- 週間ランキング
登場以来、大きく注目を集めている対話型の生成AI「ChatGPT」ですが、「どのように活用すれば良いのか分からない」「使ってみたが期待した結果は生成されなかった」という方も多いのではないでしょうか。
そのような悩みを解決すべく、ゲームプランナーの方に向けてゲームの企画書作成にすぐに役立つ活用例をご紹介します。
こちらは、筆者がChatGPTの力を借りて5時間で作成したゲームの企画書です。
実際にこのゲーム企画書を完成させるまでの流れを見ていきましょう。
なお、本記事での文章の生成には無料版の言語モデル「GPT-3.5」を使用しています。
まず、ゲームの企画書を作成する際に必要な内容や工程は何かを整理します。
大まかな工程としては、以下のような手順です。
ゲーム企画書の構成要素としては、主に以下が挙げられます。
これらを効果的に提示し、企画したゲームがいかに面白いか、成功が見込めるかどうかを伝えます。
必ずしも「こう書かなければいけない」という決まりはなく、企業や個人、ゲームの種類によってもそれぞれの書き方やフローがあるでしょう。ChatGPTを使えば、各工程において必要に応じて自動化や手助けをしてくれるため、自分のやり方へ柔軟に落とし込んだ企画書を作成することができます。
ゲーム企画書の作成にはChatGPTが十分に活用可能ですし、作業の効率的な進行に役立ちます。
ゲームの企画書の作成にChatGPTを上手く活用できると、主に以下のようなメリットが生まれます。
ゲームプランナーの業務は多岐に渡るため、「他の業務に追われて新しいゲームの企画書に手が付けられない」といったこともあるでしょう。
その点、ChatGPTならスピーディーにアイデアや資料の構成などを提示してくれるので、気に入った案が出るまで何度でも追加候補を生成できます。
最初にChatGPTに方向性を示してもらってから修正・肉付けをしていくことで、ゲームの企画書作成にかかる時間を大幅に短縮することができます。
いくつものゲーム企画書を書いていると、新しいアイディアがなかなか思い浮かばないこともあるのではないでしょうか。
そのような時、第三者から意見をもらったり、対話の中からヒントを得たりするのは非常に有効です。
対人だと相手の都合を気にする必要がありますが、ChatGPTはいつでもどこでも相談や壁打ちの相手になってもらえる点が大きな強みです。
膨大なデータを持つChatGPTとブレスト(自由にディスカッションを行い、アイデアを出していくこと)を行うことで、新たなアイデアの着想や気づきにつながったり、より良いゲーム企画書を作成するための改善策を得られたりするでしょう。
ChatGPTでゲームの企画書を作成する際に使える、実践的なプロンプトをご紹介します。
プロンプトの出し方が回答の質を大きく左右するため、まずは紹介するプロンプトを使って慣れていきましょう。
以下、ゲームのアイディア出しの段階で使えるChatGPTのプロンプトをいくつか紹介します。
とっかかりとなる面白そうなアイディアが欲しい時におすすめなのがこちらのプロンプト。
下記の伏字部分に適当な言葉を入れた文章を10個提案してください。 |
元ナムコ社の中村隆之氏が考案したゲームのアイデア発想のためのフレームワーク、「EMS Framework(手段目的構造フレームワーク)」をベースとしています。
「○○を□□して(手段のアクション)、××を△△する(目的のアクション)」という書式をもとに伏せ字部分に当てはまる言葉の候補を考えてもらうことで、即座に複数のアイディア出しができます。
参考:
https://cgworld.jp/feature/202009-CEDEC2020-tensai-2.html
https://www.gamer.ne.jp/news/201409040048/
さらに、基本の書式に以下の例のように要素を追加することで、生成結果のバリエーションが豊かになります。
{ }内は自由に記述して条件を絞ってみましょう。そのまま送信してもChatGPTが変数として理解するため、例えば「{場所}で」→「学校で/宇宙船で/砂漠で」などと、指定した要素を考慮し適切に言葉を当てはめた上で提案してくれます。
