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それが『けんかをやめて』でしたが、テレビで歌う可愛い奈保子ちゃんの画面下に出る歌詞のテロップを読むと、とんでもない歌だということが分かりいろんな意味で反響を呼びました。まず、歌詞をよく読んでください。
『けんかをやめて』(作詞・作曲 竹内まりや)
けんかをやめて 二人をとめて
私のために争わないで もうこれ以上
ちがうタイプの人を 好きになってしまう
揺れる乙女心 よくあるでしょう
だけどどちらとも 少し距離を置いて
うまくやってゆける 自信があったの
ごめんなさいね 私のせいよ
二人の心 もて遊んで
ちょっぴり 楽しんでたの
思わせぶりな態度で・・・
だから けんかをやめて 二人をとめて
私のために争わないで もうこれ以上(2番)
ボーイフレンドの数 競う仲間達に
自慢したかったの ただそれだけなの
いつか本当の愛 わかる日が来るまで
そっとしておいてね 大人になるから
ごめんなさいね 私のせいよ
二人の心 もて遊んで
ちょっぴり 楽しんでたの
思わせぶりな態度で・・・
だから けんかをやめて 二人をとめて
私のために争わないで もうこれ以上
・・・誰もが思うでしょう「なんだこのクソ女」。男だったら「こんな最悪な女いたわ」と経験上から名前が挙がりそうですし、女性からは「逆にこんなレベルの女になってみたい」という声もあるほど。また、このあとどうなったんだろう?「この女はまた同じことをやる」、「ふたりの男は友達になっている」、といった議論もネット上でされています(笑)。
思春期に揺れる乙女心と出来心を描いた曲ですが、当時は、「河合さんと歌のヒロインのイメージが離れすぎていてリアリティーに欠ける」という声、逆に「奈保子ちゃんみたいなタイプでこんな女がいたらイチコロだ」、という戒めの声など反応はさまざまでした。河合さんも19歳の年でしたからアイドルから大人の女性へイメチェンしていく意図があったのかもしれません。インパクトという点では強烈な曲でした。
『けんかをやめて』は、竹内まりやさんも1987年のアルバム「REQUEST」でセルフカバーしています。このとき、「奈保子ちゃんが歌うとかわいいのに、私が歌うと傲慢(ごうまん)な女性になるのはなぜ?(笑)」と感想を話しています。
今日までの歌謡曲の歴史をみても、ここまでひどい女の気持ちをストレートに歌った楽曲は珍しいので、裏を返せば、批判も覚悟して仕上げた唯一無二の超名曲なのかもしれません。
最後にフォローしますが、『すずめの戸締まり』のワンシーンで『けんかをやめて』を使ったのは単純に歌詞のフレーズがマッチしただけなので、映画と曲のイメージに違和感があるという意見は深読みしすぎです。おわかりいただけますよね。
余談ですが、「クソ女、怖い女」を思わせる歌詞が飛び出す歌って、たくさんありますよね。たとえば・・・
『まちぶせ』(石川ひとみ、等)
別の人がくれたラブレター見せたり 偶然をよそおって 帰り道で待つわ
『待つわ』(あみん)
私待つわ いつまでも待つわ ほかの誰かにあなたがふられる日まで
・・・どちらも今でいうストーカ的で怖いです。あなたはどんな曲が浮かびますか?
(石原久稔)