰摂取することで乳がんのリスクを高める可能性があるともされています。
ほかの大豆製品もとることを考えると、納豆は1日1パックを目安にすると安心でしょう。
※参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」,厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」,食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」,厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」
納豆に関してさまざまな情報があり、混乱する方も多いのではないでしょうか。
考え方の一例を紹介しますので、取り入れる際のヒントとして活用してください。
納豆と生卵(とくに卵白)の食べ合わせが悪いと聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
実際、卵白に含まれるアビジンという成分が納豆のビオチンという栄養素の吸収を阻害してしまうことが知られています。
ただし、ビオチンは納豆以外にも卵黄、蕎麦、海藻やきのこ類、魚介類などさまざまな食べ物に含まれます。
納豆だけからビオチンを摂るわけではないため、ほかの食べ物もバランス良く取り入れていれば、納豆と生卵の組み合わせを気にしすぎる必要はないでしょう。
血液サラサラ効果が期待されるナットウキナーゼは、熱に弱いため「熱々のご飯に載せない方が良い」という意見もあります。
たしかにナットウキナーゼは50度以上で活性が低下し、70度以上で死滅するといわれています。
しかし、炊飯器の保温温度は65~70度程度で、お茶碗によそうとさらに温度が下がります。
よほどの熱々でなければ、ナットウキナーゼが全滅するとは考えにくいものです。
それでも気になる方は、ご飯を少し冷ましてから載せるようにすると良いかもしれません。
納豆の栄養素をさらに効率良く摂るためには、食べ合わせを意識してみましょう。
おすすめの食べ合わせ食材をご紹介します。
ねぎに含まれる独特な香り成分のもと「硫化アリル」はビタミンB1の吸収を助ける働きがあります。
納豆にはビタミンB1が含まれるため、納豆とねぎの組み合わせはぴったりです。
硫化アリルは玉ねぎやにんにくに含まれるため、ねぎ以外でもOKです。
キムチなどの発酵食品と組み合わせると、より腸内環境を整える手助けをしてくれます。
納豆には納豆菌や食物繊維が含まれ腸に良い働きをしますが、キムチなどの発酵食品に含まれる乳酸菌も腸内で善玉菌として働き、腸内環境を整えてくれます。
キムチのほかにも、味噌やヨーグルトなどの発酵食品でもOKです。納豆と一緒のタイミングで食べると良いでしょう。
納豆とビタミンDを含む食べ物を組み合わせると、カルシウムの吸収を助けてくれます。
納豆にはビタミンDが含まれないため、意識して取り入れる必要があります。
ビタミンDはきくらげやしいたけ、舞茸、エリンギなどのきのこ類や、鮭やいわしなどの魚介類に多く含まれます。
きのこをたっぷり入れたみそ汁や、焼き魚と組み合わせると良いでしょう。
納豆を取り入れる際に気をつけたいことは「食べすぎ」です。
身体に良いからと1日に何パックもとってしまうと、栄養素や成分の摂りすぎに繋がります。
カロリー、脂質、大豆イソフラボンのほか、痛風の原因になるプリン体も過剰摂取となる恐れがあります。
どれも1日1パックであれば過剰摂取の心配が少なくなりますので、1日1パック程度を心がけましょう。
ワーファリンという経口抗凝固剤を服用している方は、納豆の摂取が禁忌となっています。
納豆に含まれるビタミンKは血液を凝固させる作用があり、また納豆菌が腸内でビタミンKを産生するため、血液をサラサラにするワーファリンの効果を妨げてしまいます。
納豆を食べた影響は数日続くといわれるため、間隔を空けても食べることはできないとされています。
薬との食べ合わせについて、心配な方は医師や薬剤師に必ず相談しましょう。
※参照:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「くすりQ&A 食品とくすり」
今回の記事では、「納豆の栄養」について管理栄養士が解説しました。
納豆は栄養豊富なほか、納豆菌やナットウキナーゼなど、健康づくりに良い働きが期待できる成分をさまざま含んでいます。
取り入れる場合は1日1パックを目安にし、ほかの食べ物もバランスよく組み合わせ、健康づくりに役立ててください。