Netflix配給作品の勢いが止まらない。

ここにきて2021年最後を飾るにふさわしい大作が満を侍しての劇場公開を迎えた。

監督・脚本を務めるのは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『バイス』のアダム・マッケイ。

まるでハリウッドのお祭りのような豪華キャスティングで送る本作は、マッケイ監督お得意の社会風刺を全開に効かせたブラックコメディだ。

大学教授の天文学者とその教え子が、新たに発見した彗星が半年後に地球に衝突することを突き止める。

地球滅亡の危機を回避すべく大統領やマスコミにこの事実を知らせようと奔走する彼らだったが、政治、マスコミ、大企業の思惑に振り回されて歯痒さを募らせるばかり。

果たして地球にとっての真の脅威は彗星なのか?それとも利権優先の権力者や富裕層、マスコミなのか?

一つ間違えるとチープなドタバタ劇になりそうな話だが、そこはさすがのマッケイ脚本。

アメリカ社会に突きつける強烈な皮肉と大の大人たちの笑える迷走ぶりは、長尺の物語を最後まで全く飽きさせない。

豪華キャストたちがいきいきと演じるのは十人十色の個性や欠点を抱えた登場人物たちだ。

一躍時の人となる天文学者にレオナルド・ディカプリオ、空回りして感情を爆発させるその教え子にはジェニファー・ローレンス

自己中の強烈な大統領演じるメリル・ストリープとそのドラ息子で補佐官を演じるジョナ・ヒルのコンビのクセの強さ。

セクシーで俗物的なニュースキャスターを演じるケイト・ブランシェットはしばらく本人とは気付かなかった。

これにティモシー・シャラメアリアナ・グランデまで出演するのだから、キャスティングだけでもお釣りがくるような作品だ。

中国のSF小説『三体』も世界的にヒットしたが、エイリアンや彗星、隕石が地球に到来して地球が滅亡の危機に瀕する物語は、人類自体が内部に抱える病理を炙り出すには格好の設定だ。

人類共通の外敵たる脅威に対して一丸となるべきところを分断されて迷走してしまう人間たちの愚かさ。

本作は、アメリカの政治家、マスメディア、大企業といった権力の独善と弊害に鋭く切り込みむことで、そんな愚かな人間たちの物語を見事なブラックコメディとして昇華させた。

本作の一番の強みは、全編にシニカルな笑いを散りばめながらも、本当は笑うに笑えない大きな社会問題を正面から大胆に描き切った点だろう。

アダム・マッケイ監督が放つ潔いまでの速球かつ直球映画は、彼の代表作になるかもしれない。

 

■Netflix映画『ドント・ルック・アップ』12月24日(金)より独占配信開始

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