複数の要素を組み合わせたり、伏字部分を一部固定してみたりするのもおすすめです。
今回は、ゲームジャンルを「RPG」とした上で質問することにしました。
▼実際の質問文と回答
少々当たり障りのない印象を受ける回答です。ユーザーを強く惹きつける独創的なコンセプトを創出したいので、以下の質問を追加してみます。
もっと独創的で変な文章にしてください。 |
よりユニークで魅力的な回答が生成されました。2番が気に入ったので採用します。
一発でゲームの企画書に必要な要素を網羅したい時におすすめなのがこちらのプロンプト。
あなたは優秀なゲームプランナーです。 以下の制約条件と入力文をもとに、最高のゲームの企画を考えてください。 **ゲームの企画書** **タイトル:** [ゲームのタイトル] **キャッチコピー:** **ジャンル:** **想定プラットフォーム:** **ターゲットオーディエンス:** **ゲーム概要:** **ゲームコンセプト:** **世界観・テーマ:** **ゲームプレイの要素:** **ゲームサイクル: ** **モチベーションフロー: ** **独自性/差別化要素: ** **開発規模: ** **その他の考慮事項: ** |
筆者は今回、前述のEMS Frameworkをベースとしたプロンプトでざっくりとゲームのイメージを決めてから、こちらのプロンプトと組み合わせて企画書を練ってみました。
プロンプト冒頭の「ゲームの企画書」の部分に、EMS Frameworkでの回答の中で気に入った文章を入れ、「ゾンビを撃退して、恋愛相手を見つけるRPGゲームの企画書」と変更して質問した結果がこちらです。
▼実際の回答
開発規模の部分は、詳細な情報を与えていないため根拠のない回答や現実的でない回答になってしまうかもしれません。ゲーム企画書において必要になる要素として入れていますが、あくまで骨子として活用し、実際の業務では具体的な内容を自分で検討する必要があります。
ターゲットユーザーのニーズを探りたい時におすすめなのがこちらのプロンプト。
あなたはユーザーインサイトの分析に詳しいプロのマーケターです。 今からゲームの企画書作成のためのマーケティング調査をしていきます。{ターゲット}が{テーマ}に関連して経験する10の不満・悩み、10の欲求・願望をそれぞれできるだけ具体的に提示してください。 #目的 プレイヤーのゲームに対するニーズを理解し、新しいゲームの企画に役立てたい。 #制約条件 ・不満・悩みと欲求・願望はペアで対照的に示してください。 ・可能な限り具体的に記載してください。 #出力形式 表形式: |不満・悩み|欲求・願望 |
ゲーム企画書に市場ニーズやトレンド、競合優位性などの要素を盛り込みたい場合、ターゲットユーザーのニーズを探ることで参考にできるでしょう。
上記のプロンプトを入力すると、ターゲットリサーチが簡単にできます。
▼実際の質問文と回答
とはいえ、ChatGPTが示す内容はあくまで参考程度です。分析の明確な根拠を示すには、自分で深く分析を行う必要があります。
また、ChatGPTの無料版が参照しているデータは2021年9月までの情報なので、最新の市場調査には不向きである点に注意しましょう。
企画をまとめた後、これらのニーズを満たせているかを確かめるチェック項目として活用する程度であれば、十分に有益です。
以下では、ゲームのアイディアを整理する段階で使えるChatGPTのプロンプトを紹介します。
アイディア出しでコンセプトの大まかなイメージはできましたが、さらに詳細を詰めていく必要があります。
「一発でゲームの企画全体を網羅するプロンプト」の回答文の中で興味を持った内容を具体化していくために、例えば以下のように質問します。
○○について考えてください。 |
○○について詳しく説明してください。 |
○○には、回答文に記載してある特定のワードをコピペして使いましょう。
生成結果に対して「もっと詳しく」「□□文字以内で別の案を10個考えて」などと指示を出せば、それに沿って再回答してくれます。必要に応じて軌道修正を行いながら質問と回答を繰り返していくと、内容のブラッシュアップに有効です。
