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『Tokyo 7th シスターズ THE SKY’S THE LIMIT(以下、ナナシス)』は、株式会社DONUTSが提供するスマートフォン用リズムゲームであり、アイドル文化の衰退した娯楽都市「Tokyo-7th」を舞台に、新時代のアイドルたち「ナナスタシスターズ」が新たなアイドルの在り方を模索する物語だ。
2034年を軸に、過去・現在・未来が交錯する長編ストーリーが魅力の本作は、現在はさらにその先の未来である2053年を舞台とした新シリーズ『EPISODE 2053』を展開している。
リリース9周年を迎えたナナシスは、昨年度にライブイベント『Tokyo 7th シスターズ 6+7+8th Anniversary Live Along the way』を開催し、豪華キャストにて三日間のライブを行った。
また近年ではゲーム内ユニットによる単独公演も積極的に行われており、ライブ文化にも非常に力を入れているコンテンツだ。
ナナシス作中のメインユニット「777☆SISTERS」からの派生ユニット。
作中初期にデビューする春日部ハル、角森ロナ、野ノ原ヒメ、芹沢モモカの四名で構成されている。
2034年にインターネット内を自由に泳ぎ回るスーパーハッカー"デジタルウィッチ"をテーマとした、テクノポップな音楽が特徴的なユニット。
近未来的なイメージとは裏腹に、思春期の少女の心理をなぞるような可愛らしい歌詞が多く、そうしたギャップが最大の魅力だと言える。
2022年12月27日に最新曲「Wanna Be♡」がゲーム内実装された他、本ライブでも新曲が発表された。
ナナシス史上初の3Dモデルを使用した単独ライブ「Tokyo 7th Sisters VISUALIVE NANASUTA MINI LIVE starring WITCH NUMBER 4」。
本公演は池袋のMixalive TOKYO Hall Mixaにて上演された他、株式会社DONUTSの提供するライブ配信&動画アプリ「ミクチャ」内でも配信された。
入場し、ライブ開始時刻になると同時にテクノポップなBGMと共に可愛らしいデジタルチックな映像が流れ、各メンバーが紹介された。
本ライブに向けて新たに書き下ろされたイラストは、「星屑☆シーカー」にて着用していた衣装だ。ナナシスは2034年の近未来を舞台とした作品であり、WNo4は電子の海を駆け巡るデジタルウィッチをモチーフとしたユニットである。
そうした近未来的な演出や衣装を通して、オンライン配信で行われる本ライブに対する期待感が高まった。
本日最初に披露された曲は、本ライブが初公開となる新曲「Tokimeki♡Soda」だ。
「あのね」
赤面したヒメが短く呟き、WNo4らしさを感じる軽快なテクノポップと四人の歌声が響いた。
「星屑☆シーカー」以降、WNo4は楽曲冒頭から観客の心を奪うパフォーマンスを行うことが多い。勝気な性格の裏に乙女心を秘めたヒメが持つギャップを活用したこのパフォーマンスにはまさに意表を突かれた。
意中の相手のちょっとした振る舞いに惹かれるものの、自分から想いを伝えられない臆病な乙女心を、ソーダのように弾ける音楽と共に四人が歌い上げた。
本ライブに向けてリリースされた楽曲ということもあり、配信形式であることを意識したパフォーマンスが非常に印象的であった。
四人が一列になり順々にパフォーマンス・歌唱を行うシーンが度々あり、これは観客の視点が一致しないリアルライブでは難しい演出だ。
カメラワークも非常に凝っていた。上記のような演出をするシーンでは移動カメラの微かな揺れも再現されており、リアルライブに負けないリアリティが生み出されていた。
続いて披露されたのは「ラバ×ラバ」だ。WNo4の楽曲コンセプトによく見られる「デジタルウィッチ×恋する女子高生」の両方が最も強く押し出された楽曲で、デジタルチックな演出と可愛らしいパフォーマンスが展開された。
ライブ内ではステージ中にハートが漂い、煌びやかなレーザーがふんだんに用いられている、近未来の世界観を最大限反映したパフォーマンスとなっていた。
各アイドルのソロパートではそれぞれにクローズアップする形でカメラが向けられ、全員の魅力的なシーンをしっかりと見ることができた。
本公演の配信ライブは好きな場面をスクリーンショットし、SNSへ投稿ができるということもあり、こうした部分でもライブ配信を強く意識したカメラワークや演出が練られていると感じた。
それだけではなく、歌詞とパフォーマンスが明確に連動している場面では、アイドルたちが感情移入したように表情を変えていた。
一人一人の生き生きとした感情表現が映像を通して鮮明に映し出される体験は、リアルライブに負けないくらい彼女たちが"生きた"アイドルであることを強く印象付けられた。
MCではヒメ、ハル、ロナ、モモカの順で自己紹介が行われた。
