ChatGPTが巷の話題を集めるなどAI開発が急速に進んでいる今日、他人事と笑って済ませられないような現代的サイコスリラーが満を侍しての日本上陸だ。

既にアメリカで大旋風を巻き起こした本作のメインキャラは、お菊人形(古っ!)もチャッキー(チャイルド・プレイ)もアナベル(死霊館)も顔負けの暴走AI人形「M3GAN(ミーガン)」。

おもちゃメーカーに勤めるジェマは、交通事故で両親を亡くした姪っ子ケイディの身を案じ、開発中のAI人形であるミーガンにケイディを守るようプログラムしたうえでこれを彼女に与える。

何でもこなせるお友達ロボットのミーガンだったが、ケイディへの深すぎる愛情が引き金となり、やがて想像を超える惨劇を次々と引き起こしていく。

『ソウ』シリーズで有名なジェームズ・ワンとホラー作品に定評のあるブラムハウスが手を組んだ作品にというだけで否が応でも期待が高まるが、理屈抜きにまずは予告映像を見てみてほしい。

ミーガンは誰が見ても美少女のルックスをしているが、その顔立ちと表情は見る者に同時に不安感も与えるまさに絶妙な按配だ。

そんなミーガンが予告で奇怪なダンスを踊るシーンはまさに鳥肌モノ、ホラーファンにはたまらない。

アナベルとターミネーターを融合させた殺人人形、というアイデアから本作は生まれたらしいが、『オーメン』や『ピノキオ』からの影響もあると監督は語る。

ミーガンは、誰よりも賢く驚異的な運動能力を持ちながら、その一途すぎる心は狂気となって倫理の殻を易々と突き破ってしまう。

それは、AIがいずれ人間の知能を総合的に超えてしまうとも言われてる現代において、まさに作り話として片付けられないリアリティーだ。

他方で、本作のストーリーは、現代の多忙な大人が子育ての場面でもタブレットをはじめとする多くのガジェットやテクノロジーに頼りすぎている問題に関する風刺や教訓でもある。

姪っ子を心配しながらもミーガンの開発が成功して勤務先で評価を受けたい仕事人間のジェマと、ひたすらにケイディを守ることを優先するミーガン。

純粋さだけで見たらどちらが純粋かはすぐ答えが出そうだ。

裏を返せば、純粋すぎるモノの恐怖を描いた映画とも言えるかもしれない。

実際、子供の純粋さも突き詰めると怖い気がしてくるが、子供は賢すぎないし大人レベルの運動能力もないから、まだ安心だ。

その意味では、本作が描く「一途な狂気」は、最近公開された話題のスリラー『エスター ファースト・キル』にも共通するテーマだ。

ミーガンの身長が大きすぎず、ケイディの少し上のお姉さんくらいのサイズというのがまたいい。

子供サイズの美少女のルックスと凶暴化した時の姿とのギャップには想像以上の不安感をかき立てられるからだ。

新アンチ・ヒロインとしてのミーガンの存在感と印象はとにかく鮮烈だ。

コントロール不能の極端すぎる愛情表現には辟易しながらも、その純粋さの全ては憎めない。

時折見せるブラックで知的なユーモアのセンスも見ていうちに何だか病みつきになってきて、暴走の一部始終を見たくなってしまう。

続編制作もすぐに決まったらしいが、それもそのはず、ミーガンの魅力は日本でも多くの人たちに受け入れられるだろう。

今年のハロウィンではミーガンコスプレをたくさん見ることができるかもしれない。

 

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