▼実際の質問文と回答の一部
他にも、「会話の中から思いついた自分の考え」を交えながら、世界観の詳細やストーリーのエンディング、クリア後の要素、その他ゲームシステムに影響しそうな要素について深掘りしました。
一通り深掘りし終えてから、それらを踏まえてコンセプトを検討し直してもらっています。併せて以下のようにキャッチコピーやタイトルも調整しました。
▼実際の質問文と回答
このように、疑問点や不明点を思いつくままにChatGPTに投げかけて対話を繰り返し、アイディアを詰めていきます。
深掘りした内容も踏まえ、これまでのアイディアをまとめるために以下のように質問します。
ここまでのスレッド全体の内容を網羅的に盛り込んで、ゲームの企画書を改めて詳しくまとめてください。 |
改めて最初と同じフォーマットで企画をまとめてくれました。
ゲームの企画書は、PowerPointやGoogleスライドなどにまとめることが多いでしょう。ChatGPTを利用すれば、スライド資料のたたき台を簡単に生成することができます。
以下のように簡単に質問するだけでも、最低限の回答が得られます。
このゲームの企画書を◯枚のプレゼンテーション資料にまとめる際の、構成を考えてください。 |
以下のプロンプトのように、条件を詳しく指定して構成案からChatGPTに考えてもらうこともできます。
条件は必要に応じて追加・修正しても良いでしょう。
あなたはプレゼン作成のプロフェッショナルです。 以下の#制約条件 に従って、上記のゲームの企画書のプレゼンテーション用の構成案の作成を行い、#出力形式 に従って出力してください。 #制約条件 ・以下の#プレゼン内容 の条件に忠実に従ってプレゼンテーションの構成案を作成してください。 ・出力については必ず#出力形式 に従って行ってください。 ・ゲームの企画書の項目を網羅的に入れてください。 ・各スライドではゲームの企画内容が伝わるようなビジュアル案も提案してください。 #プレゼン内容 目的:{自由記述} スライド枚数:{数字}枚 時間制限:{自由記述} 主要ポイント:{自由記述。箇条書きでもOK} #出力形式 【構成案】 <1枚目> [具体的な記載内容とビジュアル案を記入。可能な限り分かりやすく説明する] <2枚目> [具体的な記載内容とビジュアル案を記入。可能な限り分かりやすく説明する] <3枚目> [具体的な記載内容とビジュアル案を記入。可能な限り分かりやすく説明する] … [#プレゼン内容 に応じて必要な枚数分だけ構成案を書く。] |
そのまま使用できる程のクオリティの出力は難しいですが、ゼロベースから検討・作成するよりも時間を短縮することは可能です。
ChatGPTの回答をベースに、伝わりやすさを工夫しながら調整・肉付けし、スライドを完成させていくと良いです。適宜スライドの出力形式を調整するか、スライド構成の検討は自分で行った方が良い場合もあるでしょう。
ゲームの企画書においては、多すぎない枚数で必要な要素をわかりやすく訴求するのがベターです。
効果的なゲーム企画書の書き方や伝え方については、以下の記事を参考にしてみてください。
ChatGPTを使えば、文章の要約や翻訳も即座に行うことができます。
ゲーム企画書を作成する中で要約・翻訳の必要がある際は、以下のように文字数や言語を指定して出力しましょう。
この文章を100字以内で要約してください。 |
この文章を英語に翻訳してください。 |
ChatGPTなどの生成AIは非常に便利なツールですが、いくつかの弱点や課題が指摘されます。
AIの全てを信頼し任せるのではなく、人の情熱や発想も組み合わせて納得性を高め、専門的な判断や意思決定も人間が行う必要があります。
以下の注意点をよく理解した上で適切に活用するよう心がけましょう。
ChatGPTは大量のデータを基に学習していますが、その情報の全てが正確とは限りません。ときには誤った情報やもっともらしい嘘(ハルシネーション)を生成してしまうことがあります。
ChatGPTの情報を鵜呑みにせず、自ら信頼のおける第二の情報源を参照するなどしてファクトチェックを必ず行いましょう。
