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以前、iPhone用ライトニングケーブルの超激安品を使っていたら焦げちゃった件についてご紹介しました。認証チップの製造不良による異常発熱と見られ、度を越した激安品には注意しましょうという話に至ったわけですが、にもかかわらず、その問題のケーブルの所有者、もったいないからと密かにスペアを使い続けていた結果、再び炎上!
お、愚か…なの…? とんだボンクラボーイです。改めてケーブルの発熱事例をご紹介しましょう。
こちらが問題のライトニングケーブル。コネクタ部の発熱箇所が溶けて凹んでいます。クルマを運転中、シガーソケット用USBチャージャーでiPhone 6s Plusを充電していたところ、コネクタ部から急に煙が立ち上ったのだそう。
「ええ~、あのケーブルあぶないから使わないほうがいいって話になったじゃない?」
「ドライブ中なら燃えてもすぐ気付くし。デスクだと外出中に発火したら怖いから使ってない」
「そういう問題?」
燃える可能性アリ、という認識のもとで使ってるんかいヽ(`Д´)ノ(シガソケチャージャーが問題の可能性もありますが……)
こちらの写真は前回、異常発熱で焦げてしまった激安ライトニングケーブル。コネクタ部の同じ箇所が溶けていますね。
両ケーブルともに「パソコン部品ショップで1本150円」で販売していたものでメーカー不明のバルク品。持ち主は、安いからと3本まとめて購入しておいたそう。
「これからはちゃんと素性の明らかなケーブルを使ったほうがいいよ」
「もうスペアはないから大丈夫(2本は炎上、1本は検証用に分解)」
「そういう認識?」
改めて前回発熱時に検証した内容を以下に掲載します。まさに「安物買いの銭失い」になりかねない事案。市場価格からずれた異常な値付け品にはご注意ください。
炎上の通報受け、早速延焼部の殻割りをしてみた。 写真上が新品、写真下が問題のケーブルだ。内部構造はごく一般的なMFi非互換ケーブルの制御基板である。 搭載チップを説明すると、基板上側にある「3401」マークの入った三本足(SOT23-3型パッケージ)のチップが「AO3401A」という型番の MOSFET(電界効果トランジスタ)で、スイッチの働きをもつ素子。基板下部にある「PZ40」マークの入った6ピンIC(SOT23-6)は詳細不明だが、恐らく iPhone本体と Lightning認証通信をするための小型マイコンチップであると予想される。
殻割り前は、ハンダ付け不良のリード線のひげが隣りとショートでもして、ホットボンド加熱 → 劣化 → 炎上というストーリーを予想していたのだが、どうやらそう簡単なことではなかったようだ。
焼き上がり写真を見てもらうとわかるが、どうやら火元はPZ40チップであるようだ。チップの熱でカバーを接着していたホットボンドが劣化し、焦げたカレーのようになってチップの周りにこびり付いている。
チップの発熱や熱破壊は、トランジスタやMOSFETなど電力制御素子でよく見られる故障だ。しかし、今回の炎上では6ピンのマイコンチップと思われるチップを中心に焦げが広がっていた。 マイコンチップが異常発熱する原因といえば、5Vを超える電圧の印加(=過電圧)や、電源+-の逆接続が一番最初に思いつく。 パソコンのCPUにありがちな、プログラムの暴走などでチップが熱っちんちん → 死亡というパターンは考えにくい。というのも、今回のような小型マイコンチップは、ヒートシンク無しで動作できるように最初から作られているからだ。
所有者の聞き取り調査では、2ポートの非純正充電器に、iPhone 6s Plusを接続して充電をしていたとのことである。 原因としては、雷によるスパイクノイズによるチップ破損、充電器の過電圧あたりも考えられるが、大方、PZ40チップの製造不良とういう路線が濃厚だろう。
MFi認証済みケーブルは、格安ケーブルよりは高価だが、買えないような法外な価格というわけではない(まったくない!)。格安ケーブルにはそれなりのリスクがある。これらのトレードオフを見極めてケーブルを選ぶことだ。(ハンダマスターかしま)