各メンバーの特徴がしっかりと反映された自己紹介であるだけではなく、随所で挟まるメンバー同士の掛け合いも本ライブならではの魅力だ。
モモカの自己紹介に「いつもと変わらねぇじゃねぇか!」とツッコむヒメの姿は、まさにリアルライブで、そしてゲームで見続けてきた二人の姿と重なる感動があった。
マイペースなモモカに振り回されるロナ、逆にモモカをたしなめるヒメと、それを見守るハル。
WNo4の日常はストーリーで語られることはあったが、リアリティを持った形で表現されたやり取りは、慣れ親しんだものでありつつも新鮮さを感じさせるものだった。
和やかなMCの後は、これまでとは一転して軽やかでありつつも少し大人っぽさも感じる「星屑☆シーカー」が披露された。「開幕4秒で悶絶する」とSNSで話題になった「いくよ」が、初めてハルのパフォーマンスとして表現された。
その後、再び明るい、軽快な雰囲気に戻り「Wanna Be♡」が流れた。バックに楽曲のジャケットにも使用されたイラストが使用されており、ゲーム内の空気感が同時に伝わってくる演出となっていた。また本来の楽曲では冒頭はロナが担当していたが、本ライブではヒメが担当していた。
その後は再びMCに入るかと思いきや、777☆SISTERSの楽曲「FUNBARE☆RUNNER」が流れた。ナナシスはライブ中に他ユニットのカバーも行うこともあるコンテンツであるため予想自体はしていたものの、実際に流れると嬉しく感じた。
アップテンポで元気の出る本楽曲はライブ映えする演出も多かった。ラスサビ前にハルがコールを担当し、それに呼応してメンバーが叫ぶ姿は、まるで幕張メッセで実際にライブを見ているかのような気分になった。
ライブも終盤戦に入った。MCは先ほどのように(あるいは、先ほどよりも更に)のんびりと過ぎていった。「新しいこと」に挑戦したい、というテーマでモモカとハルがやりたいことを伝え、ロナが同調し、ヒメがやんわりとツッコむ。この緊張感の無さが心地よかった。
まさにWNo4だ、と感じる会話を経て「SAKURA」が披露された。WNo4の楽曲の中では打って変わって切ない曲調の本楽曲を、絶妙な表情で歌い上げていた。ステージでは桜が舞い散っており、衣装や演出と相まって、元の楽曲では意識しなかったデジタル要素がフィーチャーされた楽曲体験となっていた。
最後は「PRIZM♪RIZM」。ナナシス初期からユーザーに寄り添ってきたWNo4最初の楽曲だ。
リリース当初は3Dライブが行われるとは夢にも思わなかっただけに感慨深い気持ちになった。初期の楽曲にこうして新たな形で光が当てられたことにより、ナナシスがこれまでの全てを抱えながら、未来に向けて歩んでいるコンテンツなのだということを再認識した。
11月26日(日)の夜公演では、ライブ配信後にいくつかの新発表が行われた。
一つ目の発表は新曲である「Tokimeki♡Soda」が11月29日に各種配信サービスにて配信されることだ。執筆現在はゲーム内で本楽曲を先行プレイできるゲームイベントが開催されている。
そして二つ目の発表は2024年の新ユニットでの3Dライブについてだった。恐らくナナシス内の既存のユニットのどれかが本ライブのように単独3Dライブを行うのだろうと予測される。どのユニットになるのか非常に楽しみである。
本ライブはナナシス初の試みとなる単独3Dライブだったが、実際のところ想像以上に引き込まれた最高のライブだった。
WITCH NUMBER 4、ひいては777☆SISTERSはゲーム内では大枠の物語はひと段落しており、メインコンテンツとしてのエピソード更新は次世代の『EPISODE 2053』が中心となっている。
だからこそこうして再びハルたちが活き活きと新しいことに挑戦している様を見られることは純粋に嬉しかった。
2024年にはまた新たなユニットが3Dライブを行うということで、次は誰のパフォーマンスを見られるのか、期待が高まる。
ナナシスは2024年2月でリリース10周年を迎えるコンテンツだが、他の音ゲーと比較すると3Dコンテンツの展開はかなり少ない。
本ライブはこれまでのナナシスの歴史を塗り替えるものであり、リアルライブと並列して行われる新たなライブ形式を切り開くのではないか、という期待を感じさせるものだった。
ナナシスに今まで触れたことの無い方ももちろん、ナナシスをプレイしていた経験があれば更に感動できる部分も多く、全ての支配人(ナナシスファン)が本ライブで感動できるのではないかと感じた。
公演自体は終了しているものの、ミクチャを通してチケットを購入することでアーカイブ公演を視聴することが可能である。
本公演(2023年11月25日夜公演)ではカバー楽曲として「FUNBARE☆RUNNER」が披露されたが、SNSの反応を見る限りでは公演ごとに異なるカバー楽曲が披露されているようである。MCやカメラワーク、演出など細々とした変化があることを考えると、ぜひ全公演のアーカイブをチェックしたい。