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発表会の冒頭では、発起人を代表して日産から常務執行役員の神田昌明氏、日本旅行から代表取締役社長の小谷野悦光氏の2名が登壇し、GREEN JOURNEYのイメージキャラクターであるスナフキンとムーミンのお披露目を兼ねながら挨拶を述べた。
国内EV市場で13年連続販売台数No.1の実績を誇り、従来からEVを通じたゼロエミッション社会の構築に取り組んできた日産の神田氏は、「観光産業が排出するCO2の排出量は世界全体の排出量の約8%から11%を占めており、そのうちの大部分が移動から発生しているのが現状です」と話し、その上で「長きにわたり、皆様のお出かけや旅に寄り添ってきた当社が発起人となり、新たなサステナブルツーリズムの実現を目指す方策を考えるに至りました」と同社が観光産業に着目したきっかけを説明。
一方で、カーボンオフセットに根差したツアー商品を2021年に販売するなど、以前からサステナブルツーリズムに着目してきたという日本旅行の小谷野氏は、「アフターコロナや円安の影響で国内観光需要が高まっている中、今こそサステナブルな旅行のスタンダード化を図るため、具体的なアクションプランの実行が必要な時が来ています」とコメント。また、「観光産業を持続的に発展させるためには地域の人手不足、二次交通不足、さらに人口減少やコロナショックを機に難しさを増す地域文化や産業の維持など、解決すべき様々な問題があり、環境配慮とともに地域への貢献を含めて何かができないかと考えていました」と今回の委員会発足に至った経緯を語った。
続いて、日本旅行常務取締役兼執行役員でソリューション事業本部長の吉田圭吾氏が登壇し、委員会初の取り組みとなる旅行ツアー「GREEN JOURNEY(GREEN JOURNEY)」の概要説明を行った。
「我々が提案するGREEN JOURNEYは、環境に優しい移動手段の提供や環境保全型のアクティビティ、地域文化の発展などにつながる体験をお客様に提供することで、旅をとことん楽しみながら、サステナブルにも貢献ができるツアーです」と述べた同氏は、次にGREEN JOURNEYを楽しむためのヒントとして「①空気がおいしくなる移動を。」「②その土地のとれたてを、いただきます。」「③地球にもやさしい宿泊を。」「④旅での体験を、地域の貢献に。」「⑤思い出と気付きも、お土産に。」という五か条を紹介。さらに同社が提供する通常の旅行ツアーに比べて約20%のCO2削減という同ツアーの特色を示した上で、移動により発生するCO2を2030年までに累計4771トン削減、2050年までにCO2排出ネットゼロを目指すという目標も明かされた。
GREEN JOURNEYの旅は、移動や宿泊、食やアクティビティにサステナブルな思想を盛り込みつつ、旅行本来の「巡る楽しさ」を追求しているのもポイントのひとつ。
そのひとつがLINEのミニアプリによるスタンプラリーだ。これは旅先に設置されたデジタルスタンプをアプリに貯めて、サステナブルなアイテムなどと交換できるという仕組み。また、その地の伝統文化や特色に関する情報が手に入る2次元バーコードも各地に設置され、旅のワクワク感を高めてくれる。そのほか、アプリを通じて旅の後もローカルな情報が届くほか、サステナブルな産業に取り組む事業者等とホストに地域の人と交流する「CONNECT PROGRAM」も用意し、関係人口の拡大に通じるような地域とのつながりも提供していく。
そして、GREEN JOURNEYの第1弾ツアー先となるのは、三重県の伊勢志摩と熊本県の阿蘇。両エリアは自然体験型のレジャーなど、もとよりサステナブルツーリズムに力を入れていることから最初のツアー先に選定された。
この日の発表会には両エリアから2名の市長が出席。阿蘇五岳がそびえるカルデラ地形を利用した自然体験やe-BIKEによるエコツーリズムに力を注ぐ阿蘇市の佐藤義興市長は「EV を活用したGREEN JOURNEYは、環境を大事にしてこれから突き進む、まさに新しい時代の取り組みだと思っています。そこに参加させてもらえることに感謝します」と話し、英虞湾の特徴的な地形や海女漁などの特徴的な漁業文化を持つ志摩市の橋爪政吉市長は「世界で初めて真珠の養殖が始まった英虞湾ですが、環境の変化により昨今は養殖が困難になりつつあります。こうした楽しい体験を通じて海の環境変化の一端に触れ、自然と共生する社会について考えていただければと思います」と述べるなど、これから始まるGREEN JOURNEYへの期待が語られた。
その後、提携団体である東北大学、環境省のデコ活応援隊、そして環境省の関係者も登壇。委員会に参画する各社の代表者もそれぞれ挨拶に立ち、ここから始まる新しい旅のスタートに祝辞を述べた。
華々しくスタートを切ったGREEN JOURNEY。委員会では2033年までにツアー対象地域を全国200エリアに拡大、利用者数1000万人を目指して活動していくという。サステナブルツーリズムを普及させるという目標のもと、各領域から集まったプロたちが旅の新たなスタンダードを描いていく。