「障がいのある人もない人も、誰もが輝ける世界を目指して」をコンセプトに、障がい者活躍推進の一環として一昨年からスタートした「NTT アートコンテスト」の2023年度表彰式典が3月26日、東京・大手町のNTT本社で開催された。「広がる世界」をテーマとした今回は平面作品514点、立体作品40点、合計553点と、前年を大きく上回る作品の応募があり、属性や障がいの有無を伏せた厳正な審査の結果、式典ではグランプリ以下5作品が発表された。

見事にグランプリを獲得したのは、飛行機が大好きだという如月虹(きさらぎ こう)さんが描いた「広い世界へ」。ちょうど飛行機に乗って旅したいと思っていた時に今回のテーマ「広い世界へ」を見て、すぐに思いついたという。準グランプリから審査員特別賞までの4作品は次のとおり。

【準グランプリ】 「どこへでも行ける」水田航介(みずた こうすけ)
【NTT賞】 「やさしい人たち」立川幹大(たちかわ かんた)
【JAL賞】 「瞬間をキリトル」花守洸迦さん(はなもり ほのか)
【審査員特別賞】「大切な人へ届けられた「お手紙」」河野芽衣(こうの めい)

グランプリ

如月虹「広い世界へ」
大好きな飛行機に乗って世界へ旅立ち、自分の見識を広めたいという思いが込められた作品。虹色の飛行機雲は、新しい世界を知る希望、勇気、夢、知った後の明るい未来を表現。背景には、多彩なこの広い世界の様子、そして広い宇宙も表現している。

日本電信電話株式会社 執行役員 総務部門長の山本恭子さんから表彰状と賞金の目録を授与され、喜びを隠せない如月虹さん(右)

グランプリ表彰の前には、今回特別に制作された受賞者紹介VTRが上映された。

準グランプリ

水田航介「どこへでも行ける」
やりたいことや欲しいものを描くことから始り、今では大好きな電車とエレベーターを毎日描いている水田さん。そして、なぜかそこにはたくさんの動物たちが。実際にはあり得ないけれど、絵の中は自由で思いのままに描けることを表現した。

準グランプリを受賞した水田航介さん(左)

NTT賞

立川幹大「やさしい人たち」
ぼくはやさしい!みんなやさしい! 虹が輝く世界に!やさしくなりたい想いがこめられた1枚の作品。

NTT賞を受賞した立川幹大さん(右)

JAL賞

花守洸迦さん「瞬間をキリトル」
旅をしたい、世界遺産や文明の跡に触れたい、そして、行きたい! と思う所へ旅に出たいという作者が、現状の引きこもり生活の日常にはない世界の風景を空気ごと全身で感じて、どの時間もきっと尊い瞬間だと感じる。そんなたくさんの時間と場所の一瞬一瞬を総合した絵にした作品。

日本航空株式会社 執行役員 人材本部長の小枝直仁さんから表彰状と賞金の目録を授与されて笑顔を見せる花守洸迦さん(右)

審査員特別賞

河野芽衣さん「大切な人へ届けられた「お手紙」」
市販の紙袋にマスキングテープを貼り付けた「手紙」。想いを寄せる相手に向けて送られた作品だが、届けられた相手が大切に保管しているからこそ、こうして応募するに至った。文字で上手く伝えることができない作者にとって、日常的に想いを寄せる相手に送るこのような「手紙」は大切なコミュニケーションツールにもなっている。

アーツカウンシルしずおか チーフプログラム・ディレクター/クシノテラス主宰 櫛野展正さんから表彰状と賞金の目録を授与された河野芽衣さん(右)

受賞作を間近で見て、その作りの精緻さと、それ以上にそれぞれの作品に込められた“想い”が強く感じられた。おそらく、余計な雑念を持たず、ただひたすらに作品をもっともっとよいものに仕上げようとする気持ちが、作品に命を吹き込んだのかもしれない。まだ3回目の開始とはいえ、「NTT アートコンテスト」は障がいのある作者にとって受賞を毎年目指すにふさわしい目標であり、いわゆる“心の拠り所”として存在感の大きなものになっているのではなかろうか。今回の式典で2023年度の大会は幕を閉じたが、早くも次回に向けて構想を練り始めたアーティストもいるだろう。次回の表彰式展も楽しみだ。

情報提供元: 舌肥