五ツ星お米マイスター直伝!おにぎりの握り方|お米のうまみを最大限に活かすコツ
小池精米店三代目店主であり、五ツ星お米マイスター資格を持つ小池理雄(こいけだだお)さんに、おいしいご飯の炊き方&おにぎりの握り方をレクチャーしてもらいました!「お米を炊いて握るだけなのだから、どうやっても大差ない」と思っているなら大間違い!いくつかのポイントを押さえるだけで、お米のうまみが引き立つおいしいおにぎりを握ることができるんですよ。
お米がおいしく炊きあがる炊飯の仕方
おいしいおにぎりにはおいしいご飯が欠かせません。小池さんに、まずは炊飯の仕方について教えてもらいました。
炊飯時に押さえておきたい3つのコツ
炊飯器でお米を炊く際は、次の3つのポイントを押さえることが大切です。
1. お米は擦切りで正しく計量する
お米は専用の計量カップを用いて、箸などを使って擦切りで量りましょう。このとき、カップの底にトントンと振動を与えて中の空気を抜こうとするのはNGです。
お米の計量カップ(180ml)は体積でお米を量るものであるため、お米の間に生じた空気も含めて計量するのが正しいやり方です。
2. 米は「研ぐ」のではなく「洗う」
昔は米ぬかを取るためにしっかりと研ぐ必要がありましたが、現在は精米機の性能が向上しているため、優しく洗う程度でOK。小池さんいわく「米の洗い方はいいかげんでちょうどいい」のだそう。
3. 米は洗った後すぐに炊飯する
洗ってザル上げしたお米を放置するのはNG。乾燥するとお米が割れてしまうため、洗った後はすぐに炊飯するようにしましょう。
炊飯の手順
それでは、実際に炊飯器でお米を炊いていきます。
1. 計量した米をさっと洗い、ザルにあげる
米粒が割れないよう、力を入れずにやさしく洗いましょう。
2. 米を内釜に入れ、目盛りに合わせて水を入れる
無洗米を使う場合は水を少し多めに入れてください。一粒あたりの体積が白米よりも小さく、同じ量でも米粒の数が多くなるため、炊飯に必要な水の量も多くなります。
3. 炊飯をスタートし、炊き上がったらすぐにほぐす
炊飯器でご飯を炊く場合は、浸水させる時間も炊飯時間に含まれているため、あらかじめ米を吸水させる必要はありません。小池さんいわく「炊飯器を使用するときは、設計者の意図通りに炊くことがおいしいご飯を炊くコツ」なのだそう。
土鍋でとびきりおいしいご飯を炊くには?
小池さんおすすめの土鍋ご飯の炊き方は、「冷蔵庫で6時間、お米を水に浸けてから炊く」方法。
意外かもしれませんが、冷たい水の方がお米の芯まで水を浸透させることができます。水は炊飯における熱伝導の役割を持っており、長時間かけて米の中まで水を浸透させてから炊くことで熱が通りやすくなるのです。水を含んだお米は加熱によって膨らみ、米に含まれるでんぷんがやわらかく粘り気のある状態に変化することで、ふっくらとしたご飯が炊きあがります。
また、しっかり水に浸した場合、炊飯時の水の量はお米と同量(1合あたり180ml)でOK。粒立ちのいいしゃっきりとしたご飯に仕上げたい場合は吸水時間を少し短めにするのがポイントです。
お米マイスター直伝!おいしいおにぎりの握り方
おいしいご飯が炊けたら準備はOK!続いては今日の本題、お米マイスター・小池さん直伝のおにぎりの握り方をご紹介します。
押さえておきたい握り方のコツ
おにぎりを握るとき、押さえるべきコツは2つあります。
1. 炊きたてのご飯で握る
ご飯は時間が経つごとに硬くなり、成形もしづらくなります。炊きたてのふっくらと柔らかな状態のご飯を使うことで、おにぎりの食感の調整がしやすく、具を入れたときのなじみもよくなります。
2. 握るときは優しく
おにぎりは口にふくんだときの“ほぐれ感”がおいしさの秘訣。中指と薬指でやさしく包むように握りましょう。力を入れすぎるとご飯の粒がつぶれ、食感が悪くなります。
握り方の手順
それでは、先ほどのコツを押さえた上でおにぎりを握ってみましょう。
1. ラップを広げ、表面に塩をひとつまみ程度ふる
ラップを使わず、手で握ってもOKです。その場合は手に塩を広げます。おにぎりを握るとき手水をつける方もいると思いますが、仕上がりが水っぽくなるためつけないほうがよいでしょう。
また、小池さんいわく「お米本来のうまみを味わうなら塩はなくてもいい」とのこと。ここは好みによって使う・使わないを判断してください。
2. 炊きたてのご飯しゃもじ一杯分(約100g)をラップの上にのせる
3. 三角の形になるように、ラップをふんわりと折り込む
4. 中指と薬指を使い、やさしく握って形を整える
ご飯の粒の食感が楽しめるよう、力を入れすぎないことがポイントです。
「おひつ」や「曲げわっぱ」に入れると、時間が経ってもふっくら
おにぎりはお弁当に入れる方も多いと思いますが、ラップに包んだまま持ち運んだり、プラスチック製のお弁当箱に入れたりすると、中に水分がこもってふっくらとした食感が損なわれてしまいます。
時間が経っても食感の良さを保ちたいなら、「おひつ」や「曲げわっぱ」に入れるのがおすすめです。ご飯の表面についた水分を木の素材が程よく吸い上げてくれるため、冷めてもふっくらとおいしい状態をキープしてくれます。
握り方で本当に味は変わる?食べ比べで検証!
