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「クラフトビール」。この言葉が日本で聞かれるようになって9~10年といったところでしょうか。最近はスーパーやコンビニエンスストアなどで、大手ビール会社の定番ビール発泡酒などと並んで、カラフルでユニークなデザインの缶を見かけたことがある人も多いはず。ではクラフトビールってそもそもどんなもの?今さら聞けない基礎知識を解説します。
昨今、愛飲者が増えている「クラフトビール」。こだわり酒屋だけでなく、スーパーやコンビニなどでも売られてかなりポピュラーになってきましたよね。では、「クラフトビールって何?ふつうのビールとどう違うの?」そう聞かれたら、わかりやすく説明することができるでしょうか?
では、そもそもクラフトビールって何なのか詳しく説明していきますね。
日本でのクラフトビールの幕開けは今から24年前、時の細川政権の際にビール醸造に関して大幅な規制緩和があったことに始まります。当時、ビールは年間2000kl以上、大瓶換算で約320万本を製造しなければビール免許が交付できないと酒税法で定められていました。つまり大手ビールメーカー4社(キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ)にしか免許がない状態でした。
ところが1994年、酒税法が改正。ビールの最低製造量の基準を年間2000klから60kl(発泡酒免許なら6kl)へと大幅に引き下げたのです。この改正によって門戸は一気に広がり、全国にブルワリー(ビール醸造所)が誕生。これらで造られたビールは当時「地ビール」と呼ばれました。一時は400を超えるブルワリーが全国に誕生し、ご当地ビールが数多く登場しましたが、一部には残念なクオリティのものもあり、「高い割には…」という悪評も飛び交います。結果、1998年をピークに地ビール産業は衰退し、世紀をまたぐ頃からは氷河期に突入します。
この間に、自然淘汰されていくブルワリー。良質な製品を生み出すブルワリーは一部のファンに支えられながら、じっと耐えしのぐ時代が続きます。そして、地ビールが「クラフトビール」と名を変え、再び脚光を浴びるようになったのが、冒頭で触れた今から9~10年前のこと。生き残ったブルワリーは、支え続けたコアなファンと共に息を吹き返したのです。それだけではなく、新規参入や新たなるファンを獲得して、現在の「クラフトビールブーム」と呼べるまでに発展しました。
それではなぜ、日本に再びクラフトビールブームが起こったのでしょうか。
実はこのブームは、日本だけではありません。今や世界中でクラフトビールブームは起きています。その大きなきっかけとなったのはアメリカです。アメリカはホームブルー(自宅でビールを造ること)が許されています。その影響で、「自宅でちょっとおいしいビールができる」となれば、比較的に簡単に「ブルワリー設立」への道が開けるのです。
アメリカのビールといえば、「バドワイザー」や「クアーズ」といった大手ビール会社の銘柄が浮かぶかもしれません。一方で、小さなブルワリーで個性豊かなクラフトビールが次々と生まれ始めた1980年代以来、アメリカにおいてクラフトビールは着実にその存在を大きくしていきました。それが世界中に飛び火したのです。
アメリカには、「ブルワーズ・アソシエーション」というビール醸造者協会があり、クラフトビールを造るブルワリーを定義づけています。その中では、「小規模」といったブルワリー規模に言及し、外部者の持株の上限などが明確に決められています。もちろんここには、バドワイザーやクアーズといった大手は含まれません。
では日本はどうでしょうか。実は酒税法が改正された1994年に「日本地ビール協会」が設立されているのですが、協会は特に「クラフトビール」を定義づけすることなく今回のブームを迎えてしまいました。そのため、ブーム到来時は既存のクラフトブルワリーや一部のクラフトビールファンの間で「クラフトビールの定義」について議論が交わされました。
「クラフト」という「職人」や「手作り」というニュアンスを汲み取ると、「大手が造るクラフトビールはクラフトじゃない」という意見も当然飛び交いましたが、結局は明確な定義は作られることなく、現在に至っています。
そしてご存知の通り、今は大手の造るクラフトビールがスーパーやコンビニに並んでいます。大手がクラフトビールに参入することで、比較的リーズナブルで安定供給ができ、消費者が手に取りやすくなったことは大きなメリットです。
中でもキリンは、2016年から「スプリングバレーブルワリー」というブルワリー兼レストランを東京・代官山にオープンし、キリンの主力商品(「一番搾り」等)とは別ブランドのクラフトビールを醸造、提供しています。レストラン内ではこれらのビールを少しずつ試せるテイスティングセットがメニューにあるほか、定期的にセミナーやワークショップを開催するなどクラフトビールの楽しみ方を発信、自社のみならずクラフトビール業界全体を牽引している立役者と言ってもいいでしょう。