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正月や合格祈願、安産、厄払いなど大切な節目ごとに参拝する神社。ところで神社を参拝するにあたり、正しい作法はご存知ですか。民俗情報工学研究家の井戸理恵子先生に教えてもらいます。
神社の鳥居から本殿に続く参道。この参道を歩く時に、どこを歩くか決まっていることをご存知でしょうか。
神社の参道のうち真ん中は神様が歩く場所なので避け、左側を歩きます。これは「左右」の考え方として「左(ひだり)=火(この世の象徴)が足りる」「右(みぎ)=水(あの世の象徴)がみなぎる」という考え方があるため。この世に生きている私たちは左側を歩きます。
ちなみに火(ひ)は「ほ」とも読まれ、火が抜けるさまから、あの世の人を「仏(ほとけ="ほ"が解き放たれていく状態)」と日本では呼ばれるようになったと言われています。魂が昇華していく状態をそのようにとらえたのでしょう。なお、この説は仏教でいう「仏」様とは意味が変わり、あくまで日本古来の考え方です。
毎年初詣のシーズンには、大金を賽銭箱に入れる人がいたとニュースになることも。ですがお賽銭は本来、神様に自分が来たことをお知らせするための合図のようなものです。本当に願いを叶えたい場合はお賽銭をはずむのではなく、ご祈祷を申し込むのが良いでしょう。なおご祈祷料は「自分の願いの代償」として、「少し高いかな」と感じる程度の額を支払います。
また神様に合図をおくるお賽銭については、「何円が正解」というものはありません。穴あき銭(5円玉や50円玉)の方が良いとされているのは、「運が通る」というゲン担ぎのようなものです。
鳥居を通り神社の境内に入ったら、まずは水屋にてお手水(ちょうず)で手を清めますが、正式な作法をご存知でしょうか。「ひしゃくを右手で取り、水をすくい左手を清め、右手を清め、左手のひらに水を入れて口をすすぎ、口をすすいだ左手をすすいで、ひしゃくを手前に縦に持ち、持ち手をすすぎ、静かに伏せて置く」という流れが正しいものとなります。
また本殿のお参り時にも作法があります。これには、神社によって「2礼2拍手1礼」や「2礼4拍手1礼」など、参拝時の指定方法が異なる場合も。その理由は、かつては神社や地域ごとに作法が違っていた名残があるからです。明治時代以降、基本の作法は「2礼2拍手1礼」に決められたので、基本的にはこの作法で行いましょう。ただし、お参りをした神社から指定がある場合はそれに従います。
おみくじの引き方について、「神社に行くたびに引く人」や「年始に引き、そのまま1年ずっと引かない人」などいろいろなパターンに分かれますね。「何度も引いて良いものなの? 」と疑問に思う人もいますが、おみくじは「引きたい」と思った時に引くのが良いので問題ないでしょう。おみくじの"有効期間"も特に定められていません。
なおおみくじの吉凶だけを見て、悪いおみくじをさっさと境内の木に結んで帰る人も多いですが、本当は持ち帰って"戒め"にするのがおすすめです。昔のおみくじには吉凶は書いておらず、メッセージだけが漢詩などで書かれていました。吉凶だけではなく、メッセージもとても大切なのです。せっかく神様からいただいたメッセージ。しっかりと戒めにして書いてあることを心がけることで、良い方向へ導いてもらえるでしょう。
なお、いま持っているおみくじについては、次におみくじを引く際に境内の木に結び、そっと感謝の気持ちを告げると良いでしょう。
お守りは「複数を持っていると神様がけんかしてしまう」という説もありますが、どうするのが良いでしょうか。
ベストは、次のお守りを買った時に、その神社や買った神社で前のお守りをお炊き上げしてもらうこと。複数持っているのが悪いわけではありませんが、お守りが増えるということは願い事が増えるということなので、願いが複雑になってしまいます。いま自分にとって何が一番の願いなのかを考え、役割が終わったお守りは返すようにしましょう。
神社へのお参りは、いまの自分を確認する機会とも言えます。作法を知って気持ちよく神様に会いに参りましょう。
監修: 井戸理恵子
井戸理恵子(いどりえこ)
ゆきすきのくに代表、民俗情報工学研究家。1964年北海道北見市生まれ。國學院大學卒業後、株式会社リクルートフロムエーを経て現職。現在、多摩美術大学の非常勤講師として教鞭を執る傍ら、日本全国をまわって、先人の受け継いできた各地に残る伝統儀礼、風習、歌謡、信仰、地域特有の祭り、習慣、伝統技術などについて民俗学的な視点から、その意味と本質を読み解き、現代に活かすことを目的とする活動を精力的に続けている。「OrganicCafeゆきすきのくに」も運営。坐禅や行事の歴史を知る会など、日本の文化にまつわるイベントも不定期開催。