ここまで、おいしいご飯の炊き方&おにぎりの握り方を紹介してきましたが、本当に味や食感に違いがあるのか気になる人もいるはず。
そこで今回は、正しい炊き方で炊飯したご飯を使い、普段通りに握った場合と小池さん直伝のやり方で握った場合で違いがあるのか、食べ比べを実施しました!
検証では、おにぎりに適したお米「星空舞」を使用
今回の検証では、粒立ちがよくツヤがあり、はね返るような食感が楽しめる鳥取県のブランド米「星空舞(ほしぞらまい)」を使用して比較しました。星空舞は2018年に販売開始されたばかりの新しい品種のお米で、冷めても食感が変わらない特徴があり、おにぎりにもぴったりなのだそう。
つまり、とっても品質のいいお米を使って検証するので、基本的な味のよさは保障されているというわけです。また、同じ炊飯器で炊いたご飯を使用しており、握り方以外の条件はすべて同じです。
まずは、いつも通りに握ったおにぎり
検証を担当した編集スタッフは、普段からおにぎりはラップを使って握っているのですが、ご飯にあらかじめ塩を混ぜ、形が崩れないようしっかりめに握っていました。
実際に握ってみたおにぎりがこちら。多少のいびつさはあれど、見た目は悪くないと思います。
さっそく食べてみると……ふつうに、いやかなりおいしい(笑)炊きあがりを見たときから感じていましたが、ご飯の粒がぴかぴかで香りもよく、しゃきっとした歯ごたえで程よい甘みが感じられます。これは完全にお米そのものの良さが出てしまっていますね……。
あえて気になる点を挙げるなら、あらかじめ塩を混ぜてから握ったため、塩味を強く感じるところと全く感じないところでばらつきがあったこと、形を整えるために強めに握ったため、ところどころご飯がつぶれてしまっていたことでしょうか。
とはいえ、家庭で作るおにぎりであれば気にならない範囲といえそうです。
続いて、小池さん直伝のやり方で握ったおにぎり
五ツ星お米マイスター・小池さん直伝のやり方で握ったおにぎりがこちら。
優しく握ることを意識したため、見た目は先ほどのものより綺麗ではありませんが、これは握る人の技量によるものなので悪しからず。
先ほどのおにぎりが十分おいしかったのでちょっと心配になりつつ食べてみると……
なるほど……!小池さんが教えてくれたコツの意味がわかりました。
まず、口に含んだ瞬間にほのかな塩味を感じるのですが、塩はおにぎりの表面にしかついていないため、食べ進めるうちに引き立つのはご飯そのものの甘さです。加えて口の中でほろっと崩れるご飯の“ほぐれ感”、これは先ほどのおにぎりとは全く異なっていました。ご飯一粒一粒の粒感がしっかり感じられ、しゃっきりとした食感がより際立っています。
塩の加え方もおにぎりの握り方も、ご飯のおいしさを最大限に引き出すために考えられたもので、おにぎりの主役はお米なんだ!ということを強く感じる仕上がりでした。お米ってこんなにおいしいんだ!と再確認できるので、とっておきのお米を使うときにこそ、この握り方を試してみてほしいです……!
結論、お米のおいしさを最大限に楽しめるのは…!?
食べ比べの結果、どちらの握り方でもおいしいものの、お米のおいしさをより感じられるのは小池さん流の握り方であることがわかりました!
つまり、おいしいお米であればあるほど、このやり方で握ると素材そのものの味わいをしっかり堪能できるということ。これは比べてみてこそわかる違いなので、気になる方はぜひ食べ比べをしてみてくださいね。
お米の銘柄によるうまみの違い
さて、検証結果を見て「握り方よりどのお米を使うかの方が重要なんじゃないか」と思った方もいるのではないでしょうか。そこで最後に紹介したいのは「お米の銘柄によるうまみの違い」についてです。
「おいしいおにぎり」と一口に言っても、味や食感の好みは人それぞれ。そのため、「自分史上最高のおにぎり」を作りたいなら、まずは自分好みのお米を知る必要があります。
小池さんに教えてもらった、銘柄による味と食感の特徴は次のとおり。
日本でもっとも作付けが多い品種は「コシヒカリ」なので、多くの人にとって馴染みがありのは「もっちりしていて甘い」お米といえます。しかし、小池さんいわく近年は「もっちり」より「しゃっきり」としたお米の方が人気なのだそう。
実際に、小池さんが所属する「一般社団法人おにぎり協会」が2017年・2018年に開催した、おにぎりに適したお米を選出する「おにぎり食味会」では、2年連続で「つや姫」がグランプリを獲得。お米の粒が立っていて、表面はぱりっと、中はもっちりとした“外硬内軟”なお米の評価が高かったそうです。
たかがおにぎりと侮ることなかれ、使用するお米の品種によって、味や食感は大きく変わってくるのです。ぜひ、色んなお米を食べ比べて自分史上最高のおにぎりを作ってみてくださいね!
おにぎりの握り方をマスターすれば、お米がもっと好きになる!
シンプルなメニューゆえ、作り方を誰かに教わる機会があまりないおにぎり。今回お伝えした握り方をマスターすれば、今まで気づかなかった“お米のおいしさ”を改めて知ることができるはず。お米のうまみを引き出すおにぎりに出会うと、今まで以上にお米を食べることが好きになっちゃいますよ!
【教えてくれたのはこの人】
小池 理雄(こいけ ただお)さん
小池精米店 三代目店主であり、五ツ星お米マイスターの資格を持つお米の専門家。生産者と消費者の架け橋となるべく、自身の店舗ではさまざまな品種のお米を取り扱っている。お米にまつわるテーマの講演会やテレビ番組などでも活躍中。