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最近、和菓子を食べましたか。若い人ほど、和菓子を食べる機会は少なくなっているかもしれません。伝統的で格式高いイメージが強い和菓子ですが、最近は進化系和菓子が登場しています。今回取材の和菓子店「タケノとおはぎ」はおはぎ専門店。従来のおはぎのイメージを覆すような内容に驚きの連続です。
「タケノとおはぎ」は、東京都世田谷区の東急電鉄田園都市線「桜新町駅」から徒歩10分弱の場所にあります。外からはおはぎ店だと想像もつかないほどスタイリッシュな外観。
中に入ってみるとスッキリとした店内に、色とりどりのおはぎが並んでいます。どれも見たことのないような美しさで、素朴な印象のあるおはぎのイメージが良い意味で覆されました。
タケノとおはぎの店主は小川寛貴さん。実は小川さん、2軒隣のをデリカテッセン(西洋風惣菜)を対面販売する"惣菜店"のオーナー兼シェフでもあります。
「もともとのスタートはデリ店で、8年ほど営業しています。2年前に2軒隣の物件が空いたので思い切って契約し、おはぎ店を始めました」(小川さん)。
でも、気になるのは「デリカテッセンのシェフがなぜおはぎを……!?」という点ですよね。「幼い頃から、僕は祖母の作ったおはぎが大好きでした。素朴でおいしいこの味を、もっと多くの人に食べてもらいたいとずっと思っていたんですね。惣菜店を始めて数年たち、近くの物件が空いたので『何かしたいな』と思い、かねてより考えていたおはぎの専門店を始めました」とのこと。
小川さんは和菓子の修行経験があるわけではないものの、お祖母さまと一緒に小さい時からおはぎを作っていたので、その延長でおはぎ店をスタートさせることができたそうです。ちなみに、店名に入っている「タケノ」はお祖母さまの名前なのだとか。
店内に並ぶキラキラとした宝石のようなおはぎたち。製造方法や素材のこだわりは、意外にも「決まった食材に固執しすぎないこと」なのだといいます。
「小豆は北海道のものを基本的に使っていますが、購入先を特定のところに絞ってしまうと、万が一質の良くない小豆しかない場合もその素材を使用しなければいけないですよね。また、もちろん旬の果物や野菜も使いますが、旬だからといって毎日良い状態であるとは限りません。その日その日で、一番状態が良くおいしそうだと感じる食材を選択して、天気や気温などにあったおはぎにしています。なので、おはぎのメニューは基本のこしあん・つぶあん以外は日替わりなんです」。
小川さんいわく、タケノとおはぎは"定食屋"のようなイメージなのだそう。毎日おいしい食材を、最高の状態で調理して提供しているのです。
説明の通り、タケノとおはぎのメニューは基本のおはぎ(こしあん・つぶあん)以外は全て日替わり。店内には常時7種類のおはぎがラインナップされています。毎回メニューが変わるので、「今日は何があるかな? 」とわくわくしながら店舗へ来店するのもまた楽しみの一つです。
取材時は9月下旬。"ほおずき"を使ったおはぎや、ナッツを使ったおはぎなどがあり、まさに「進化系おはぎ」と名付けたくなるような素敵なメニューばかりでした。
オーソドックスおはぎ以外に、洋風の素材を使ったおはぎが印象的です。その発想の源を聞いてみると……。
「おはぎは、祖母が作っていたレシピをベースに作っています。こしあんとつぶあんのレシピは祖母のレシピそのままですね。ただ、それだけだとキャッチーじゃないので、このお店のカラーが出るようなおはぎも揃えています。つぶあんとこしあん以外のおはぎには白あんを使い、白あんの原材料は白いんげん豆です。ヨーロッパだと白いんげん豆はハーブやスパイス、ドライフルーツなどと一緒に調理してサラダやペーストとして使うので、こういった食材と間違いなく合うと思いました」。
小川さんの進化系おはぎは、ヨーロッパの料理からインスパイアされていたのですね。デリカテッセンのシェフだからこそ、独自性のあるおはぎが誕生したのかもしれません。
ちなみに、今まで作ってきたおはぎは80種類以上にもなるのだといいます。作り方は本当に様々だそうですが、こだわりは1つのおはぎに使う色は1色(極力多色使いしない)であること。1つにいろいろな色を詰め込むのではなく、シンプルに1色にすることで、他のおはぎと詰め合わせたときにとてもきれいに見えるのだとか。
「僕は惣菜が好きなのですが、ニューヨークのデリ(惣菜)は単色で、お皿にいろんなデリを盛り付けるときれいに見えます。一品ずつだと寂しい印象かもしれませんが、複数合わせるととても映えるので、お土産やおもたせにもぴったり。おはぎを作るときは作りたい色から食材や味を連想することもありますね」。
なお、クリスマスなどのイベントシーズンは、イベントを少し意識したカラーのものを売っていることもあります。新作や人気のおはぎは販売開始から2時間程度で売り切れることもあるので、全種類をしっかり見て吟味したいときは早めの来店をおすすめします。
タケノとおはぎのおはぎは、甘すぎず素材の味がしっかり味わえるのが特徴。一般的なおはぎのサイズよりはやや小さめです。何種類か買って、食べ比べできるのも嬉しいですね。
また、こちらのおはぎは贈答用に無料で"わっぱ"に詰めてもらうことも可能です。なんでも、この包装スタイルも小川さんのお祖母さまがわっぱを愛用されていて、また「まるいものは、まるいものに入れたい」と言われていたところから思いついたのだそうです。
このわっぱ包装は、受け取ってから他の食器に移し替えることなく、テーブルにそのまま出してもサマになると大人気。おはぎの美しさもあいまって、タケノとおはぎのSNSアカウントを見てわざわざ遠方から来店される人もいるといいます。
今回取材したのは桜新町店でしたが、学芸大学にも店舗をオープンし、2018年9月末時点で都内に2店舗を展開。お近くの人もそうでない人も、1度訪れてみてはいかがでしょうか。