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本作のシナリオと出会った河合は、「彼女の人生を、自分が生き直す」と決意。
モデルの女性を知る関係者から何度も話を聞き、その生い立ちや暮らしに思いを巡らせた。
入江監督が、「河合さんでなければこの映画は撮れなかった」と述懐したほどの圧倒的リアリティーで、杏の苦しみと喜びを完璧に体現してみせた。
杏に更生の道を開こうとするベテラン刑事の多々羅役には、シリアスな人間ドラマからコメディーまでひっぱりだこの佐藤二朗。
正義感や愛嬌と、ある種の底知れなさが無自覚に混じり合った完璧な人物造形で、この作品に奥行きと重層性を与えている。
杏と多々羅を取材するジャーナリストの桐野は、日本映画のなかで「唯一無二の存在感」を放つ稲垣吾郎。
ときに傍観者にならざるをえない葛藤は、観客の視線と強く共振する。
©2023『あんのこと』製作委員会