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飲料や料理の材料など、様々な用途に使う牛乳。冷蔵庫に常備している家庭が大半かと思います。週に何本も買うものだから、味わいの特徴や適する用途を知って使い分けることが食費の節約にもつながりそう。前回の牛乳の種類や表示の決まりに続き、牛乳の特徴をもとにした賢い使い分け方法を教えてもらいました。
牛乳の種類や表示の決まりについて解説した前回に続き、今回も一般社団法人日本乳業協会(以下、日本乳業協会)で一般消費者の相談員を務める担当者に話を聞きました。牛乳を飲む理由は様々ですが、「おいしいから」という理由のほかに「カルシウムなどの栄養を摂りたいから」という人も多いはず。そこで、価格と味わい、そして栄養の3つの観点から、ありがちな疑問に答えてもらいました。
6種類ある牛乳の違いについてや、「特選牛乳」と名乗れる牛乳がどのようなものなのかなど、詳しくは前回の内容をご覧ください。
特選、特濃……牛乳の表示基準が面白い! 「おいしい牛乳」の基準は?
売り場に並ぶ牛乳を見ると、成分無調整の「牛乳」に比べて「低脂肪牛乳」がリーズナブルな価格で売られていますね。絞った生乳の成分を調整せずに販売している牛乳より、乳脂肪分を除去するという手間をかけている低脂肪牛乳のほうが低価格な理由が気になります。この疑問は日本乳業協会にも多く寄せられるそう。
実は、価格は製造加工コストよりも、原材料費が大きなウエイトを占めているのだとか。低脂肪牛乳や無脂肪牛乳、成分調整牛乳の乳脂肪は、遠心分離機によって取り出します。その乳脂肪は生クリームやバターの原料として使われ、別途販売されます。1リットルの生乳がそのまま販売される牛乳より、同じ1リットルから低脂肪牛乳だけでなくバターや生クリームの原料も取れるため、トータルでは低脂肪牛乳は低価格で販売が可能になるといいます。
「なお、カルシウムやたんぱく質は、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳でも牛乳と同じかそれ以上摂ることができます」とのこと。摂りたい栄養価が変わらないとなれば、低脂肪牛乳を積極的に購入するのもありですね。なお、料理に使った場合は、牛乳と低脂肪牛乳とでの仕上がりの差はないそうです。なぜならば、乳脂肪分3.8%の牛乳100ml(103g)でも、脂肪分はたったの3.9gです。その脂肪分が低脂肪牛乳で半分以下になったとしても、そのまま飲むのに比べて、他の食材とともに使う料理ではそれほど違いを感じないのだといいます。シチューなどに使うなら、リーズナブルな低脂肪乳を選ぶと節約につながります。
ちなみに、加工乳や乳飲料の低脂肪・無脂肪タイプの価格も牛乳より低いことが大半。こちらは脱脂粉乳などを原料に使うため、生乳から製造するよりもやはり低価格になるそうです。
「低温殺菌牛乳は味が良い」というイメージを持つ人もいるかと思います。殺菌方法によって味わいに違いはあるのしょうか。
牛乳の殺菌方法は大きく分けて5パターンありますが、一般販売されている牛乳の9割以上が「超高温瞬間殺菌」。130度で2秒間殺菌する方法が主流です。対して「低温保持殺菌」といわれる方法は63~65度で30分間殺菌するもの。熱によるたんぱく質の変性が少ないため低温殺菌のほうがサラッとした味わいになります。
ただし栄養価に変化はないのだとか。ならば、味の好みで選び分けたいところですね。なお、低温殺菌牛乳は高温で殺菌した牛乳より日持ちしないため、消費量も加味して考えましょう。
ちなみに、日本乳業協会が行う講座で種類別や殺菌温度の違いを飲み比べてもらうと、低温殺菌牛乳より超高温瞬間殺菌がおいしいと答える方が多いという意外な情報も。
「サラッとした低温殺菌よりもコクがあるように感じることと、普段飲んでいるものが一番おいしいと思う傾向があることが要因だと考えています。市販の牛乳の9割以上が超高温瞬間殺菌ですので、そうなるのだと思われます」とその理由を教えてくれました。
乳脂肪分が低いほうがカロリーも低く、ダイエットを心がけている人向けと思いがちな無脂肪牛乳や低脂肪牛乳ですが、実はカロリーはそう大きくは変わらないそうです。
牛乳の脂肪は約4%。脂質は1gあたり9kcalで、乳脂肪分が1.5%の低脂肪牛乳と比べると、200ml飲んで減らせるエネルギーは30~40kcalほどにしかなりません。1日の摂取エネルギーからするとごくわずか。何杯も飲むのでなければ、低脂肪・無脂肪にこだわる必要はなさそうです。
牛乳にはカルシウムやビタミン類など、ダイエット中に不足しがちな栄養が豊富に含まれています。食事に制限を設けている時期こそ、飲みやすくおいしく飲める1本を味方につけたいですね。
最後に、味で選ぶとしたらどんな牛乳がいいのか聞きました。前述したように、人は飲み続けている牛乳を最もおいしく感じる傾向にあるそうで、一概には言えないとのことでした。
「低脂肪はおいしくないと言う人も多いですが、同じ低脂肪でも水分を除いて脂肪以外の成分が濃くなっているものや、脱脂濃縮乳を使っているものなどいろいろなものがあります。味の好みは人それぞれなので、これがおいしいと断言できるものはありません。試してみてお気に入りを見つけてください」。
ひとことで「牛乳」といっても数多くのバリエーションがあり、特徴もそれぞれであることがわかりました。たくさんの栄養が詰まった牛乳だからこそ、こだわって選びたいですね。