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誰もが「現状維持」を好む
どうしてこのような結果になってしまったのでしょうか。一説によると、大人が夢を語れなくなり、その姿を見た子ども達にも影響が出ている可能性があるのだそうです。入山氏は人間が現状維持を望む生きものだということを指摘します。
入山氏「毎日同じことばかりでつまらないと思うならやりたいようにやればいいのです。ところが人は、上司がうるさいから、お金が稼げなくなるから、時間がないからなど『やれない』理由を、瞬間的にたくさん作り出してしまいます。天才的な理由を生み出して『やらない』を無意識に正当化してしまうのです。なぜなら人間は現状を維持したがる生き物だからです。
想像してみてください。あなたが原始時代へタイムスリップしたとします。洞窟の中にいるあなたは、何かに襲われることもないので安全です。一方、一歩でも洞窟を出ると非常に危険です。なぜなら、ライオンなどの恐ろしい動物が、あなたを食べてしまおうと常に狙っているから。どこから襲ってくるかわからないので、不安でたまりません。この状況で、あなたは洞窟を出たいですか? 安全な洞窟でぬくぬくと過ごすことを選びませんか。つまり生存本能が現状維持させているわけです。変化を恐れるのは本能レベルで、ある意味仕方がないことなのです。」
これが現状を維持したがる理由なのだそうです。原始時代は危険で溢れていたから、生きるためにも現状維持が有効だったということですね。
現代では「現状維持 = 退化」退化しないためには?
それでは、現代において「現状維持」を行うとどのような問題が現れるのでしょうか。現代は原始時代とは違い、世界が日々猛スピードで変化しています。入山氏は、現代において現状を維持することは、退化なのだといいます。「現状維持 = 退化」を防ぐには「変化」が有効で、また変化する目的が必要なのだそうです。
入山氏「変化を起こすために、髪型や髪の色を毎月変える。周りにいる友人・知人をどんどん入れ替える。住む場所も毎月変える。仕事だって毎月変える。この状態は現状維持ではありません。しかし、これは変化することが目的となっています。変化は手段でしかなく、変化するための目的が必要です。変化した先に、何が欲しいのか。ここを意識するから、変化が持続します。つまり『こうなりたい』という夢が必須なのです。 」
夢を持てない理由
なぜ、日本の大人が夢を語れなくなったのか。それは「現状維持がいい」という大人が、大多数になったからだといいます。
入山氏「失われた30年という言葉があります。この言葉は、バブル崩壊後の90年代初頭から30年ほど経った現在までの期間を指し、この間の日本経済が低迷していることを示しています。経済が低迷したことで、終身雇用は崩れ、非正規雇用者が増え、正社員も安泰ではなく、リストラに怯える状況になりました。不安な状況が続いてしまっているので、リスクを取る勇気がなかなか持てません。現状を維持することすら、難しい状況です。ですから、変化を必要とする「夢」を持とうという意欲が湧きません。つまり、変化を恐れるがゆえに、夢を語ることを諦めてしまいます。そして、現状維持を選んでしまうので、退化につながっているのです。」
また、入山氏はこの状況が非常に危険だと指摘します。なぜなら、不安に駆られて、冷静な判断ができないため、他人の意図を刷り込まれやすいからです。その最たる例は、詐欺です。詐欺が成功するかどうかは、騙す人をいかに混乱させるかにかかっています。ですから、詐欺師は非日常な空間を作り出し、冷静な判断をさせないようにします。場合によっては、警官や弁護士といった権威を持っている人を登場させて(もちろん偽物で巧妙に演じています)、その空間が正しいものと思ってもらえるように全力を注ぎます。ですから、騙された人は「正しい」と判断させられ、詐欺師の術中にハマるのです。いかなる状況においても、冷静な判断をするために「自分がどうしたいのか」を常に考えることが重要です。
豊かな人生を手に入れるには?
他人の意図で生きる人生は「豊かな人生」とは言えません。あなたの人生は「あなたのもの」です。あなたの人生を守るためにも、夢は必須なのです。
入山氏「夢があるからあなたがあなたの人生の主人公になれるのです。一見、当たり前のように見えますが、夢がない場合は他人の人生を生きるあなたになってしまいます。夢がある人生は、夢を達成することに集中しますから、ワクワクします。毎日が楽しくなります。やらなきゃいけないが、やりたいになります。ご飯を食べなきゃいけないと、ご飯が食べたいは、どちらがパワフルですか?机を綺麗にしないといけないと、机を綺麗にしたいは、どちらがパワフルですか?些細な違いに見えますが、やりたいの方が、間違いなくパワフルですよね?これはどんなシーンでも当てはまります。勉強しなくちゃいけないよりも、勉強したいの方が、やる気が全く違います。仕事しなきゃいけないよりも、仕事したいの方が活力が生まれます。この在り方を手に入れる。これが、コーチングの本家・本流を受け継ぐ『シン・コーチング』の真髄・本質です。」