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学生が進学を諦めないために、各種団体などから金銭的な援助をしてもらえる「奨学金制度」。貸与型の場合は返済義務があるため、申し込み前に慎重に検討したいところです。返済方法に加え、万が一返済できなくなった場合の対処法について、ファイナンシャルプランナーの冨士野喜子さんに解説してもらいます。
奨学金には「給付型(返済義務がない)」と「貸与型(返済義務がある)」の2つのタイプがあり、貸与型の場合、返済(※返還)が必要になります。今回は、「独立行政法人日本学生支援機構」(以下、日本学生支援機構)の貸与型奨学金を例に、奨学金の返済法や返済できなくなった場合どうなるかを解説します。
※奨学金においては「返済」ではなく「返還」という言葉を主に使用しますが、ここではわかりやすいよう、制度などの名前以外は「返済」で統一しています。
奨学事業実施団体である日本学生支援機構が平成29年に発表した資料の「奨学金事業への理解を深めていただくために」によると、平成28年3月に貸与が終了した「第一種奨学金(無利息)」を利用した奨学生1人あたりへの平均貸与額は236万円、利息のある「第二種奨学金」の平均貸与額は343万円となっています。
返済期間は基本的に20年以内となり、貸与された金額に応じて返済期間が決まります。例えば、私立大学に自宅から通学した場合で、毎月5万4,000円の第一種奨学金(無利息)を4年間受けると(貸与総額は259万2,000円)、毎月の返済は1万4,400円で15年間で返済することになります。
なお、返済の開始時期は選べません。基本的に貸与期間終了の翌月から数えて、7カ月目の27日からとなります。大学などを卒業する3月まで貸与されている場合は、10月からの返済になります。
利息がある「第二種奨学金」の場合、貸与の利率は0.1~0.16%(年利)と低利です。350万円を20年間で返済した場合の支払い総利息は約4万円。他のローンを借りるより、払う利息は少なくなりますね。
返済金額は、例で示した毎月の返済額が返済終了まで変わらない「定額返還方式」や、収入に応じて毎年度毎月の返済額が見直しされる「所得連動返還方式」があります。
日本学生支援機構の奨学金では、病気やけが、失業などで奨学金の返済が困難になった場合は所定の申請をし、審査により承認されると、一定期間毎月の返済をストップできる「返還期限猶予」を受けることができます。
ただし、返済すべき元金や利息が減るわけではなく、猶予される期間の分だけ返済の終了年齢が遅くなってしまいます。猶予制度の利用は緊急時と考えましょう。
猶予の期間は、傷病、産休・育休、海外派遣など一部の場合を除いて、通算10年(120カ月)が限度です。
申請は1年ごとに必要となり、申請書類の提出時期は原則として、猶予開始希望月の3カ月前から前々月末までです。
病気やけが、その他の経済的理由で、当初決めた毎月の返済額の半額もしくは1/3なら毎月の返済が可能、という場合には「減額返還」という制度もあります。
申請は減額返還の開始を希望する月の2カ月前までに行い、1回の願出で12カ月まで減額申請することができます。なお、こちらは最長15年(180カ月)まで延長することが可能です。
この場合も、返済すべき元金や利息が減額されるわけではありません。減額した分、返済の終了年齢が遅くなってしまいます。
本人が死亡したとき、精神もしくは身体の障害により労働能力を失うなどして返済ができなくなった場合は、未済額の全部又は一部の返済が免除される制度もあります。その場合も、願い出ることによって承認されれば返済免除を受けることができます。
また、大学院に進学する学生で成績優秀者(入試試験結果などを基に判断)には、第一種奨学金(無利子の奨学金)の返済が免除される制度もあります。
毎月の引き落とし日に残高不足等で引き落としできなかった場合、「延滞」という扱いになります。延滞者には、毎月督促状の送付や電話での案内が行われます。滞納期間が4カ月を過ぎると、債権回収会社から返済請求がくるようになり、滞納期間が9カ月を超えて連絡が取れない状態の場合は「法的措置」の実施となります。
最悪の場合、裁判所での申し立てを行い訴訟へ移行します。返済が困難な場合は、早めに相談して猶予や減額の申請をすることが大切です。
社会人になった後は、勤務地への引っ越しや車の購入のほか、結婚や子育てなどのライフイベントも目白押しです。奨学金がネックとなり、やりたいことができない……という事が起こらないよう、借りすぎないように注意しましょう(毎月の返済額は、目安として1万5,000円以内に収まるようにすると無理がありません)。奨学金事業は様々な団体が行っており、他の給付型の奨学金と併用することもできます。奨学金は、夢を叶えるためのもの。将来を見据えて上手に活用していきたいですね。