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CDRとは、医療機関や行政をはじめとする複数の機関・専門家が連携し、亡くなったこども(18歳未満の者)の事例を検証し、効果的な予防策を提言する取組。その目的は、未来の防ぎうるこどもの死亡を減らすことにある。2020年より、こどもたちにとって安心で安全な社会を実現するために、複数の自治体でモデル事業としてCDRの取組を実施している。
今回、CDR研究の第一人者である沼口敦氏に話を伺った。CDRの概要や事例、展望について紹介していく。
情報収集、検証、提言の3ステップと予防策の事例
CDRは、情報収集、検証、提言の3つのステップで進められる。まず、情報収集の方法としては、各自治体に事務局を設置し、医療機関からの死亡原因等の情報に加え、警察や教育、福祉等のさまざまな機関からの情報も収集。検証に必要な、地域におけるこどもの情報の一元管理を実施する。
続いて、事務局が収集した情報をもとに、小児医療・法医学等の医療の専門家や、児童福祉・教育・保育・警察等で構成される多機関検証ワーキンググループにおいて、詳細な検証を実施する。ここでは、各事例の背景を深く理解するための「個別検証」と、地域における傾向や特徴に焦点を当てる「概観検証」の2つの面から、検証が行われる。
そして、定期的に開催される複数の関係機関の専門家で構成された推進会議で、検証結果の報告や提言の作成が行われる。こういった流れで、こどもの死亡に関する効果的な予防策に向けたCDR事業が推進されている。
CDRの提言を受けて、複数の各自治体がこどもの死亡に対し、予防策を講じている。たとえば、ある自治体では、CDRの検証によって、小学校低学年のこどもが溺れて亡くなるケースが多いことが課題とされた。その検証結果を受け、その自治体は水難事故防止に繋げるさまざまな施策を展開。ライフジャケットの普及を推進する事業者とタッグを組み、小学校における体育授業のサポートを実施。具体的には、水泳の授業で、着衣のまま水に落ちた場合の対処方法や、ライフジャケットの活用方法などを指導した。
CDRという取組を他人事だと思わないで
CDRのモデル事業は、2020年から7府県で始まり、着実に自治体への導入数を増やしてきているものの、全国規模の本格導入に繋げることが課題だ。沼口敦氏は、CDRの今後について「CDRの活動が全国に展開されることをまず願っています。ある地域に生まれたこどもだけが検証されて、別の地域では検証されないという地域差がある状況を、少しずつ地ならし、底上げをできたらと思います」とコメントする。
その実現に向けて、「現状は、死亡したことに関して話し合うことはタブー視されている傾向があると思いますが、話し合うことで未来に活かせることがあるといった認識に改めていければいいなと思っています。
ある先生は、CDRを『今日亡くなったこどもに未来のこどもを救う方法を聞くこと』と仰っています。聞くことを躊躇ってはいけない。そのためには、CDRに関わるさまざまな機関の1人1人の技術を磨き、機関間の連携・コミュニケーションを強化していき、最終的には社会が変化することが大切だと思います」と沼口氏。
では、子を持つ親を含む生活者としては、CDRとどう向き合えば良いのだろうか。沼口氏は、「CDRから生まれた安全に対する考え方が、こどもたちにとって安心できる社会を実現するきっかけとなります。なので、まずはCDRの活動を受け取ってほしい。死は自分事になったらとても悲しいので、そういった意味で、CDRは皆さんが他人事と思いたい事業かもしれません。ですが、CDRという取り組みは他人事ではなく、自分のこどもを含む未来のこども達にかかわることであるということを、知っていただきたいです」と話す。
無関心という態度をやめるだけでも、不慮の死を防止することに繋がるかもしれない。こどもの有無にかかわらず、多くの皆さんに自分事化していただければと思う。
参考:CDRサイト
予防のためのこどもの死亡検証(Child Death Review)ポータルサイト –こども家庭庁 (cfa.go.jp)
取材協力
沼口 敦氏
名古屋大学医学部附属病院 救急・内科系集中治療部 病院講師
1996年名大卒。2004年あいち小児保健医療総合センター循環器科医長。
名大病院小児科病院助教,同院救急科病院助教を経て,18年より現職。
14~20年まで日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会に所属し,22年からは同学会予防のための子どもの死亡検証委員会委員長を務める。