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日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!
藤子不二雄コンビを主人公にトキワ荘へ集ったマンガ家たちを描いた『まんが道』をはじめ、作者の実体験や実在の人物らのドラマを虚実織り交ぜて描く、ノンフィクション的マンガ家漫画はひとつの人気ジャンル。なかでも古典の『まんが道』にリスペクトを捧げて、現代版トキワ荘物語にチャレンジした一作がトーチWebで連載中です!
様々なクリエイターたちが集う品川のゲーム開発事務所に入社し、大阪から上京してきたマンガ家志望の青年・テッ兵。ある日、とある案件のコンペ用にキャラクターデザインのアイデアが社内で募集される。作業を始めるテッ兵だが、一日で百本ものアイデアを上げてきたタナカカツキの才能に打ちのめされてしまう。試行錯誤の中、自分もコツコツと百本のアイデアを、と奮起するテッ兵だったが……。
好奇心と情熱だけで何にでも挑戦する古き良きマンガ家像に憧れる若き日の作者が、周囲の才能あるクリエイターたちと関わり合い、凡才として苦闘と努力を続ける青春ノンフィクション。タナカカツキ氏ほか『パラッパラッパー』シナリオの伊藤ガビン氏などが登場し、実際の業界人同士の掛け合いの雰囲気、ゲーム会社のリアルな空気感などが事細かに描かれます。
他の才能を目の当たりにした挫折感や実制作時の行き詰まりや焦燥感、自分の作品が果たして認められるかという緊張、といった若手クリエイターならではの諸々の感情をクローズアップしていくストーリーながら、映像作家らしくその表現にサイケデリックな色彩感覚とエフェクトばりばりの1ページぶち抜きイメージを多用して、地味になりがちな題材でも刺激的な絵面を志向しているのが特徴的。塗りを含めて全体にアーティスティックな筆ぶりだけど、キャラデザイン自体は擬古的で、古典的なマンガ表現の崩しも端々に挟んで、現代的な調理の中にも先行作品へのリスペクトをしっかり感じさせる一本です。
センスフルな演出とコミカルな絵作りを融合させたがゆえに若干キザな印象があったり、クリエイティブ系の仕事の厳しさと格好良さを強調するあまり教訓風の文言をゴリゴリに並べ立てがちだったりは玉に瑕。とはいえその青臭さも込みで、クリエイターを目指す読者に向けた熱い心意気が感じられる意欲作なのです!
・作者:牧 鉄兵
・掲載メディア:トーチWeb