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はじめに、株式会社cotta代表取締役社長の黒須綾希子氏が登壇し、『cotta tomorrow』の立ち上げの経緯を説明した。
株式会社cottaは洋菓子店や飲食店など法人向けの製菓・製パンの仕入れサイト「cotta business」と、家庭・個人向けサイト「cotta」を運営。「cotta」は日本最大級の製菓製パン材料の専門サイトで、幅広い商品アイテム数と、レシピやコラムなどコンテンツを豊富に展開している。コロナ禍に家でお菓子作りなどをする人が増えたことと、積極的な広告宣伝により知名度と売り上げを伸長してきた。
cottaは幅広いアイテムと旬なトレンドを扱っているが、コロナ禍において顧客のニーズに変化を感じたという。これまでトレンドだったカラフルで可愛いインスタ映えするものへの関心よりも、コロナ禍による健康志向の高まりから、顧客は健康的で安心できる、美味しいものを求めるようになってきた。実際顧客にヒアリングを取ると、「コロナ禍に始めたトレーニングをきっかけに罪悪感のないお菓子作りをするようになった」「体の不調をきっかけに、グルテンを控えるために米粉パンのレシピを探している」「年齢を重ねていくうちにバターや砂糖たっぷりのお菓子は重たく感じることがあり、ヘルシーで健康的なレシピを探している」などという声があった。また「cotta」で扱うプラントベースの商品には高レビューがつくようになっていた。ところが「cotta」内で2022年4月にアンケート調査を実施したところ、健康志向の高まりや健康的なレシピの需要は多かった一方、PBF(プラントベースフード)を知っているかという質問には「よく知っている・知っている」は17%と認知度は低く、素材やレシピが分かっていない、というのが現状だった。
PBF(プラントベースフード)とは、大豆などの植物素材を原料に動物性食品の風味や食感を再現した植物性食品である。大豆は牛を飼育する場合と比較して、生産する際の水消費量が1/8、CO2排出量が1/85と環境負荷が少なく、サステナブルフーズとして注目されている。また低コレステロールでヘルシーであり、タンパク質、食物繊維やミネラルなどの栄養も豊富に含むなど、健康への効果も期待される。
注目が高まるPBFは市場においても売り上げ推移は拡大している一方で、“商品”と“情報”をセットに発信するプレイヤーが存在していなかった。そこでcottaは、1950年の創業以来大豆の研究開発を続け、大豆を豆乳クリームと低脂肪豆乳に分ける世界初の特許「USS製法」を生み出した不二製油株式会社と業務提携を結び、新サービス『cotta tomorrow』を立ち上げた。
不二製油はこれまで企業向けに取引を行ってきたが、『cotta tomorrow』を通じて製品を個人に向けて販売し、さらに会員の声を元に商品開発に生かしていくという。不二製油グループ本社執行役員の鈴木清仁氏は、「『cotta tomorrow』によりプラントベースなライフスタイルがもっと身近に、当たり前の時代になってくれるといいなと思っている」とコメントした。
『cotta tomorrow』では、普段のお菓子・パン作りには必須である、小麦・バター・牛乳などの代替品を多数取り扱う。おいしさを前提とした、カラダにやさしく、環境にもやさしい商品の販売、レシピやコラムなどの情報を提供し、プラントベース・グルテンフリー・オーガニック・食物繊維・タンパク質・低糖質などのキーワードで商品開発したい飲食店や個人に向けてサポートしていく。プロやインフルエンサーによるレシピを1日1件のペースで掲載される予定で(2023年5月18日時点で129件)、会員限定で閲覧可能なレシピもある。レシピの材料には取り扱いの商品にリンクが貼られており購入しやすくなっている。
『cotta tomorrow』サイトURL:https://www.cotta.jp/tomorrow/index.php
Instagramアカウント:@cotta_tomorrow
続いて、数々の世界的コンクールで受賞経験を持ち、東京・代々木上原のパティスリー「ASTERISQUE(アステリスク)」を構える和泉光一シェフをゲストにトークセッションが行われた。
