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冒頭では生田氏がロイヤルホールディングスの事業内容を紹介。
「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」、「シズラー」といった外食事業のほか、空港ターミナルビルや高速道路サービスエリア、オフィスビルなどでフードサービスを提供するコントラクト事業、「リッチモンドホテル」 を全国に展開するホテル事業、家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」や、物流業務等のインフラ機能を担う食品事業など、幅広いビジネスを手がけている。
一方、漆田氏はもともとロイヤルホスト出身。その後、外食コンサル企業や外資系ホテルチェーンを経て、産業能率大学 経営学部教授に就任している。
こうしたなか、両者による産学連携プロジェクトを立ち上げた背景について、漆田氏は次のように述べた。
「漆田ゼミは主にマーケティングを実践するゼミを標榜していましたが、かねてより『学生と企業が一緒に取り組めることはないか』と考えていました。そんななかで、私の出身母体であるロイヤルホールディングスとご縁があり、2020年度から産学連携プロジェクトを開始しました」(漆田氏)
ゼミ生がさまざまなマーケティング分析手法を交えながら、実企業の商品開発やプロモーションに関わることで、授業だけでは得られない「学び」や「気づき」を得られる経験を積むことができ、将来のキャリア設計の一助になる取り組みとなっている。
産学連携プロジェクトの第一弾として、2020年度にはアメリカ発のフローズンヨーグルト店「ピンクベリー」のイースター用メニュー開発とプロモーション企画を実施した。
5ヶ月にわたって、新メニューのアイデア立案からマーケティング、商品開発までを行い、最終の社長プレゼンで選ばれた「エッグハントスワール」と「欲張りイースターエッグスワール」が実際に商品化。ウサギが夢中でエッグハントしている様子や、いっぱい卵を集めて安心している様子を、ビジュアルに反映し、マーケティングのストーリーを作ったことで好評を博したという。
「コロナ禍がちょうど始まった頃で、学生の活動も非常に限られていましたが、ゼミ生は頑張って商品開発に携わっていました。新メニューに採択された2つの商品は売り上げも好調でしたが、緊急事態宣言の発令に伴い、予定の販売期間よりも早く終了してしまったのは残念でした」(漆田氏)
2021年度は天丼てんやの期間限定のスポットメニューを開発する産学連携プロジェクトが行われた。
天丼てんやの直営全店で販売する新商品を、漆田ゼミの学生が考案するという大がかりなもので、全4チームが考案したメニューは次のようになっている。
・中華天丼
・勝男天丼
・鶏あえず食ってみ天丼
・栄養満天丼
既成概念にとらわれない、自由な発想で新商品を開発するというお題のもと、商品のアイデアからネーミング、ポスター制作などを一貫して学生が担当。
最終的に商品化された「鶏あえず食ってみ天丼」は大きな話題となり、メディア露出も増加するなど、大きな成功を収めたプロジェクトとなった。
2022年度はロイヤルホストとの産学連携プロジェクトを実施。漆田ゼミの学生が販促プロモーションの提案や本部でのインターン実習を行った。
「天丼てんやの産学連携プロジェクトが素晴らしかったので、ぜひロイヤルホストでも実施しようと思った」
そう語る生田氏は、Z世代の感性を取りこみ、「モノ消費」ではなく「コト消費」にフォーカスした販促を、漆田ゼミの学生とともに取り組んでいく狙いがあったと話した。
プロモーション方法はAttention(気づく)、Search(情報収集する)、Action(来店する、リピーターになる)、Share(情報共有する)から成り立つマーケティング理論「AISASモデル」に基づき、映画広告やクーポンの配布、X(旧Twitter)の活用などの提案が行われた。
最終的には、SNSプロモーションの実地体験としてロイヤルホストのインスタグラムアカウントで「いいね」獲得数を競う取り組みがなされた。
