1980年代に公開された『ゴーストバスターズ』と『ゴーストバスターズ2』。

それまでのハリウッド映画の真面目でマッチョなヒーロー像とは一風異なり、シニカルでどこかアウトサイダーなバスターズのメンバーは、当時大きな話題を呼び人気を博した。

個性的なゴーストたちやポップで耳に残るテーマソングの魅力も相まって、映画は日本でも一大ブームを巻き起こし、それは80年代カルチャーの一角を構成したと言ってもいいかもしれない。

それから30年以上が過ぎ、シリーズの正当な続編としてファン待望の公開を迎えたのが本作だ。

ここで描かれるのも、オリジナルから30年経過後の物語。

化学に熱中している少女フィービーが母や兄とともに田舎町にある祖父が遺した古い家に転居してきたところから話は始まる。

彼女は、家の地下室で不思議な装置をいくつも発見し、今は亡き祖父がかつてニューヨークを救ったゴーストバスターズの一員だったことを知る。

そして彼女が装置の一つを誤って開けてしまったことによりゴーストの封印が解かれてしまい、同時に彼女と周囲の人々の運命の歯車も回り始めていく。

バスターズでメカニック開発を担当していたイゴン・スペングラー博士の孫娘フィービーを演じるのは天才子役マッケナ・グレイス

彼女は、もともと知的なキャラクターを演じることも多いが、見た目が特徴的なスペングラー博士の血を引く役ということで、ブロンドヘアーを黒髪に染めてショートの巻き毛にし、トレードマークの丸ぶちメガネまで引き継いで、学校でも浮いてそうな科学オタクの女の子に見事に扮してみせた。

そして、スペングラー博士を演じていた俳優のハロルド・レイミスが既に亡くなっていることを考えると、この物語の設定はシリーズとキャストに向けたリスペクトを感じさせる。

過去作に捧げられたオマージュは他にもいたるところに見ることができる。

そもそも本作の監督は『ゴーストバスターズ』の1と2を監督したアイヴァン・ライトマンの息子のジェイソン・ライトマンだ。

当時6歳だったジェイソンは父親に連れて来られた撮影現場からマシュマロマンのかけら(シェービングクリーム)を持ち帰り、その後も部屋の棚に飾っていたとのこと。

そんな監督の少年時代の思い出が溢れ出したかのようにミニ・マシュマロマンが満を持して登場したうえ大暴れするシーンは、懐かしさと楽しさで思わず笑みがこぼれてしまう。

劇中でフィビーが自身のルーツを知りゴースト退治に駆り立てられる運命を辿ったように、まさにジェイソン監督もまた30年以上の時を経て父から子へと『ゴーストバスターズ』を継承した。

そして、この時間の断絶と家族内での言わばレガシーの継承は、本作の物語の心温まるテーマにも繋がっていく。

「子供ができて初めて親の苦労が分かった」といった類の話はよく耳にするが、本作が家族内の確執や分断を乗り越えて和解に繋がる契機として描いたものが“ゴースト退治“であるという点はなかなかに面白い。

その意味ではあくまで反面教師的な存在ではあるが、ゴーストは親子関係の“かすがい“なのかもしれない。

そもそもこのシリーズのゴーストは憎めないキャラが多いのだが、憎めないからかすがいの役割が似合うのか、かすがいにもなれるからより憎めないのか、いずれにせよ相変わらず製作陣のゴーストへの愛着は隠し切れないほどにバレバレ状態だ。

そんなゴースト愛、家族愛、そして何よりも「ゴーストバスターズ愛」に溢れた本作は、80年代から時を超えてやってきたタイムカプセルであり、オリジナル作品の関係者やファンに宛てた分厚いラブレターに違いない。

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