和泉シェフはコロナ禍の前から、インスタグラムに並ぶ見栄えだけを重視したお菓子に疑問を感じていたという。コロナの出現で、世界中の人々が安全を求め健康について考えるようになり、お菓子を取り巻く環境も変わってくるなと感じていたところ、お菓子の世界大会の審査科目にも「プラントベース」が入ってきた。世界のパティシエ仲間がインスタにあげるお菓子の様子も変わり、お店に来る顧客の求めるものもナチュラルでシンプルなものとなったそうだ。日本はもともと大豆製品などの植物性食品を食生活に取り組んできたPBF先進国であるのに対し、プラントベースやヴィーガンなどのお菓子市場は遅れている。そんな課題を感じている中で、『cotta tomorrow』からコラボのオファーがあったという。おいしいお菓子を作るノウハウを持つ和泉シェフと、商品力を持つ不二製油、そして情報発信力を持つcottaがタッグを組んだというわけだ。
『cotta tomorrow』では新たな取り組みとして、プラントベースやグルテンフリーなどのお菓子の完成品を販売する。まずはそのおいしさを知ってもらうことで、健康的なお菓子やパン作りへの興味を持ってもらうのが狙いだ。
その第1弾が和泉シェフ考案の「クルスティアン ショコラ ソイ(5枚入り 税込み980円)」。不二製油の商品である大豆由来の豆乳クリーム「コクリーム」と豆乳クリームバター「ソイレブール」、cottaの製菓用米粉「ミズホチカラ」を使用したザクッと食感のチョコサンドクッキーだ。2023年5月18日(木)10:00から数量限定発売。今後もマフィンやパウンドケーキなどといった焼き菓子を季節ごとに展開する予定とのこと。
試食会では、今回販売する「クルスティアン ショコラ ソイ」と、和泉シェフ考案のピスタチオのケーキ、さらに『cotta tomorrow』オリジナルメニューとしてPBFで作られたラザニアやミネストローネなどが提供された。また『cotta tomorrow』で順次レシピ掲載される米粉パンのあんバターサンドと、卵・乳・小麦粉不使用のシフォンケーキを試食した。
・クルスティアン ショコラ ソイ (チョコサンドクッキー)※写真左前
ザクザクと歯ごたえがあり、カカオの風味を豊かに感じる。クッキーというとバターをたっぷり使用するが、こちらは豆乳クリームバターを使用しているためしつこくなく食べやすい。
・エトナ ソイ (ピスタチオとベリーのオペラ風ケーキ)※写真右奥
不二製油の豆乳クリームバター「ソイレブールラフィーネ」を使用し、ピスタチオのコクと食感が楽しめるケーキ。バタークリームのようなこってり感があるものの、軽い口当たり。※こちらは卵を使用
・ソイラザニア
大豆ミートのトマトソースと、豆乳クリームを使ったまろやかなホワイトソースのラザニア。豆乳でできたチーズが香ばしく焼かれている。乳製品不使用、動物性食材が入っていないことが信じられないほどの濃厚さとコク。ラザニア特有の脂っぽさがないので筆者はこれまで食べてきたラザニアの中で一番の好みだった。
・初夏のミネストローネ
不二製油の植物性ダシ「MIRACORE®」を使用。野菜の旨みを堪能できる満足感あるスープだ。
・米粉パンのあんバターサンド
米粉専門家高橋ヒロ氏が考案。米粉で作ったパンに、豆乳クリームバター「ソイレブール」とあんこをサンド。バターのようなくちどけだが、後味がしつこくなく美味しい。米粉のパンはずっしりもっちりとした食感でミニサイズのパンでも食べ応えがある。豆乳クリームバター「ソイレブール」はそのままでも美味しく、さまざまなお菓子作りの可能性を広げてくれるアイテムだ。
・卵・乳・小麦粉不使用のシフォンケーキ
米粉「ミズホチカラ」と豆乳で作られたシフォン生地。卵を使うシフォンとは違った、ふわふわしっとり、もちっとした食感。添えられたホイップクリームには不二製油の「コクリームほいっぷクレール」を使用。
試食したメニューはPBFが使われていると言われなければ気付かないほどの味わいだった。とても美味しく、筆者は全て完食したのだが、こんなにも多くの試食をしたにもかかわらず胃がもたれずカラダが軽かったことには驚かされた。PBFを健康や環境のため取り入れるのはもちろん、「おいしいから」「好みだから」という理由で選ぶという食の選択肢の広がりを感じた。みなさんもぜひこの機会にPBFのおいしさを味わってみてはいかがだろうか。
株式会社cotta HP:https://www.cotta.co.jp/
不二製油株式会社HP:https://www.fujioil.co.jp/