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2015年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。中でも「軍艦島」がキラーコンテンツとして有名ですが、ほかにもワンダーな産業革命遺産がたくさんあることはご存知でしょうか。
今回は、建造以来100年を超えていまなお稼働しつづける世界遺産、長崎造船所のジャイアント・カンチレバークレーンをご紹介。圧巻の威容、間近に見られるチャンスがあったら逃しちゃいけません!
国内初の洋式船用ドック(小菅修船場)の完成からわずか40年後の1909年(明治42年)。東洋最大級の民間造船所へと成長を遂げていた長崎造船所にお目見えしたのが、このジャイアント・カンチレバークレーンである。「カンチレバー(片持梁)」とは水平の棒を片側だけで支える構造のこと。櫓の上に長さ70m超のアームが載せられた形状で「ハンマーヘッド型」とも呼ばれる。全高は62mで、雲をも凌ぐという意味を持っていた浅草の凌雲閣(明治23年開業、52m)よりも10m高く、150tの吊上げ能力を持った日本初の電動クレーンだ。
スコットランドで仮組みされた後に解体、日本に輸送され、再び組み上げられるという工程を経たその偉容は、建設当時から長崎造船所のシンボルとして観光用絵葉書などにもたびたび描かれていて、周辺の建物群との対比や塗装色などを時代ごとに追うこともできる。まさに日本の急速な近代化の象徴として広く認知されていたのだろう。
工場の拡張で埋め立てが進んだため、1961年(昭和36年)に現在の場所に移設されたが、今もなお現役で、背後にある組み立て工場で製造された大型船舶の部品などを出荷するために稼働を続けている。新聞等の報道によれば、同型のクレーンは世界で50台ほど製造されたが、現在でも稼働しているものは極めて珍しく、今回、世界遺産に登録された産業遺産群の中でも、世界的な注目度は他の追随を許さないほど高いとのこと。
長崎造船所の中心部に位置する現役の稼働施設であるため、関係者でもない限り気軽に見学することはできないが、長崎港を拠点とする軍艦島上陸ツアーやクルーズなどでは、出航後すぐにその巨大な姿を仰ぎ見るチャンスがあるので、油断することのないよう気をつけたい。
文|ワンダーJAPAN編集部
ワンダーJAPAN Collection 軍艦島と世界遺産 三才ムック vol.814
産業遺産の記録 (三才ムック VOL. 560)