ChatGPTは、学習データに存在するバイアスや偏見を反映する可能性があります。
倫理的で公平な意思決定を行うためには、ChatGPTが提示する見解や情報が一面的である可能性も踏まえ、多角的な視点から情報を評価する必要があります。
ChatGPTに入力した情報はサーバーに蓄積され、AIの学習データに利用される場合があります。そのため、情報がほかのユーザーへの回答として使われてしまう可能性が否定できないほか、ChatGPTが不正アクセスやハッキングに遭った際に情報が流出するリスクもあります。
よって、第三者への情報漏えいを防ぐため、プロンプトに機密情報や個人情報、顧客情報などは絶対に入力しないようにしましょう。
ChatGPTが参照する学習データは、無料版が2021年9月まで、有料版でも2023年4月までのものです。そのため、その後の出来事や情報については反映されない可能性が高く、現状の市場分析には向きません。
新鮮な情報や、急速に変化する分野についての情報を求める場合は、最新の情報源を直接確認する必要があります。
ChatGPTはテキスト生成には優れていますが、スライド資料のデザインやレイアウトを直接行う機能は提供していません。
良い企画書を作成するには、具体的なデータに基づく図表の挿入や、視覚的理解を得られるようにイラストや画像を用いるなど、デザインの工夫が必要です。
ゲーム企画書の視覚的な魅力を高めるために、スライドのデザインや詳細なコンテンツ作成は自分で行うようにしましょう。
今回は、スライドに使用するイメージ画像を有料版の「ChatGPT-4」で生成してみました。
▼実際の生成画像の一部
クオリティも高く、これまでの企画書作成の流れからそのまま生成できるため非常に便利です。有料版の導入を検討してみても良いでしょう。
ChatGPTの機能以外にも、無料で使えるものも含めさまざまな画像生成AIがあるので、必要に応じて活用するとゲームの企画書作成をより効率化できます。
ChatGPT(チャットジーピーティー)は、OpenAI社が開発したAIによるチャットサービスです。
以下リンク先のサイトから利用できます。
「Try ChatGPT」をクリックし、初めてChatGPTを使う人は「Sign up」からお好きな方法でアカウントを作成してください。
月額20ドル(約3,000円)の有料プラン「ChatGPT Plus」に加入すると、無料版の言語モデル「GPT-3.5」に加え、GPT-3.5を飛躍的に進化させた最新版の言語モデル「GPT-4」を利用できます。
無料版でも適切にプロンプトを活用すれば十分な回答が得られますが、より高い回答精度や利便性を求める場合は、それぞれの違いを比較した上で有料版も検討してみましょう。
ChatGPTを適切に活用すれば、ゲームの企画書を作成する際にも多くの業務を効率化できます。
しかし、ChatGPTは既に登録されているデータベースから情報を集めるため、新しいコンテンツを考えるのはあまり得意とは言えません。そのため、ゲームの面白さのコアやオリジナリティ要素は人の手で足す必要があります。
とはいえ、既存のアイディアの組み合わせから新しいアイディアが生まれてくる可能性もあります。
データをもとに多面的な提案を行うChatGPTを上手く活用できれば、新しいアイディアを得るためのとっかかりとして役立ちます。
もちろん生成結果をそのまま企画書として使用することは難しいです。
説得力のある現実的なゲーム企画とするには、やはり現場に基づいた分析やマネタイズの検討も必要なので、これらの要素は自分で盛り込むと良いでしょう。
また、質の高い回答を得るためには具体的な条件を設定すると良いのですが、入力した発言にかなり引きずられた回答になってしまうこともあります。
そのため、できるだけ自分が思いつかないような案を提案してほしいときは、条件を絞らずアバウトに質問した方が良い場合もあるでしょう。
ChatGPTはいくらでも思考の壁打ちが可能ですので、思うがままにブレストして最終的に回答の取捨選択をする方法もおすすめです。
ぜひ、ゲームの企画書作成にChatGPTを活用し、業務の効率化のために参考にできる部分があれば積極的に取り入れてみてください。