そして、今回の4期生は東京と福岡に6店舗を構える、東西の料理を掛け合わせた“EAST &WEST”の新ジャンル料理を提供するロイヤルガーデンカフェとの産学連携プロジェクトが行われた。
4期生の座長を務める小原さんは「今までの産学連携プロジェクトでは初のドリンクメニューで、普段は注文しないノンアルコールカクテルの商品を考えるのは想像もつかなかった。それが実際に店頭で販売されたときはとても嬉しかった」とコメントを寄せた。
今回、4期生が考えたのは「マリリンローゼス」、「ルージュスパークリング甘酒」、「リンクハニーベリー」、「スパイス&レモンジンジャー」の4商品。どれも力作かつ本格的で、非常にクオリティの高い出来に仕上がった。
プロジェクトは半年のスケジュールで行われた。まず、9月にはロイヤルガーデンカフェのブランド理解や店舗の視察、プロジェクト班の組成を実施。次いで10月には3C及びSWOT分析を行い、マーケティング活動に取り組んだ。11月には4期生がロイヤルガーデンカフェの東京全店舗の店長が集う会議に出席し、アイデアを話し合う機会が設けられた。
「最初は緊張しましたが、実際に僕たちが考えた意見を丁寧に聞いてくださり、褒めていただけたのは嬉しかったです。また、大人の視点でアドバイスやフィードバックもいただき、商品にも反映することができたのは、非常に学びが多い機会だったと感じています」(小原さん)
本当に売れるのか。利益率はどうなのか。
実務さながらの議論が行われ、4期生は「商品開発の大変さ」を身にしみて感じることとなったわけである。
そこで得た助言をもとにブラッシュアップし、12月には社長や役員に向けて新商品のプレゼンや商品の提供を実施。
2月にはプロの撮影スタッフと一緒にメニュー画像やインスタグラム用の動画を撮影し、3月の店舗販売時には4期生が店頭に立ちお客様へのサジェスト(新商品の提案)にも挑戦した。
1つの商品を販売するまでのアイデア立案や競合調査、マーケティング分析、プライシングなど、大学の授業では学べない“商品企画のリアル”を学べるのは、まさに大学生にとって貴重な経験になったのではないだろうか。
今回の4商品は、ロイヤルガーデンカフェの日比谷Q CAFE、タバーン豊洲、飯田橋の3店舗で3月18日から31日まで販売された。
その中で販売数とインスタグラムのいいね数が最も多かった商品は、“ラグジュアリーモクテル”がコンセプトの「マリリンローゼス」だった。同商品を考えたプロジェクト班には「Excellent Customer Engagemant賞」が贈られた。
ロイヤルホールディングスが産学連携プロジェクトに取り組むのは、地域との共存や共栄の実現に向けた「サステナビリティ経営」を目指しているからだと生田氏は説明する。
「企業として利益を追求するだけでなく、ESGを意識した取り組みを行うことで、お客様や従業員、株主、取引先、社会などさまざまなステークホルダーから評価され、価値の循環を生み出していくことが使命だと捉えています」
ロイヤルホールディングスは以下の5つのマテリアリティ(重要課題)を据えて、サステナビリティ経営に取り組んでいる。
①人財
②“食”&“ホスピタリティ”
③資源・環境
④地域
⑤ガバナンス
この中で産学連携プロジェクトは④の地域に位置付けているという。
「ロイヤルホスト1号店は1971年にオープンしました。九州の会社が近畿、関東と店舗を広げていく際に、創業者は『地域に愛される、なくてはならないお店になることが重要』だと考えていました。5つのマテリアリティの中でも『地域』は、外食事業を営む当社にとっても大事な要素。産学連携プロジェクトのほかにも、地域の方と連携した職場体験や出張授業も行っていますが、社内にはない見方や考え方を得られるため、当社にとっても大きな財産になると考えています」
このような取り組みを積極的に行うことで、お店の活性化につながり、良い循環が生まれるそうだ。
これからも、地域や社会、お客様、従業員にとっての体験価値を生み出すとともに、社会価値や経済価値の向上を目標に尽力したいと生田氏は述べ、会を締めくくった。