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日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!
SF小説、映画、プロレスなど、一部のファンにしか伝わらないニッチなネタや趣味嗜好のパロディ、ギャグを美少女コメディのフォーマットでライトに仕上げるのはだいぶ一般化した手法。だけど、さじ加減を間違えると読者を選ぶだけの結果になったり、調理が難しいジャンルかも。そんな中、分かるような分からないような絶妙のネタを題材にした良い塩梅の漫画が始まっておりました!
小説家志望の青年・大輔は、平松に江川に村田兆治と、ピッチングマシンに昭和の野球選手ばっか入れてるバッティングセンターの一人息子。ある日店番をしていると、古い選手の品揃えに垂涎する少女・岡田いくら、ライバルバッセンの娘・坂本涼が来店する。女の子が打席に入って掛布雅之風に股間をまさぐったり、一本足打法なので王貞治かと思ったら脱臼して門田博光ゴッコだったり、尿意を我慢するついでに梨田昌孝のこんにゃく打法風に内股でプルプルしたり、出塁率重視の野球少年に竹之内打法で死球しまくるのを勧めたり……この美少女たち、野球選手のモノマネが好きすぎた!
そんな感じで、フォームはもちろん名選手同士の試合再現から口調と顔真似、王貞治が756号本塁打を打ったときの張本勲のスゴいジャンプを扉絵に持ってきたり、昔懐かしい球界ネタが結構な密度で詰め込まれた野球女子コメディの一作です。
普通に野球ネタ分かんねえなこれ……って読者でもなぜだか楽しめるのは、活き活きと繰り出されるパロディの妙な勢いと千本ノックばりの乱射ぶり、細かすぎて伝わらないのを前提になされる直截な処理の力強さ、昭和野球好き女子にのっけから主人公が「クスリでも打ってるの!?」と若干危ういツッコミを打つなどネームの度々な直球ぶり、ギャグ顔と集中線・擬声語の野暮ったくて味がある処理まで含め、若い読者に読まれる際の空振り感をあらかじめ受け入れたようなボンクラギャグの手付きと野球愛の持て余しぶりが愛らしいからかも。同作者さんの前作『カタナガリ』も同様、キュートな雰囲気の作品なのでぜひどうぞ!
・作者:矢野稔貴
・掲載メディア:ヤングアニマルDensi、金曜日はヤングアニマル